ブレーキ液は、減る? 減らない?
バイクを快適・安全に乗るには日々の点検やメンテナンスが大切です。なかでも「ブレーキ」は重要保安部品だけに、日常的なチェックが必須。ブレーキ液の量もそのうちのひとつですが、そもそもブレーキ液は、減るのでしょうか?
ブレーキフルードの液量は、乗る前に必ずチェック
安全にバイクに乗る上で、JAF(日本自動車連盟)も推奨している日常的な点検『ブタと燃料(ブレーキ、タイヤ、燃料)』がありますが、なかでもブレーキは最重要項目と言えます。

ブレーキシステムは多くの部品で構成されていますが、目視で確認しやすいのがマスターシリンダーのリザーバータンク(フルードカップとも呼ばれる)に入っているブレーキ液(ブレーキフルード)の液量レベルのチェックではないでしょうか。
リザーバータンクには「UPPER(上限)」と「LOWER(下限)」のラインが刻まれています(表示の文字が異なる場合もアリ)。このラインの間にブレーキフルードが収まっていればOKです。
……とはいえ、いつ見ても液量のレベルはほとんど変わらないように感じます。実際のところ、ブレーキフルードが減ることはあるのでしょうか?
ブレーキフルードが短期間で減ったら、重大なトラブル!
油圧式ディスクブレーキは、図で示すようにマスターシリンダーで生み出した高い圧力をブレーキキャリパーに伝え、キャリパーのピストンに押し出されたブレーキパッドとディスクローターとの摩擦によって制動力が発生する構造です。

ブレーキフルードは摩擦熱による高温でも沸騰しにくく、蒸発しにくい素材が使われています。また当然ながら高い圧力を使うため、ブレーキフルードが入っている部分は「密閉」されています。
というワケで、構造的にブレーキフルードが減るコトは、基本的にありません。
反対に、ブレーキフルードがリザーバータンクの目視でわかるほど減っていたら、マスターシリンダーやブレーキキャリパーのシールが傷んでいたり、ブレーキホースの継ぎ目や取り付け部分(バンジョーボルト)から漏れている可能性があります。これは重大なトラブルなので、絶対に乗らずにバイクショップに連絡して取りに来てもらうしかありません。
実際は減らないが……「見た目」では減る!?
ここまで「ブレーキフルードは基本的に減らない」ことを解説しました。ところが、矛盾するようですが、じつはリザーバータンクの「見た目」では、ブレーキフルードの液量のレベルは徐々に下がって(減って)いきます。ナゼでしょう?

それは「ブレーキパッドが減る」からです。ブレーキパッドが減ると、摩擦材の厚みが薄くなった分だけブレーキキャリパーのピストンが押し出されるので、キャリパー内に溜まるブレーキフルードの量が増え、その分マスターシリンダー側=リザーバータンクからブレーキフルードが移動します。
ブレーキフルードの総量は変わらないのですが、キャリパー側に移動した分だけ、リザーバータンクの液量は見た目で「減る」わけです。
とはいえ、ブレーキパッドの摩耗でフルードがキャリパー側に移動する量は微量です。ブレーキパッドの摩擦材の厚さは新品で5mm前後ですが、ブレーキパッドの交換が推奨される残量2mmまで使うと、ブレーキキャリパーのピストンは3mmほど押し出されます。これによってキャリパー側へブレーキフルードが移動する量は、大型スポーツ車に多い対向4POTダブルディスクだと20~25ccくらいで、小中型車の片押し2POTシングルディスクだと5ccほどになります(いずれも計算値)。
そのため、ブレーキパッドが新品時と使用限界の交換時期でリザーバータンクの液量レベルを比べれば、ブレーキフルードが下った(減った)ことを確認できるでしょう。
とはいえ、いまどきのブレーキパッドは耐摩耗性に優れライフが非常に長いので、1000kmを超えるようなロングツーリングに行っても1mmも減らないでしょう。だから日々リザーバータンクをチェックをしても、液量の変化はほとんど判らないのです。
ブレーキフルードは、注ぎ足す必要ナシ!
前述したように、ブレーキパッドが減ることでリザーバータンクのブレーキフルードの液量は見た目では減りますが、減った分フルードを「注ぎ足す」必要はありません。

まず、ブレーキパッドが新品の時にブレーキフルードを「UPPER(上限)」まで入れておけば、ブレーキパッドが交換時期まで摩耗しても「LOWER(下限)」を下回ることはありません(ブレーキシステムの各パーツがノーマルの場合)。
それにたくさんフルードが入っているほどブレーキが良く効くというものではなく、ブレーキパッドを新品にすれば、キャリパー側からブレーキフルードが移動してリザーバータンクの液量は(見た目で)元に戻るので、注ぎ足す必要が無いのです。
ちなみに、ブレーキパッドを新品に交換した際は、リザーバータンクの液量が「UPPER(上限)」を超えていないかチェック&調整する(過剰なら抜く)必要があります。
そして繰り返しになりますが、もし短期間で目に見えてフルードが減っている場合は、どこかからブレーキフルードが漏れている重大なトラブルの可能性が高いので、ブレーキフルードを注ぎ足して乗ることは絶対にNGです!
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。






