もはやバイクの「燃料供給方式」はフューエルインジェクションのみ!?

バイクのカタログや、メーカーHPに掲載されている「スペック」や「仕様」、「諸元」の表には、購入時の参考やライバル車との性能比較など、役立つ情報が含まれています。どのバイクを見ても「燃料供給方式」の欄はフューエルインジェクションしかないような……。

電子制御で、混合ガスを作る

 バイクのガソリンエンジンは、空気と燃料(ガソリン)を混ぜた混合ガスを爆発・燃焼してエネルギーを生み出します。その混合ガスを作る方法が「燃料供給方式」や「燃料供給装置」という言葉でスペック表に記載されています。

近年のスポーツモデルや大型バイクに多く見られるライドバイワイヤ方式のフューエルインジェクション。ECUからの電気信号で、サーボモーター(上部の円筒状の機器)がバタフライバルブを開閉する。写真はスズキ「Hayabusa」用
近年のスポーツモデルや大型バイクに多く見られるライドバイワイヤ方式のフューエルインジェクション。ECUからの電気信号で、サーボモーター(上部の円筒状の機器)がバタフライバルブを開閉する。写真はスズキ「Hayabusa」用

 現行の市販バイク(公道用の量産車)の場合、排気量50ccクラスの原付から1000ccを超えるビッグバイクまで、ほぼすべてのバイクが「フューエルインジェクション」または「電子制御式燃料噴射装置」と記載されています。

 これは基本的に同じ機構の装置で、略して「FI(エフアイ)」と呼ぶこともあります。フューエルインジェクションは直訳すれば「燃料噴射」であり、現行バイクが装備するのはすべて電子制御式になります。

フューエルインジェクションの概念図(ライドバイワイヤ式)
フューエルインジェクションの概念図(ライドバイワイヤ式)

 フューエルインジェクションは文字通り、電気式の燃料ポンプで圧力を加えたガソリンを、吸い込んだ空気の中にインジェクターと呼ぶノズルから噴射して、混合ガスを作ります。噴射するガソリンの量はECU(エンジンコントロールユニット。いわゆるコンピューター)によって、スロットルグリップの開度やエンジンの回転数などに合わせた最適な量に調整しています。

 吸い込む空気の量はスロットルグリップから繋がるワイヤーケーブルでスロットルボディのバタフライバルブを開閉するタイプと、スロットルグリップの開度を電気信号でECUに伝え、そのECUの制御によるサーボモーターがバタフライバルブを開閉する「ライドバイワイヤ式」があります(ホンダの呼称はスロットルバイワイヤ)。

 前者はフューエルインジェクション登場初期のバイクや、現在も小~中排気量のバイクに使われています。そしてライドバイワイヤ式は様々な電子デバイスを装備するスーパースポーツやアドベンチャーなど、近年の中~大排気量モデルへの採用が増えています。

長い歴史の「キャブレター」

 現行モデル(公道用の量産車)の燃料供給方式はフューエルインジェクションのみと言って過言ではありませんが、世の中に内燃機関のバイクが登場してから100年くらいは「キャブレター」と呼ぶ装置がその役割を担っていました。

旧車に多い強制開閉式のキャブレター。写真はカワサキ「Z750RS」、通称「Z2(ゼッツー)」
旧車に多い強制開閉式のキャブレター。写真はカワサキ「Z750RS」、通称「Z2(ゼッツー)」

 キャブレターは、大気の圧力やエンジンが吸い込む負圧などの物理現象を用いて混合ガスを作り出す装置です。フューエルインジェクションが燃料ポンプやインジェクター、そしてガソリンの噴射量を制御するECUなどが電気で稼働するのに対し、キャブレターは基本的に電気を必要とせず、単体で機能する優れたパーツと言えます。

 しかし「強制開閉式キャブレター」は、ライダーの技量によって発揮できる性能が変わってしまうデメリットがありました。エンジンが実際に欲している混合ガスの吸気量は、その時のエンジン回転数や使用しているギア、登坂や荷物の積載などの負荷によって変化しますが、ライダーがその状況にキチンと合わせてスロットルを開け閉めする必要があるからです。

 そこで1960年台に「負圧式キャブレター」が登場しました。これはライダーが操作するスロットルバルブ(バタフライバルブ)の他に、エンジンの負圧で吸気量を自動調整するピストンバルを備える構造により、ライダーの技量に影響されずにスムーズに加減速でき、燃料の無駄な消費も抑えることができました。そのためフューエルインジェクションに移行するまで、4ストロークエンジンの市販バイクの多くが負圧式キャブレターを採用していました(2ストロークエンジンや原付など小排気量モデルはエンジンの吸気負圧が小さいため、負圧式キャブレターは採用されなかった)。

フューエルインジェクションで、環境性能に対応

 それではなぜ、電気不要で単体で機能する効率の良い機械であるキャブレターから、フューエルインジェクションに切り替わったのでしょうか? スーパースポーツ車などはもちろん性能向上の理由も大きいですが、バイク全体で見ると「排出ガス規制」の影響と言えるでしょう。動力性能だけならキャブレターで対応できたモデル(小排気量車や実用車など)も、環境性能は緻密な電子制御のフューエルインジェクションでなければクリアできなかったからです。

小~中排気量モデルに多い、スロットルケーブルでスロットルボディのバタフライバルブを開閉するフューエルインジェクション。スロットルボディ自体の構造はけっこうシンプル。写真はスズキ「V-Strom 250」
小~中排気量モデルに多い、スロットルケーブルでスロットルボディのバタフライバルブを開閉するフューエルインジェクション。スロットルボディ自体の構造はけっこうシンプル。写真はスズキ「V-Strom 250」

 まず平成11年排出ガス規制で2ストロークエンジンのスポーツバイクの大半が2000年頃に姿を消し、4ストロークエンジンのバイクもキャブレター車は一気に減少。そして平成18年排出ガス規制により、キャブレターの大排気量車は2008年頃、小中排気量車も2010年頃にほとんどが生産を終了し、フューエルインジェクションに移行しました。ちなみに現在の国産市販バイクの中には、競技用のモトクロッサーやエンデューロ車の一部にキャブレターを採用するモデルがありますが、いずれも公道走行はできません。

「燃料供給方式」がフューエルインジェクションのほぼ一択になったのは、こういった背景があったのです。

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Writer: 伊藤康司

二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。

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