加速する中国のEV化、3年でガラリと変わった街中の景色 ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.225~
レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、バイク天国のような中国に、ツーリングの文化は無いようだと言います。どういうことなのでしょうか?
そもそもナンバーが取得できない!?
コロナ禍が明けて、僕(筆者:木下隆之)は久しぶりに中国・上海を訪れましたが、3年前とは街中の景色がガラリと変わっていることに驚かされました。3年前にもすでに、上海を走るクルマは圧倒的にEVに支配されそうな雰囲気でしたが、それがさらに加速していたのです。

ピックリさせられたのは、世界の著名なカーブランドに代わって、これまで聞いたことも見たこともない中国自動車メーカーのクルマで埋め尽くされていたことです。すでに中国には43もの自動車メーカーがあるそうです。日欧米の老舗カーブランドの苦戦は日本でもマスコミを通じて報じられていましたが、現地の状況を目の当たりにすると、危機感を意識せざるを得ません。
3年前は、トヨタや日産のクルマを多く見かけました。ですが、気にしていなければ日本メーカーのクルマに気づくことはありません。BMWやベンツはまだまだ見かけますが、ずいぶんと少なくなったような気がします。
これはひとえに、国策によるEV化の影響でしょう。EVは元々部品点数が少ないうえに、内燃機関よりイージーにクルマにすることができます。しかも中国メーカーには多額の補助金が投入されているため、雨後の筍のように、新興のEVメーカーが増えているのです。
それに加えて、上海などのようにガソリン車のナンバーを取得するには、高額な資金が要求される地域もあります。ガソリンナンバーの取得は高難関の抽選方式です。一部の富裕層しか取得することができません。安価な中国製EVばかりになってしまうのも道理です。
2輪も同様に、中国の新興メーカーの電気バイクで溢れています。ホンダやヤマハのブランドを目にすることは日本ほど多くはありません。
かつて中国には、自転車やガソリンバイクが道に溢れ、交通法規を無視したカオス状態でしたが、そんな面影はほとんど残されてはいないのです。
街中には、それこそ数10mおきに市民を監視するカメラが光っています。通過するたびにチカッチカッと赤く点滅するのがそれですから、交通法規を無視して速度を上げることもできませんし、信号無視も減りました。公安によって即刻逮捕、厳罰が待っているようです。
それでも、中国には譲り合いの精神は少ないですし、慣れた市民は、監視カメラの死角をついて逆走したり、無灯火で走ったりもします。のんびりと走るのは危険です。ですが、かつての混沌を思えばずいぶんと走りやすくはなりました。
そんな環境ですから、中国でバイクツーリングを楽しもうというのは、なかなか大変なことのようです。ガソリンバイクのナンバー取得は、クルマのナンバー取得の5倍ほど高価だと聞きます。よしんば資金を用意できたとしても、抽選に当たる確率は「宝くじに当たるようなものだ」とは友人の弁です。
たくさんのバイクが行き交う中国はバイク天国のようでもありますが、ツーリングを楽しむという文化は、ほとんどないようです。
Writer: 木下隆之
1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。


