自転車でMotoGP観戦? 駐輪場で見たオランダらしい光景 ~「アッセン」ぶら歩き~
MotoGP取材で初めて訪れた「TT・サーキット・アッセン」を歩いていると、いつもと違う光景を見つけました。自転車用の駐輪場があり、たくさんの自転車が停められているのです。それは、オランダならではの光景だったのかもしれません。
伝統あるサーキットで、目にした光景は驚きの連続だった
2023年シーズンのMotoGP第8戦オランダGPの舞台「TT・サーキット・アッセン」は、オランダの北東部に位置しています。アムステルダムのスキポール空港からはクルマで約2時間の道のりです。取材のために初めて訪れた私(筆者:伊藤英里)は、右側通行のオランダで、高速道路でいちばん右の走行車線をキープしながらアッセンに向かって走っていると、ふと、あることに気が付きました。「あ、テスラ」、「またテスラ?」……テスラがとても多いのです。ちなみに復路でもかなりの確率でテスラを見かけました。

高速道路で印象的な経験をしながら、「TT・サーキット・アッセン」にたどり着きました。ここは非常に歴史の長いサーキットで、1925年の公道レース「ダッチTT」がその始まりです。
ロードレース世界選手権が1949年に始まると、その第1回大会から2023年シーズンの現在に至るまで、新型コロナウイルス感染症によって中止を余儀なくされた2020年を除いて開催され続けています。「ロードレースの大聖堂」と呼ばれる、伝統あるサーキットなのです。
アッセンの周辺は山間部でも丘が連なっているわけでもなく、平らな土地にあるサーキットです。実際にコースの周りを歩いてみると、アップダウンがほとんどないことが分かります。

そして、アッセンでいちばん驚いたのは、バイクで観戦に来た人が利用できるサービスです。
メインスタンド裏にバイクで来た人がヘルメットやライディングウエアを預けられる場所があると聞いて向かってみると、確かにありました。男性も女性もその場でさっさとライディングウエアを脱いでヘルメットと一緒に預け、軽装になって観戦に向かうのです。これには1人のバイク乗りとしても「なんて素晴らしいサービス!」と、感動してしまいました。
サービス自体は珍しくないかもしれません。けれど、何より預けられるスペースが大きいこと、そしてバイクの駐輪場からすぐ近くでとても分かりやすい場所にあることが素晴らしいと思いました。MotoGPの観戦に自分の愛車で行って、現地では身軽に観戦できるわけですから、とても良いサービスです。
実際にどんなバイクが停まっているのだろう? と、駐輪場に行ってみました。

とても広い駐輪場に停められているバイクの中を歩いてみると、様々な国から来ていることがわかります。地元のオランダが多いのはもちろんですが、近隣のデンマーク、ドイツ、フランスのナンバーもありました。陸続きのヨーロッパならではの光景ですね。
しかし目を引いたのは駐輪場の屋根。一部がソーラーパネルになっているのです。これにもまた驚きました。
さらにびっくりしたのは(今回、私はびっくりしてばかりです)、その脇。自転車の駐輪場があるではないですか。「隅にちょっと置いています」というものではなく、自転車を立てかけるためのポールが並ぶ、れっきとした「駐輪場」になっています。そしてそこに、びっしりと自転車が停められているのです。別の駐輪場でも、同じようにたくさんの自転車が停められていました。

これまでにいくつかのサーキットでMotoGPを取材してきましたが、バイクがたくさん駐輪していることはあっても、自転車がここまでたくさん停められている様子を見たことはありません。オランダは環境意識が高く、自転車がとても親しまれていると聞きます。高速道路で何度も何度も見たテスラが、頭の中で駐輪場の様子とつながりました。
アッセンで見た自転車用駐輪場は、オランダらしい光景なのかもしれません。
Writer: 伊藤英里
モータースポーツジャーナリスト、ライター。主に二輪関連記事やレース記事を雑誌やウエブ媒体に寄稿している。小柄・ビギナーライダーに寄り添った二輪インプレッション記事を手掛けるほか、MotoGP、電動バイクレースMotoE取材に足を運ぶ。