「圧縮比」が高いほどパワフルなのか!? バイクのスペック表を読み解く!

バイクのカタログや、メーカーHPに掲載されている「スペック」や「仕様」、「諸元」の表には、購入時の参考やライバル車との性能比較など、役立つ情報が含まれています。スポーツ度が高いパワフルなバイクは、総じて「圧縮比」が高いようですが……一体なぜでしょうか?

空気とガソリンを、どれだけ圧縮するか

「圧縮比」は、スペック表の「内径×行程」の次の欄、もしくはセットで記載されています。それはシリンダーの容積と密接に関係するからでしょう。

ピストンがもっとも上がったときに残された空間が「燃焼室」(図右)の容積で、ピストンがもっとも下がった時のシリンダーの容積(すなわち排気量)と燃焼室の容積を合計した容積(図左)との比率が「圧縮比」となる
ピストンがもっとも上がったときに残された空間が「燃焼室」(図右)の容積で、ピストンがもっとも下がった時のシリンダーの容積(すなわち排気量)と燃焼室の容積を合計した容積(図左)との比率が「圧縮比」となる

 たとえば、シリンダー容積が900ccで燃焼室容積が100ccのエンジンの場合だと、圧縮比は「900+100=1000:100」、すなわち「10:1」になります。近年の市販バイクの4ストロークエンジンの場合、圧縮比はおおむね「8.0:1」~「14.0:1」で、けっこう幅があります。

 エンジンは空気とガソリンを混ぜた混合ガスを圧縮し、爆発・燃焼することでパワーを生み出します。そこで圧縮比が高いほど爆発した時の膨張比も大きくなるため、熱効率が良くなって出力が向上するわけです。そのため様々なバイクの圧縮比を見比べると、レースにも使うようなスーパースポーツ系の車種は、かなり圧縮比が高い事に気がつきます。

圧縮比を高くするのは難しい? デメリットもある?

 圧縮比が高いと燃焼効率が良くなってパワーや燃費が向上する……と良いことづくめに感じますが、じつはデメリットもあります。高圧縮にすると低回転でアクセルを急に大きく開けた時や、高回転まで回り切る付近で「ノッキング」を起こすことがあるからです。

BMW Motorrad「S 1000 RR」(左)やホンダ「CBR1000RR-R FIREBLADE」など、スーパースポーツモデルに使用される燃料は無鉛プレミアムガソリン(ハイオク)が主流
BMW Motorrad「S 1000 RR」(左)やホンダ「CBR1000RR-R FIREBLADE」など、スーパースポーツモデルに使用される燃料は無鉛プレミアムガソリン(ハイオク)が主流

 バイクのガソリンエンジンは、混合気を圧縮した最適なタイミングで点火プラグが火花を飛ばして爆発・燃焼する仕組みです。「ノッキング」とは、火花が飛ぶのと関係なく自然着火して異常燃焼を起こす現象のことです。カリカリやガラガラと異音がしたり、最悪の場合はエンジンが破損することもあります。

 そのため圧縮比の高いエンジンでノッキング現象を防ぐには、無鉛プレミアムガソリン(ハイオク)を使う必要性が出てきます。それだとレギュラーガソリンより燃料代が高くなるため、経済的なメリットが失われてしまいます。

 近年は電子制御など技術の向上で、圧縮比が高くてもレギュラーガソリンが使えるエンジンも登場していますが、スポーツ度の高いバイクでは、まだハイオクが主流と言えます。

 他にも、圧縮比を高くすると吸い込んだ混合ガスを圧縮するためにピストンが上昇する際の抵抗が大きくなるので、ここではエネルギーの損失が大きくなります。高圧縮化で得られるエネルギーの増加分とどうバランスするのかは、使用する回転域でも変わってきます。

 そのため圧縮比を高めるとハイパワー化に有利なのは事実ですが、端的に「高い方が高性能」というワケではありません。

圧縮比はバイクのキャラクターに合わせて設定

「内径×行程」の寸法が同じ(すなわち排気量が同じ)エンジンでも、ピストンの頭の形状やシリンダーヘッドの燃焼室の形状によっても圧縮比は変化します。

ヤマハ「YZF-R1」(2015年)のピストン
ヤマハ「YZF-R1」(2015年)のピストン

 そして同じエンジンを使うバイクでも、圧縮比を変えることがあります。たとえばヤマハのスーパースポーツモデル「YZF-R1」の圧縮比は13.0:1ですが、ネイキッドの「MT-10」は基本的に同じエンジンながら、圧縮比を12.0:1にしています。

ヤマハ「YZF-R1」(2015年)のシリンダーヘッド(燃焼室)
ヤマハ「YZF-R1」(2015年)のシリンダーヘッド(燃焼室)

 また、カワサキの「Z900」(圧縮比11.8:1)と「Z900RS」(圧縮比10.8:1)も、同系のエンジンですが圧縮比が異なります。

 これは最高出力を重視したり、普段使いの回転域での扱いやすさや力強さを優先するなど、それぞれのバイクのキャラクターに合わせたエンジンの特性にする手法のひとつと言えるでしょう。

【画像】同系のエンジンでも圧縮比が異なるバイク(8枚)

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Writer: 伊藤康司

二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。

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