大幅刷新を受けたBMWのヘリテージモデル「R 12 nineT」はどんな世界を構築しているのか?

先代との相違点と、兄弟車との差別化

 注目するべきは大幅刷新を受けた車体。今回の試乗はそんな気持ちで臨んだのですが、実際に「R 12 nineT」を走らせて、私が最も驚いたのは先代から転用したエンジンの変貌でした。

先代から継承されたエンジンは、驚くほど洗練されていた
先代から継承されたエンジンは、驚くほど洗練されていた

 既存の空油冷ボクサーエンジンと比較すると、吹け上がりが軽やかにしてシャープ、振動が少なく、とてつもなく洗練されているのです。

 誤解を恐れずに表現するなら、そのフィーリングは最新の水冷ボクサーエンジン的で、基本設計が十数年前に行なわれたエンジンでも、吸排気系やECUに現代の技術を投入することで、ここまで洗練できるのか……と、私はしみじみ感心しました。

 もっとも、そういったフィーリングは兄弟車の「R 12」でも味わえるのですが、ハンドリングの軽さや旋回性といった運動性能は、現代的な足まわりやスポーティなライディングポジションを採用した「R 12 nineT」の方が一枚も二枚も上手です。

【比較】タイヤサイズ/サスペンションストローク

「R 12 nine T」=前後17インチ/前後120mm

「R 12」=前19インチ、後16インチ/前後90mm

 また、「R 12 nineT」のライディングポジションを基準にするなら、「R 12」はハンドルが高く、ステップが前方でシート位置が低くなっています。

前後17インチのタイヤを履き、先代よりもキャスター角は寝かされ、ホイールベースは長くなった。写真は初期生産限定パッケージ(スタイルオプション719)
前後17インチのタイヤを履き、先代よりもキャスター角は寝かされ、ホイールベースは長くなった。写真は初期生産限定パッケージ(スタイルオプション719)

 ただし、「R 12 nineT」の運動性能が先代を上回っているのかと言うと、それはなかなか微妙なところでした。と言うのも、ワインディングロードを走った私は、低速域で感じるフロントまわりの内向性の強さと、意外に大きくなりがちな回転半径に、そこはかとない違和感を覚えたのです。

 おそらくその主因は、寝かされたキャスター角と、長くなったホイールベースでしょう。

【比較】キャスター角/ホイールベース

「R nineT」=26.8度/1490mm

「R 12 nineT」=27.7度/1520mm

 そして新作で車体寸法が安定指向になった背景には、クルーザーの兄弟モデル(R 12)と基本設計を共有しているという事情があるのだと思います。

 まあでも、そのあたりはあえて言えばの話で、先代を知らなければ違和感を抱くことはないのかもいしれません。

 とはいえ今回の試乗を通して、もしかすると新世代の「R 12」シリーズは、フロント19インチの方が相性がいいんじゃないか……と感じた私は(クルーザーの操安性はナチュラルでフレンドリー)、数年以内に登場するであろう(?)バリエーションモデル、「スクランブラー」や「アーバンG/S」にも期待しています。

【画像】BMW Motorrad「R 12 nineT」(2024年型)を画像で見る(19枚)

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Writer: 中村友彦

二輪専門誌『バイカーズステーション』(1996年から2003年)に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。年式や国籍、排気量を問わず、ありとあらゆるバイクが興味の対象で、メカいじりやレースも大好き。バイク関連で最も好きなことはツーリングで、どんなに仕事が忙しくても月に1度以上は必ず、愛車を駆ってロングランに出かけている。

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