EV化宣言の一方で、日々進化するホンダの内燃機関に驚く ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.255~
レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、他メーカー同様にEV化宣言を発表しているホンダは、内燃機関の開発を諦めるつもりは無さそうだと言います。どういうことなのでしょうか。
どうするEV化宣言、メーカーによる姿勢の違い
先日、ボルボが完全EV化戦略の修正を発表しました。
「やっぱりね」
思い通りではないことを予感していたような、ため息に似た言葉が聞かれそうな出来事でした。

ボルボは2030年までにすべての内燃機関から撤退し、EV化を宣言していました。素早くカーポンニュートラルに取り組む姿勢を示したことで、当初は高く評価されました。
ですが、期待するほど世界のEV化は進んでいません。誤算です。充電設備が想定通り増えず、航続可能距離や充電スピードなどの性能もまだまだです。そのため、2030年までの完全EV化を諦め、PHEVも含めてのカーボンニュートラル戦略に変更したのです。
PHEVはプラグインハイブリッドです。つまり、内燃機関を搭載しています。外部充電が可能ですからハイブリッドよりはEVに近いかもしれませんが、化石燃料を燃焼させます。将来のEV化を完全に諦めたわけではありませんが、それまでPHEVを加えてのカーボンニュートラル戦略に改めたのです。EV化に莫大な設備投資や開発費が必要ですから、そのための原資を稼ぐといった意味合いもありますね。
もっと心配があります。ボルボは2030年までのEV化を宣言したことに加え、内燃機関の開発を凍結してしまったのです。つまり、PHEVに搭載する内燃機関は、現状のままを使い続けるか、他メーカーから調達するしか方法がありません。
幸いにボルボの親会社は中国の吉利汽車であり、内燃機関も生産しています。身内から調達する方法もありますが、素早いEV化が拙速だった印象が残ります。
そこで心配になるのがホンダです。ホンダも同様にEV化宣言をしています。ボルボの目標より5年遅い2035年がターゲットですが、猶予はありません。ですからホンダもボルボ同様に、EV化戦略の撤回、もしくは修正を発表するのではないかと噂されています。
もっとも、たとえそうなったとしてもボルボほど深刻ではありません。ホンダはEV化宣言を発表してからも内燃機関を開発しています。むしろ、EV化宣言などお構いなしに注力しています。
先日発表したシビックRSに搭載されるガソリンエンジンは、かなり凝った細工がされていました。エンジンのレスポンスを磨き込んでいるのですが、それを開発するのは簡単ではありません。コンピュータのプログラミングを変えるだけではなく、かなり手の込んだ細工をしていたのです。その姿勢からは、内燃機関を諦める素振りはありません。
大活躍中のF1もハイブリッドです。電気モーターにも依存していますが、基本的には内燃機関の性能が重要です。多額の開発費を内燃機関に投じているのです。もちろんホンダは世界トップのバイクメーカーでもあり、豊富な内燃機関を所有しています。化石燃料を燃やす技術は日々進化しているのです。
僕(筆者:木下隆之)の個人的な考えですが、ホンダも近いうちにEV化計画の修正を発表するのではないかと予想しています。2035年にEV化してしまったら、売るクルマがありません。ホンダのEV化は致命的と言えるほど遅れているからです。
ただし、EV化宣言を完全に撤回する可能性は少ないでしょう。内燃機関との共存が続くのではないかと想像します。
ともあれ、内燃機関の開発を凍結してしまったボルボよりは安心できるかもしれません。純粋なガソリンやハイブリッドで利益を稼ぎ、それを原資にEV開発を進める。そんなホンダの戦略が、正しいのかもしれません。
Writer: 木下隆之
1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。




