ガソリンはいつも「満タン」がオススメ! 冬場は特に!!

バイクの給油タイミングは、ガス欠寸前まで粘ってから給油する派? それともたびたび給油して満タン維持する派? 燃費が同じなら使うガソリンの量も同じなので、違いは無いような気がしますが……バイクのためには、満タンの状態を維持した方が良いかもしれません。

重量的には「空(カラ)」に近い方が有利だが……

 ガソリンは満タンの方が良いのか? それとも空(カラ)に近い方が良いのか? これは状況によっても変わります。

ガソリンは満タンの方が精神的には安心かも……写真はヤマハ「TRACER9 GT+」のメーターパネル
ガソリンは満タンの方が精神的には安心かも……写真はヤマハ「TRACER9 GT+」のメーターパネル

 たとえばレースの場合は、当然ながらできるだけ軽い方がスピードが出るのでタイムも良くなります。そのため本格的なレースでは、とくに予選では計測で走る周回のギリギリしかガソリンを入れません。その意味では、一般ライダーがサーキット走行を楽しむときなども、満タンより空に近い方がスポーティに走れるかもしれません……が、これらは特殊な例と言えるでしょう。

 車種にもよりますが、大型バイクなら満タンよりも空に近い状態なら、車両の重量が10~15kgくらい軽くなるので、一般ライダー的には「押し引きの取り回しがラクになる」ことがメリットかもしれません。とはいえツーリング中なら、ガソリンが空に近くなるとドキドキするので、満タン近く入っている方が安心できるのも事実です。

タンクが「空(カラ)」だとサビやすい!?

 それでは重量以外では、ガソリンは満タンと空(カラ)に近い方と、どちらが良いのでしょう? じつはバイクを傷めないためには、満タンの方がオススメと言えます。何故なら、満タンの方が燃料タンクの中がサビにくくなるからです。

燃料タンクの中に発生したサビ
燃料タンクの中に発生したサビ

 冬場に窓ガラスが白く曇ったり、冷たい飲み物を入れたコップに水滴が着く「結露」という状態がありますが、じつは燃料タンクの中でも同じことが起こっています。

 タンクの中にはガソリンと空気があり、走行中はエンジンの熱などで空気は温まっています。しかし走行を終えると温度が下がり、タンクの中の空気に含まれる水蒸気が結露して、タンクの内側に細かな水滴となって付着します。

満タンに近いほど燃料タンク内の空気の量が減るため結露しにくい。「空(カラ)」に近いほど空気の量が多くなるため、結露で発生する水分の量も増え、水滴が付着する面積が増えるので広範囲でサビやすくなる
満タンに近いほど燃料タンク内の空気の量が減るため結露しにくい。「空(カラ)」に近いほど空気の量が多くなるため、結露で発生する水分の量も増え、水滴が付着する面積が増えるので広範囲でサビやすくなる

 もちろんこの水滴は大した量ではないのですが、水の方がガソリンより比重が高いので、タンクの底の方に少しずつ溜まっていきます。それなりの頻度でバイクに乗っていれば、次に走行する際にガソリンと一緒にエンジン内で燃焼(水なので燃えずに水蒸気になって)排出されるので問題ないのですが、冬場などに長期間乗らない状態が続くと、日々結露を繰り返します。すると春先に乗ろうとしたらエンジンがかからない……という可能性があります(燃料ラインの中が水で満たされるので燃焼しない)。

 そして燃料タンク内側に付着した水滴は、酸素と結合することでサビの原因になります。

 旧車など製造から時間が経過したバイクは、タンクキャップから中を覗くと、底の方が赤くサビていることが良くあります。また底の方がサビていなくても、キャップのあるタンクの「天井」の方が空気(=酸素)に触れやすいため、見て確認することができませんが、サビていることは多々あります。

燃料を満タンにして空気の量を減らそう!

 そこで、サビ対策として簡単に出来るのが「いつもガソリンを満タンにしておく」ことです。燃料タンクの中の空気の量を減らすことが、もっとも効果的だからです。

ガソリンの入れ過ぎに注意。満タンは定められたレベルまで
ガソリンの入れ過ぎに注意。満タンは定められたレベルまで

 たとえばツーリングの帰り道では、次にすぐ乗る予定が無くても自宅に近いガソリンスタンで満タンにしてから帰宅すると良いでしょう。通勤や通学などで頻繁に乗る人も、タンクが空になってから入れるのではなく、少々面倒でも短いサイクルで満タンにすることがオススメです。気温の低い冬場や湿度の高い梅雨時は結露しやすいので、その時期だけでも意識することが得策です。

 とはいえ、タンクキャップの口元までパンパンに満たすのはNGです。気温が上昇するとガソリンも温まって体積が増えるので(想像以上に膨張する)、空気抜きのブリーザーからガソリンが漏れる危険性があります。あくまで定められたレベル(給油口の穴の開いたプレートまで)の満タンにとどめておきましょう。

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Writer: 伊藤康司

二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。

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