バイクのチェーンは「伸びる」って、どういうこと?

バイクのチェーンの張り具合のチェックは、メンテナンスの大切な項目のひとつです。それは「チェーンは伸びるから」と言われますが、小さな金属パーツで構成されたチェーンは、いったいドコが伸びるのでしょうか?

じつは、ドコも伸びない!?

 バイクのチェーンは、エンジンが発生したパワーを後輪に伝える重要なパーツです。それだけに清掃や潤滑、そしてチェーンの張り(遊び)のチェックなどのメンテナンスが欠かせません。

ヤマハのMotoGPワークスマシン「YZR-M1」のチェーン。専用品とはいえ、数百馬力のパワーが加わっても伸びることはない
ヤマハのMotoGPワークスマシン「YZR-M1」のチェーン。専用品とはいえ、数百馬力のパワーが加わっても伸びることはない

 チェーンの張り具合をチェックするというコトは、乗っているうちにチェーンが伸びるからですが、いったいドコが伸びるのでしょうか? なんとなくチェーンを構成している金属のプレートが、エンジンのパワーで強く引っ張られて、ほんの少しずつ伸びていくようなイメージがありますが……。

 じつは、近年のチェーンは非常に頑丈で、大型車用のチェーンの引っ張り強度は数トンにも及びます。そのため、スーパースポーツ車の200馬力を超えるパワーで引っ張っても、金属の外プレートや内プレートが伸びるコトはありません。

ドコも伸びないのに、チェーンが長くなるのはナゼ!?

 それでは、チェーンのドコが伸びているのでしょうか? 答えは「どのパーツも伸びていない!!」です。

チェーンを分解したところ。写真は小型車用のノンシールチェーン
チェーンを分解したところ。写真は小型車用のノンシールチェーン

 チェーンは、一見すると金属製の紐(ヒモ)のようですが、実際は細かなパーツをたくさん組み合わせて構成されています。その中でチェーンがスムーズに動くように、コマとコマを繋いでいる部品が「ピン」と「ブッシュ」です。

 このピンとブッシュが、チェーンが動く際にほんの少しずつ摩耗し、隙間が僅かに広がります。この僅かな広がりが、チェーン全体の伸びになるワケです。

 多くの中~大型バイクのチェーンは、おおむね100リンク以上あるため、たとえばピンとブッシュの隙間が摩耗によって0.1mm広がっただけでも、全体では1cmほど長くなります。

チェーンが伸びると、ナニが起きる?

 チェーンが伸びてきたのにそのまま乗り続けると、チェーンの張りが緩くなって“遊び”が大きくなります。張り調整をせずに走っていると、チェーンが上下に大きく揺れ、スイングアームやフレーム等に接触してガチャガチャと異音や振動が大きくなります。もちろん、スイングアームやフレームがキズ付いてしまいます。

チェーンの張り(遊び)の規定値は、スイングアームやチェーンケースに貼られたステッカー、車種ごとのハンドブックで確認できる
チェーンの張り(遊び)の規定値は、スイングアームやチェーンケースに貼られたステッカー、車種ごとのハンドブックで確認できる

 さらに放置して乗り続けると、いっそうチェーンのたるみ(遊び)が大きくなって、最悪の場合はスプロケットから外れてしまうこともあります。当然走れなくなりますが、それだけならまだしも、走行中だと外れたチェーンがホイールに絡まって後輪がロックすることもあり、転倒の危険があります。

 また、外れたチェーンがエンジン側のスプロケットに噛み込んで、クランクケースがヒビ割れてしまうこともあります(コレは廃車に近い大きなトラブル)。

 そんなトラブルを防ぐには、相応の頻度でチェーンの張り(遊び)をチェックして、規定値よりたるんでいる(遊びが大きい)場合は、張り調整を行ないます。

 チェーンの張りの規定値は、スイングアームやチェーンケースに貼られたステッカーや、車種ごとのハンドブックに記載されています。また、張りの調整作業は難易度が高いので、バイクショップに依頼するのがオススメです。

チェーンの寿命(交換時期)は?

 チェーンの張り(遊び)をチェックして、キチンと張り調整を行なっても、いつまでもチェーンが使えるワケではありません。それはチェーンが大きく伸びてしまうと、スプロケットとの「ピッチずれ」が発生するからです。

チェーンが伸びると、チェーンのピッチとスプロケットのピッチがぴったり合わなくなる「ピッチずれ」が発生する
チェーンが伸びると、チェーンのピッチとスプロケットのピッチがぴったり合わなくなる「ピッチずれ」が発生する

 チェーンとスプロケットのピッチずれが起きると、やはり振動や騒音が大きくなります。厳密に言えば、エンジンのパワーをロスするので、そのぶん燃費も悪化します。前述したように、近年のチェーンは丈夫なのでいきなり切れたりはしませんが、ピッチずれを起こすほど伸びたら、チェーンの寿命と考えて交換しましょう。

 とはいえ、ピッチずれを目で見て判断するのは困難です。走行距離だとシールチェーンなら1万5000~2万km、ノンシールチェーンで5000km前後という説もありますが、これはあくまでざっくりした目安。バイクの種類やチェーンの種類、なにより乗り方やメンテナンスの状況で大きく変わります。

 そこで、ピッチずれを考慮して「どれだけ伸びたら交換」と考えるのが得策です。判断の仕方は、スイングアーム後端の「チェーン引き」を見て、張り調整で新品のチェーンから8~10mm引いた状態になったら使用限度です(チェーン全体では16~20mmほど伸びた状態)。

 ちなみに、チェーンを交換する際は、前後のスプロケットも同時に交換することがオススメです。

【画像】バイクのチェーンを詳しく見る(10枚)

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Writer: 伊藤康司

二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。

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