ブレーキ液は、オイル(油)じゃない!?

いまどきのバイクは、ほとんどが油圧式ディスクブレーキを装備しています。「油圧式」と呼ぶくらいなので、油(オイル)の圧力を使っているんだろう……と思うのが普通ですが、じつは、ブレーキ液はオイルではないのです!

「油圧」なのに、“油”じゃない!?

 現行バイクの多くが装備する油圧式ディスクブレーキは、パスカルの原理(密閉容器の中の流体は、ある一点に受けた圧力をそのままの強さで、すべての部分に伝える)を用いて制動力を生み出しています……難しい理屈はともかく、ブレーキレバーやブレーキペダルのマスターシリンダーには液体の入ったタンクが繋がっているので(マスターシリンダーとタンクが一体式の場合もアリ)、この液体を使ってブレーキを効かせているんだな……というのは、なんとなくイメージできるでしょう。

フロントブレーキのマスターシリンダーに繋がるタンク(カップ)。中に入っている液体を「ブレーキオイル」と呼ぶ人も多いが……
フロントブレーキのマスターシリンダーに繋がるタンク(カップ)。中に入っている液体を「ブレーキオイル」と呼ぶ人も多いが……

 この液体を「ブレーキオイル」と呼ぶ人が多いのですが、じつは油(オイル)ではありません。油圧式ディスクだから油(オイル)だと思って不思議はないのですが、正しくは「ブレーキフルード(Brake Fluid)」と呼びます(Fluid=液体、流体の意味)。

 ただし、かなり昔のクルマ(4輪車)の油圧式ディスブレーキには、鉱物油系のブレーキフルードが使われていたので、そちらはブレーキオイルと呼んでも間違いではないでしょう。しかし現在のブレーキフルードの素材は油(オイル)ではなく、ポリエチレングリコールモノエーテルと呼ばれる物質をベースに作られるモノが主流です。

沸騰しにくい特性が重要!

 油圧式ディスクブレーキは、ブレーキレバーやペダルを操作してマスターシリンダーに発生したブレーキフルードの圧力を、ブレーキホースを介してブレーキキャリパーに伝え、ピストンがブレーキパッドをディスクローターに押し付ける摩擦力でブレーキが効きます。

油圧式ディスクブレーキの概念図
油圧式ディスクブレーキの概念図

 そのため、ブレーキフルードには圧力による体積の変化が小さいことが要求されます。

 また、ブレーキをかけるとブレーキパッドとディスクの摩擦によって高い熱が発生しますが、その熱でブレーキフルードが沸騰して気泡が発生してしまうと、レバーやペダル操作をしても気泡がつぶれるだけで圧力がブレーキキャリパーのピストンに伝わらず、ブレーキが効かなくなってしまいます(この現象を“ベーパーロック”と呼ぶ)。

 そこでブレーキフルードには高温でも沸騰しにくい特性が重要になりますが、これらの条件を満たす物質が、ポリエチレングリコールモノエーテルなのです。

必ず「DOT規格」を守る!

 ブレーキフルードは沸騰しにくいことが重要なので、沸騰する温度を規格化しています。日本のJIS(表記はBF)で決められていますが、アメリカ連邦自動車安全基準によるDOT(ドット)の表記が一般的です。

沸点温度の違いを「DOT」で規格化
沸点温度の違いを「DOT」で規格化

 現行の市販バイクはDOT4が主流で、旧車や小排気量モデルはDOT3指定もあります。ハーレーダビッドソンは、以前はDOT5指定でしたが、2005年以降はDOT4が使われています。

 DOT3とDOT4はポリエチレングリコールモノエーテル(グリコール系)ですが、DOT5は素材の異なるシリコン系で、沸点が高くレース等にも使われています。ただしグリコール系とは性質が異なるため、DOT3やDOT4指定のバイクに使うと、ブレーキシステムのシールやパッキンを傷める危険があるので、DOT指定は必ず守る必要があります。

 また近年は、グリコール系でさらに沸点の高いDOT5.1も登場しています。シリコン系のDOT5と同じ沸点ですが、混同や誤用を避けるために5.1という表記になっています。

グリコール系で沸点を高めた「DOT5.1」のブレーキフルード。写真はドイツの潤滑油や添加剤などのケミカルメーカー「LIQUI MOLY(リキモリ)」の製品
グリコール系で沸点を高めた「DOT5.1」のブレーキフルード。写真はドイツの潤滑油や添加剤などのケミカルメーカー「LIQUI MOLY(リキモリ)」の製品

油じゃないから、水で洗い流せる!

 ブレーキフルードの素材となるポリエチレングリコールモノエーテルは「溶剤」としても使われる物質なので、ゴムやプラスチックなどの樹脂系のパーツや塗料を傷める危険があります。

 そのため、もしブレーキフルードがカウリングや燃料タンクなどに付着してしまったら(フルード交換時や、マスタータンクのキャップから僅かに滲んだ場合など)、速やかに水で洗い流しましょう。

 ポリエチレングリコールモノエーテルは油(オイル)ではなく水溶性なので、パーツクリーナー等を使わなくても、ジャンジャン水で洗い流せばキレイに落とすことができます。

【画像】ブレーキ液と油圧式ディスクブレーキを画像で見る(12枚)

画像ギャラリー

Writer: 伊藤康司

二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。

編集部からのおすすめ

2026年 バリバリ伝説に再び注目? ライダーのバイク愛を教えて! 投稿キャンペーン始動であの名シーンがよみがえる!【PR】

2026年 バリバリ伝説に再び注目? ライダーのバイク愛を教えて! 投稿キャンペーン始動であの名シーンがよみがえる!【PR】

最新記事