沼にハマって迷走してない? モータースポーツ総合エンターテイナーの濱原颯道がサスペンションのバネレートセッティングを徹底解説

国内外で活躍するモータースポーツ総合エンターテイナーの濱原颯道選手が、ライダー永遠の悩みである「サスペンションのセッティング」を解説!今回は、バネレート編です。

分からなくなったらまずは基準値に戻す!

 皆さんこんにちは。モータースポーツ総合エンターテイナーを名乗っている濱原颯道です。

 今回はライダー永遠の悩みである「サスペンションのセッティング」について、お話ししたいと思います。と言ってもWEB記事では事細かく書けないのでさわり程度となりますが、今回はバネレートについて話したいと思います。

台湾でサスペンションのセッティングをしている時。僕の話は台湾の人たちにもウケた
台湾でサスペンションのセッティングをしている時。僕の話は台湾の人たちにもウケた

 まず初めにサスペンションセッティングについては、「触ったらよくわからなくなって、沼のようにハマって余計わからなくなりそう」という方を多く見かけます。そういう時はまず基準値(メーカー推奨値)に戻しましょう。これはどんなカテゴリのバイクでも、共通して言える大事な事です。

 そしてこの基準値に戻す事も大事なのですが、定期的にオーバーホール(サスペンションの中身のパーツをリフレッシュしたり、リアサスペンションのガスを注入し直したりオイル交換したりする事)を強く推奨します。

 長らくオーバーホールをしていないサスペンションの動きは、基本的におかしいと思った方が良いでしょう。それはそうですよね。そうでなくては、新品を購入する意味も無くなってしまいます。

 まずこの2点をベースに考えておけば、サスペンションのセッティングが変に沼にハマってよく分からなくなってしまう事は無くなると思います。

これは以前僕が乗っていたホンダ「CBR1000RR-R」。トップキャップがアウターチューブと同じ太さで尚且つ、10ミリくらい分厚いので、突き出し量をさらに10ミリ減らすこともできるようになっていた
これは以前僕が乗っていたホンダ「CBR1000RR-R」。トップキャップがアウターチューブと同じ太さで尚且つ、10ミリくらい分厚いので、突き出し量をさらに10ミリ減らすこともできるようになっていた

 そして、次に大事なのは体重や走る場所(公道なのかサーキットメインなのか)に合わせた、バネレートに合わせる事。とは言っても、なかなかストリートバイクでバネを変える事は難しいかと思いますが、ほとんどの国産バイクはライダーの体重が75㎏くらいを想定されて作られています。

 ちなみにこれは装備品を纏った状態。裸でバイクには乗らないので、この時バネレートを合わせるのは裸の体重ではありません。この基準体重となる75㎏に対して僕的には体重が±8㎏変わるなら、バネレートを変えた方がより適正になると思っています。

 その為、極端に体重の軽い女性や小柄な男性はバネレートを下げたり、僕みたいに90㎏を超えている人はバネレートを上げた方が、より乗りやすくなるでしょう。

 しかしこれはあくまでも公道での話。まあ公道でバネレートまで合わせ込む必要もないのですが、あくまでも理想の話です。

サーキット走行でのバネレートセッティング

 サーキットを走る場合は、体重とバネレートの関係は一概には前述の話とはイコールにならない事があります。

 サーキットを走る上で、大まかにサスペンションに対して負荷のかかる行為は以下の4点。

・路面のグリップが高い
・路面が綺麗
・ハイグリップタイヤなどを履いて走行する
・そもそも走る速度域が高い

 逆に言うと体重の軽い人でもグリップと速度域が高い事によって 街中では乗り心地のいいバネレートだとしても、走りやすいバネレートに変える必要があると言う事です。

レースの時はこのようにグリット時にもサスペンション担当のスタッフさんが付き添ってくれる。レース前最後にグリッド上でセッティングを替えることもあったりする
レースの時はこのようにグリット時にもサスペンション担当のスタッフさんが付き添ってくれる。レース前最後にグリッド上でセッティングを替えることもあったりする

 そのくらい、速度域とバネレートの関係は密接していると僕は思っています。なのでサーキットで言えば桜井ホンダでレースをしていた時代に、8耐で組んだ日浦ダイジロー選手と僕は20㎏以上の体重差がありましたが、バネレートで言えば大して変わりませんでした。

