すごいバンク角!! クルマのドリフトシーンに通ずる? ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.241~
レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、MotoGPライダーのコーナリングシーンを見て、クルマで言うところのドリフトシーンに近いのでは、と言います。どういうことなのでしょうか。
そんなに寝かせて怖くないの!?
MotoGPなどのコーナリングシーンには驚くばかりです。可能な限り速く走ろうとすると、遠心力に打ち勝つために過激なバンク角になるのでしょうが、それにしても……。一流のプロライダーのテクニックと、そしてその度胸には驚きを超えて呆れるほどです。

ほとんど体が路面に擦っているような状態です。ともすればヘルメットも擦れるのではないだろうかというほどに、低い。もはや、これ以上傾けるのは物理的に不可能でしょう。それにしても恐怖心は無いのでしょうか?
とあるライダーの言葉を借りると、意外に恐怖心は無いそうです。
「コケたとしても路面に叩きつけられないので痛くない」
本心かどうか怪しい気がしますが、それが理由だというのです。
確かに高い位置から路面に叩きつけられるよりは、低い位置からそのままザーッと滑った方が強打しなくて済むかもしれません。路面との摩擦に強いスーツを着用していれば、擦り傷にはなりづらいのでしょう。
確かに、バイクともどもコース上から芝生エリアまでツーっと滑っているシーンを見かけます。ライダーはスクッと立ち上がり、急いでバイクに駆け寄り、またレースに復帰する。そんな光景を観ることはあります。
ただ、ハイサイドではどうでしょうか。旋回中にスライドしたタイヤのグリップが急激に回復した瞬間、バイクはあらぬ動きをします。その名の語源のように、ライダーはバイクの上側を通過して路面に叩きつけられます。その場合、深いバンク角でコーナリングしている分、衝撃が多いような気もします。
クルマで言うならば、ドリフトのようなシーンでしょうか。ドライバーが路面スレスレに……とは異なりますが、スライド中に突如としてタイヤのグリップが回復すると、ステアリングが切れている方角に向かって急激にマシンが振られます。カウンターステアでマシンをねじ伏せている状態ですから、逆に弾かれるのです。
ライダーのように路面に叩きつけられるわけではありませんが、クルマでのドリフトではほとんど場合、逆サイドのガードレールに叩きつけられます。体へのダメージも無視できません。
いやはや、ライダーもドライバーも、極限にトライするには大きな代償を覚悟しなければならないのですね。誰にでも出来るわけではない技術だから、プロと呼ばれるのでしょう。
Writer: 木下隆之
1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。



