【MotoE第1戦フランス大会】大久保光選手、ライディングの改善に取り組みながらレース1は5位でゴール
電動バイクレース『FIM Enel MotoE World Championship』第1戦フランス大会が2023年5月12日、13日にフランスのル・マン-ブガッティ・サーキットで行なわれました。MotoEに参戦する唯一の日本人ライダー、大久保光選手はレース1を5位、レース2を10位でゴールしました。
初戦はマシンとのマッチングに苦戦、改善を見出す大久保選手
『FIM Enel MotoE World Championship』(以下、MotoE)は、電動バイクによって争われる選手権です。2023年シーズンはマシンを供給するメーカーがドゥカティになり、ドゥカティがMotoEのために開発した電動レーサー「V21L」が、全18人のライダーに供給されています。シーズンはヨーロッパ開催グランプリに併催され、各戦土曜日に2レース開催で、今季は全8戦16レースが予定されています。

MotoEに参戦する唯一の日本人ライダー、大久保光選手にとって、2023年はMotoE参戦3年目のシーズンです。迎えた金曜日のプラクティス1は13番手、プラクティス2は11番手。夕方の予選はQ1からの挑戦となり、4番手で、予選上位10番手以上が確定するQ2に進出することはできませんでした。
苦戦の背景には、「V21L」を走らせるライディングにありました。電動レーサー「V21L」のフレーム剛性は、大久保選手が持つ走り方とマッチしていなかったのです。
「ドゥカティのMotoEバイクの良いところをつかめていないなぁ、と。そこで出遅れているところはありますね」

「言い訳みたいに聞こえちゃうかもしれないけど、たぶん僕の今までの乗り方とドゥカティのMotoEバイクって、合ってないんですよ。というのは、(V21Lが)レーシングバイクでしっかり車体が硬いからなんです」
「僕は今まで、スーパースポーツ(世界選手権)や世界耐久(EWC)で戦ってきて、市販車にばかり乗っていて、レーシングバイクにしっかり乗ったことがないんです。ドゥカティのMotoEバイクはフレームがアルミで剛性がしっかりしているんですが、自分でバイクを押せなかったり……。フレームがよれるのをうまく利用して曲がる、というライディングフォームになっちゃっているのを改善中なんです」

ライディングフォームは、一朝一夕で変えられるものではありません。しかし、大久保選手は改善を続けながら8周のレース1を5位でフィニッシュしました。レース1はタイヤが大きくドロップしたことで中盤以降に転倒が相次ぐ我慢のレースとなりました。大久保選手はそんな中で、レース中に乗り方を改善し、レース終盤の7周目に自己ベストを記録しています。
レース1で前進したかに見えましたが、夕方に行なわれたレース2ではさらに苦しむことになりました。レース2に向けてサスペンションのセッティングを変えたところ、全く違う方向に変わってしまったのです。MotoEはレース1、レース2、どちらのレース前にも走行時間がありません。大久保選手はグリッドに着くためのサイティングラップで「意図とは異なる違い」に気づいたものの、そのままのセッティングでレースをスタートするしかありませんでした。
「ペースもそんなに良くなかったし、耐えて、耐えての10位。得意なル・マンのレースだったんですけど、悔しい結果で終わったのは少し残念ですね」

フランス大会のレースの満足度を聞くと、大久保選手は「30パーセント」と答えました。まだまだ満足には程遠い。そんなレースだったことがうかがえます。
「引き続き、僕の乗り方は改善していかないといけないし、バイクのセットもメカさんと話して、“こういう方向なんじゃないか”という答えは出ているので、それを次戦のムジェロで試せればいいかなと思います」
MotoE第2戦イタリア大会は、MotoGP第6戦イタリアGPに併催で、6月9日、10日にムジェロ・サーキットで行なわれます。
■FIM Enel MotoE World Championshipとは……
2019年にスタートした電動バイクによるチャンピオンシップ。2019年から2022年まではWorld Cup(ワールドカップ)として開催されていたが、2023年よりWorld Championship(世界選手権)となった。MotoGPのヨーロッパ開催グランプリのうち数戦に併催され、2023年シーズンは土曜日に各2レース開催で全8戦16レースが予定されている。バイクはドゥカティ「V21L」のワンメイクで、タイヤはミシュラン。9チーム18名のライダーが参戦し、日本人ライダーとしては大久保光選手がエントリーしている。
Writer: 伊藤英里
モータースポーツジャーナリスト、ライター。主に二輪関連記事やレース記事を雑誌やウエブ媒体に寄稿している。小柄・ビギナーライダーに寄り添った二輪インプレッション記事を手掛けるほか、MotoGP、電動バイクレースMotoE取材に足を運ぶ。