バイクの技術をプレジャーボートにも応用できるのでは!? ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.242~
レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、バイクのサスペンション技術がプレジャーボートにも応用できるのでは? と言います。どういうことなのでしょうか。
荒波とオフロード、衝撃吸収には通ずるものがあるのでは……
ヤンマーが開発したサスペンションボートは画期的です。ボートの船体を上下に分割し、さらに水面に接する部分をニ分割しつつフロートに組み替えます。本来の船体とフロートをダンパーで連結します。つまり、そのフロートが波のエネルギーを吸収し、高速でも船体が大きく暴れることなくスムーズに旋回することを実現するものなのです。

荒波を受けてフロートが突き上げられると、油圧のサスペンションが受動的に減衰力を発生し、波のエネルギーを吸収するという仕掛けです。いわば、悪路を突き進むオフロードマシンのボート版のようなイメージですね。
ボートの揺れはちょっと厄介です。客船のような数万トンの巨大な船であれば揺れは穏やかですが、いわゆるクルーザーと呼ばれるようなプレジャーボートでは、乗り心地は激烈を極めます。
客船の穏やかな揺れも、船酔いを誘うという点では歓迎できるものではありませんが、ボートは速度を上げれば上げるほど、船体は波に叩きつけられます。その衝撃は強く、ボートにしがみついていないと振り落とされるほどなのです。あの乗り心地が嫌でボートを敬遠する人も少なくないようです。
ボートのハル(船体)を波を切る形状にすることで、衝撃を和らげようという試みも進んでいますが、波切りを良くするためにはハルを尖らせる必要があり、そうするとクルーザーの居住スペースが犠牲になります。しかも、ただ浮いているような場面でも揺れが収まらないというデメリットもあり、波切りだけを優先するわけにもいかないのです。
ボートは旋回すると、バイクのようにイン側に大きく傾きます。この傾きに抵抗を感じる人もいます。そんな時でもヤンマーが開発したサスペンションボートは、左右のフロートをアクティブに制御することで、船体を安定させながら旋回することを可能にするのです。
ただ、船体をニ分割して下部をフロートに置き換えるために、船体の居住スペースは無くなります。マリーナに停泊してパーティで盛り上がり、あるいは星空を眺めながら宿泊するのもマリンレジャーの楽しみのひとつですが、サスペンションボートではそれが不可能になります。それが理由なのかわかりませんが、まだ実用化されていません。
ともあれ、こうしたサスペンション技術は、バイクメーカーが得意とする技術です。モトクロスのような激しいスポーツには、高性能なダンパーが欠かせません。奇しくもヤマハはプレジャーボートを生産しています。ぜひとも、揺れないボートの開発を期待したいところです。
Writer: 木下隆之
1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。







