不動車のホンダ「ベンリイC92」をエンジンのプロがレストア! ハイコンプ化の目論見が外れたエンジンをアップデートします!【vol.15】
流用ピストンの再検討
現在の一番の問題は9.2kg/cm2しかない実圧縮で、せめて10.5㎏/cm2以上、出来れば11㎏/cm2から12㎏/cm2くらい欲しいところです。ちなみに銅ガスケットによるハイコンプ化によって絶好調なホンダ「CB250RS」の実圧縮は12.5㎏/cm2でした。
150㏄へのボアアップにあたり、ホンダ「スーパーカブC70K」用の1.25mmオーバーサイズで外径48.25mmのピストンを使用しましたが、シリンダーヘッドへの干渉を避ける為にショルダー高に余裕を持ち過ぎた事が要因と思われます。
そこでもっとピン上の高いピストンを探した結果、外径が同じ48.25mmで、同じくTKRJ製のホンダ「XR80」用0.75mmオーバーサイズピストンが見つかりました。
ピン上は0.5mm程度高く、ほぼフラットな形状の為、そのままではショルダー部がシリンダーヘッドに当たってしまうので、ピストントップ外周を旋盤で切削する事で逃がせば、高圧縮化が狙えそうです。
呼び径は同じ48.25mmとは言え大きい様ならホーニングで穴径を拡大、逆に小さければスリーブを入れ替えて再度ボーリングし直しとなりますが、これは手元にピストンが無ければ確認のしようがありません。
早速購入して確認すると、ショルダー部の肉厚は充分で、思った通り切削しても強度的な心配は無さそうで、心配だったピストン径はスーパーカブC70Kと比べて0.01mm小さいのですが、シリンダーとのクリアランスは0.06mmと許容範囲だった為シリンダーは無加工で行ける事が判り一安心。
ヘッドを外した状態で上死点でのスーパーカブC70K用ピストンショルダーとヘッドまでの距離を測って、切削する深さを決定し、汎用旋盤担当の天野技師にショルダー部の逃がしをお願いしました。

形状的にはホンダ「CB160」用純正ピストンに似たものなので、高圧縮化が期待できそうですが、イン側のバルブリセスが浅いようなので、リセス確認をします。
油粘土をリセス部に盛り付けた状態で組み立ててカムチェーンを張り、クランクを2回転させてからバラシ、粘土の潰れ具合を確認してみると、エキゾースト側は適度な厚みがありますが、やはりインテーク側はギリギリでバルブは当たらないものの、浅すぎて危険な状態。
実際にエンジンが稼働して高回転まで回った際には、当たってしまうリスクが高い状況です。そこで今度はジグボーラーでインテーク側のバルブリセスを1㎜追い込む加工を、弊社森田技師にお願いします。
加工が終わったピストンで再度リセス確認をし、インテーク側の粘土の厚みに余裕があることを確認してから組み立てを行いました。
そして組みあがったエンジンを車体に積み込み、始動確認をした上で実圧縮を測定すると、プレッシャーゲージの針は11.4㎏/cm2を指し、無事に目標達成です。

続いてどうにもうるさ過ぎる排気音を抑えるべく、マフラーを改善します。
元々、汎用マフラーでインナーのパンチングパイプはφ45mmと極太サイズ。中央付近に蓋をする形でパンチングプレートが付いているもののストレート構造になっており、片側75ccのエンジンには抜けが良すぎるものなので、エキゾーストパイプの差し込み部からインナーサイレンサーを挿入する事で、音量ダウンが期待できそうです。
まず入り口でパイプ内径と外径に排気を分けて、外径側はグラスウールで排圧を落とし、内径側は径を絞った上でストレートなままとする事で排気のタイミングをずらすと、マフラー出口から一気に排出される場合よりも音量が軽減されます。
2種類のインナーサイレンサーを2個ずつ購入し、エキパイを差し込んだ際にちょうど固定される長さに繋ぎ、グラスウールを巻いて完成です。

取り付け後はノーマルマフラーに比べればまだ音は大きいものの、何とか常識的な音量には抑えることができました。
次回はフロントブレーキスイッチの追加をした上で、軽2輪車登録を行います。
Writer: 市川信行(井上ボーリング ヘッド技師)
川越で創業70年の老舗内燃機加工屋「(株)井上ボーリング」で多種多様な4ストロークエンジンのシリンダーヘッドに関するオーバーホール作業を担当する加工技師。プライベートでもバイクのレストアを趣味としており、趣味を仕事に生かしてるのか仕事を趣味に生かしているのかよく判らないこの状況を楽しみながら、年間700台前後のヘッド再生をこなしている。









