ホンダの意地と技術を証明したモデル! 90年代に誕生したホンダの高級セダン「ビガー」とは
モータースポーツ界の生き字引、現役レーサーの木下隆之氏の新連載コラム「木下隆之のヒストリカルパレード(通称:ヒスパレ)」がスタート! 連載第5回目は、FF駆動を採用したホンダの高級セダン「ビガー」を解説します。
人に愛される車づくりとは
ホンダは古くから「マンマキシマム・メカミニマム思想」を社是のようにして、人に愛されるくるまを作り続けてきました。
”人間の空間は広く、機械は小さく”
ホンダのクルマは比較的コンパクトでありながら、居住空間がことさら広く感じるのは、この思想が貫かれていたからでしょう。

そのため、駆動方式はFF(フロントエンジン+フロントドライブ)にこだわり続けてきました。クルマの中で最大の重量物であるエンジンを前方の隅に配置することは、室内空間を確保するのに都合がいいからです。
エンジンが発する出力を後輪に導くには、プロペラシャフトを通すためにフロアトンネルを持ち上げる必要がありますが、FF駆動であれば床の盛り上がりは、マフラーや配線系を通すだけですから最小限に抑えられます。それにより、後席の足元に余裕が生まれるのです。
NSXやS2000のようなスポーツカーは例外ですが、コンパクトモデルから高級セダンまで、FF駆動方式が基本とされてきたのはそれが理由です。現代の4WDモデルもFF駆動方式の派生系になります。
ただし、FF駆動にはデメリットもあります。高級な走り味を生み出しづらいのです。
けして軽くないエンジンを前方の隅に追いやった結果、前後重量配分が悪化します。操縦性の悪化を招きます。
エンジンを横置きにするということは、エンジンの長さを制限することにもなります。直列6気筒やV型8気筒のような高級車に相応しいエンジンを積むのに、横置きではスペースが不足します。ボディの横幅を越えるわけにはいかないからです。
結果的に、直列エンジンであれば、4気筒以下の幅の狭いエンジに限られます。V型6気筒エンジンがまだポピュラーではない時代でした。コントパクトモデルならば割り切れるとはいえ、上質なドライビングフィールが期待される高級車にとっては、やや致命的なシステムでもあるのです。

そのストレスから解放するために、ホンダは特殊なシステムを開発しました。ホンダ最大の高級セダン「ビガー」のために、直列5気筒エンジンを開発したのです。そしてその直列5気筒エンジンを縦に積んだのです。
となればFR駆動とするのが常識ですが、ビガーはFFのままです。