 このように、走るコースとバイクとタイヤが同じであれば、案外体重差があってもバネレートには影響しない事もあります。

 次に、これはちょっとマニアックかも知れませんが、プリロード(イニシャルとも言う)についてお話ししたいと思います。

 プリロードというのはサスペンションに組み込まれたバネを縮めておく機構の事で、ここの締め具合でバネの特性を変える事ができます。

 例えば、プリロードがかかってない0mmの時に人間が跨ったら、サスペンションが20mm沈むのに対してプリロードを8mmかけた時に人間が跨ると、15㎜しか沈まないというように、調整する事が可能。

僕が台湾で仕上げたバイク。このバイクのオーナーの社長がこのバイクに乗ったら「最高な乗り味!ベストタイムを1秒も更新できた!颯道の速さは人間のテクニックとマシンを作り上げる能力!」と絶賛してくれた。僕の作ったバイクは比較的誰でも乗りやすいみたい
僕が台湾で仕上げたバイク。このバイクのオーナーの社長がこのバイクに乗ったら「最高な乗り味!ベストタイムを1秒も更新できた!颯道の速さは人間のテクニックとマシンを作り上げる能力!」と絶賛してくれた。僕の作ったバイクは比較的誰でも乗りやすいみたい

 これを「硬くなった」と言う人もいますが、バネレート自体は変わっていないので本当は硬くなったのではなく、沈んだ後の高さが変わったと言った表現の方が、正しいと僕は思っています。

 一方で、沈み込む最初の硬さは変わります。これも硬くなったのではなく、僕は反力が強くなったと表現する事が多いです。

 何が言いたいかと言うと、今欲しいのが硬さが欲しいのか高さが欲しいのか反力が欲しいのか、サスペンションの減衰力を除いた話で言うと、この3点の中から話し始めていくとサスペンションのセッティングは進めて行きやすいという事。とは言え、実際に全日本ロードレース選手権に参戦しているレベルのライダーで、もこの辺りの話を理解している人は少ないと思います。

 僕自身、全日本ロードレース選手権に参戦しているライダーに「このコーナーが走りにくく?」などと、セッティングの事を聞かれた時によく聞き返すのが、「それは高さが欲しいのか、硬さが欲しいのか、反力が欲しいのか」と言う質問。

 僕はメカニックさんにいつも「硬さが欲しい!」などと断言してしまうので、他の多くの選手と違って言葉のラリーが減る分、早くセッティングを進める事ができます。

バネレートにはこのように硬さを表記する数値がある。ちなみにバネは使えばヘタるので定期的に機械で実測値を測る必要がある。なのでキリのいい数字が表記されているバネでも実測値とは違う可能性があると言う事
バネレートにはこのように硬さを表記する数値がある。ちなみにバネは使えばヘタるので定期的に機械で実測値を測る必要がある。なのでキリのいい数字が表記されているバネでも実測値とは違う可能性があると言う事

 だいぶ話がレーシング方向になってしまいましたが、ストリートよりもサスペンションに対して要求が増えるサーキットの話の方が、僕としても話しやすくて(笑)

 簡単にまとめると、

・ブレーキのかけ始めで硬く感じる→プリロードを抜く=反力を抜く
・ブレーキをかけて行ってからが硬い→バネが硬い=バネを弱くする
・そもそもブレーキをかけ始める前から硬そうで上手く握り込めない→前が高い=突き出し量を増やして前を下げる

 というイメージで、ブレーキング時にフロントサスペンション周りから感じる「硬い」と言う感覚だけで、こんなにも対処の方法が出てきます。

 リアサスペンションは、これに加えてもう3項目ぐらいあると僕は思っています。

 減衰力やガス圧、オイルの油面などの話を抜きにしても、こんなにやれる事があるので、上記の3つの違いも分からずに、「やれリバルビングだ、高級なサスペンションだ」みたいな話をする方も多いので、まずは絶対に戻れる基準値があるなら色々と触ってみてください。

 バイクは乗る楽しさもありますが、いじる楽しさもあると僕は思います。

 いかがでしたか?僕は暇なのでコメント欄なども全部チェックしているので、「それはちゃいますがな」や「この部分が分からない」などの意見があれば、どんどんコメントで質問して頂ければ嬉しいです。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

濱原 颯道 I AM YOUR RIDER

【画像】サスペンションのセッティングをするモータースポーツ総合エンターテイナーの濱原颯道選手を画像で見る(10枚)

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Writer: 濱原颯道(プロライダー)

全日本ロードレースでは国内2位、全日本スーパーモトでは国内3位の経験があり、他にもオフロードやストリートまでバイクならなんでも好きな男。普段は個人レッスンにマシンセットアップ、テストライダーなどと色々な活動をしている。バイクに関することならビギナーから国際ライダーまで、多くの人から相談を受けたりもしている。

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