アメリカで大人気! クルーザーの最新カスタムスタイルを採用したインディアン「スポーツチーフ」/車両概要編
大阪/東京/名古屋で開催されたモーターサイクルショーで、インディアン・モーターサイクルのブースに展示された最新モデル「スポーツチーフ」。日本で発表される直前に、米国テキサス州オースティン郊外で国際試乗会が開催されました。アップダウンが連続する丘陵地帯にワインディング的なカーブが連続するテキサス・ヒル・カントリーで「スポーツチーフ」を見て乗った感想を、ライターの河野正士さんがお伝えします。今回は車両概要編です。
大人気の新型モデル「スポーツチーフ」の生い立ちを知る
「スポーツチーフ」のスポーツって何だろう!? それを理解するには、「スポーツチーフ」を発売するインディアン・モーターサイクル(以下インディアン)の本拠地アメリカの、しかもインディアンが数多くのモデルを投入するクルーザーと呼ばれるカテゴリーの、流行を知る必要があると思います。

とその前に、「スポーツチーフ」の概要を紹介します。「スポーツチーフ」は2021年にフルモデルチェンジしたインディアンのスタンダード・クルーザーモデル「チーフ」シリーズに加わったバリエーションモデルです。

「チーフ」シリーズは、サンダーストローク116と名付けられた空油冷のV型2気筒エンジンと、「チーフ」シリーズのために開発した、かつてインディアンのビンテージモデルが採用していたような鉄製パイプを組み合わせたフレームで車体を構成しています。
このサンダーストローク116エンジンは、ビンテージ・インディアンに搭載されている古いエンジンのような、美しい冷却フィンをデザインしたクラシックな外観ですが、最新のスポーツバイクやアドベンチャーバイクのように、出力特性が異なる3つのライディングモードを選ぶことができます。
また渋滞などで停車しているときに、エンジン内を潤滑するオイルが高温になりエンジンに負担を掛けないように、またライダーが熱さでバテてしまわないように、一定の条件になるとV型エンジンの後部シリンダーのシリンダー内爆発を自動的に休止し、走り出すと再びシリンダー内爆発がスタートする「リアシリンダーディアクティベーション」システムも搭載。排気量1890ccという大排気量を、最新のテクノロジーを用いて、パワフルで、なおかつ扱いやすいエンジンに仕上げているのです。

そして「スポーツチーフ」も、そのサンダーストローク116エンジンとクラシカルなフレームを受け継いでいます。
違っているのは、前後サスペンションと新たにデザインしたフロントカウル、そしてハンドル周りとシート、ステップ周りを変更したことによるライディングポジションです。でも、この違っている部分こそが、アメリカン・クルーザーカテゴリーのトレンドを反映しているのです。
そのトレンドこそが、スポーツなのです。
いまアメリカのクルーザーに乗るユーザーたちは、長距離走行を好み、その長距離をハイスピードで走ります。そしてクルーザーモデルなのにワインディングも楽しんでしまうのです。
映画「イージー・ライダー」に象徴されるような古いアメリカン・クルーザーのライダーたちも長距離走行を好みましたが、それが進化してハイスピード化、さらにはワインディングを走れるほどスポーツ化したというわけです。
そしてハイスピード化&スポーツ化を実現するために、エンジンもサスペンションも高性能なほうがいい。だからカスタムやチューニングにも積極的で、クルーザー用のエンジンチューニングパーツや、高性能サスペンション&ブレーキパーツがジャンジャン売れているというワケです。
「スポーツチーフ」が、「チーフ」シリーズをベースに、サスペンションやブレーキをアップグレードした理由は、そのトレンドをしっかりとキャッチアップして、クルーザー・カテゴリーのシェア拡大を狙ったからなのです。
しかも、そのパフォーマンス指向の車体構成とともに「スポーツチーフ」が採用した、トップブリッジから高い位置にバーハンドルを固定する6インチライザー(トップブリッジから152mmも高い位置にハンドルをクランプ)と、ステップを手前に引いたミッドコントロールで構成するライディングポジションは、「クラブスタイル」と呼ばれる、いまクルーザー・カテゴリーでもっとも勢いがあるカスタムバイクのスタイルなのです。
じつは「チーフ」シリーズとして先にデビューした3つのモデルも、さまざまな年代でトレンドとなったカスタムスタイルへのオマージュでした。

「チーフ・ダークホース」は、フロント19/リア16インチのキャストホイールを履いていて、ミッドコントロールのステップに低いハンドルを採用した、1980年代に流行したスポーツスタイルのクルーザーカスタムをイメージしていたし、「チーフ・ボバー」は高いエイプハンドルにフォワードコントロールのステップ、それに前後16インチのボバー・ホイールを履いた1960年代のカスタム・スタイルがモチーフだし、「スーパー・チーフ」はフェンダーをカットし、重厚なイメージだった当時のインディアンのバイクをシンプルに、そしてスポーティにカスタムしていた1940年代のカスタム・スタイルがその起源となっています。
そういったクルーザーカスタムの流行の変遷を知ると、「チーフ」シリーズに新たに加わった「スポーツチーフ」が最新のトレンドスタイルを採用した理由も分かりやすいですね。
その「スポーツチーフ」の試乗インプレッションは、回を分けてご紹介します。
Writer: 河野正士
国内外問わず、幅広いフィールドでオートバイ関係の取材、 執筆活動を行う。オートバイ・メーカーのwebサイトなども担当しているため、繋がりも強く、事前情報などにも精通。
海外試乗会などにも積極的に参加している。