ソフィアの「ラッタッタ~♪」は173万台の大ヒット!? ホンダで最も手軽に運転できる「ロードパル」
ホンダ「ロードパル」は、1976年に発売された、ホンダ史上最も手軽に乗れるファミリーバイクです。独自のゼンマイ式始動が特徴で、リアの足まわりと駆動系を一体化したユニットスイング式は、その後のスクーターにも通じるメカニズムです。
女性への優しさから生まれた、新しい乗りもの
ホンダが生産する2輪車は、1960年前後から「モンキー」シリーズなどのレジャーバイク、あるいはスポーツ走行に特化したクラブマンレーサー、さらにはスクランブラーのような趣味性の高いバイクなども登場します。

1969年には「CB750フォア」が発売され、1970年代に入ると各カテゴリーでの排気量拡充や高性能化が進みました。
すでに原付からリッターバイクまでラインナップする総合バイクメーカーでしたが、ここで女性を中心に据えた新たな市場の開拓が始まります。
1976年に発売された「ROADPAL NC50(ロードパル)」は、綿密な市場調査と、その結果に伴う車体設計が徹底されています。
まるで自転車のようなシンプルで合理的な新製造方式のフレームは、エンジンとリア側の足まわりが一体となったユニットスイング方式が採用されました。その結果、車重は44kgに抑えられ、力のない女性でも気軽に取り回しができるようになりました。
女性がキック式のエンジン始動を難しいと感じているという調査結果から、簡単なゼンマイ方式を取り入れ、クラッチ操作も変速もなく、バイクに馴染みがない人でも気軽に乗ることができました。
ゼンマイ式の始動方式は、「ロードパル」シリーズ独特の機構です。左ステップの後ろにあるペダルを3回踏み込むとゼンマイが巻かれ、左手のレバーを握るとゼンマイが解放されてセルモーターのようにエンジンを始動します。
あとは左手のレバーを開放してアクセルを捻れば、スクーターのように発進し、走行できます。ブレーキは自転車同様、ハンドル左右のレバーで操作しました。
左手のレバーはリアブレーキも兼ねており、握って始動する際は、同時に飛び出し防止にもなっています。1度で始動しない場合は、再びペダルを3回踏めばゼンマイを巻くことができます。

「ロードパル」初期型の価格は5万9800円と、いま風に言うと自転車と競合できる戦略的価格設定でした。イタリアの映画女優、ソフィア・ローレンが出演したテレビCMが話題となり、ゼンマイペダルを踏み込む動作に合わせた「ラッタッタ~♪」という掛け声が流行語となりました。
ゼンマイを巻く動作がソフィア・ローレンによって楽しいアクションに変わり、バイクに乗らない人にまで「自分もやってみたい」と思わせる宣伝力の効果は抜群でした。
大ヒットとなった「ロードパル」は翌年、走行中に自動でゼンマイを巻くクイックスターターを採用した「ロードパルL」を、1979年には2速オートマチック変速を採用した「ロードパルS」などを追加します。
さらに、個性的な「パルフレイ」や「パルホリデー」、「パルディン」などの派生モデルも登場しました。

また、バイク販売店だけでなく、自転車販売店やスーパーマーケットまで販路を拡大したこともあり、1983年まで生産が続き、累計生産台数は174万台を記録します。
「ロードパル」は、それまでバイクを使っていなかった家庭にも購入され、そのまた別の家族が乗り、173万台分の新しいバイクライフを創造しました。
これによって多くの人に、バイクで風を切って走る楽しさを感じてもらえたことでしょう。そう考えると、その後にやってくる1980年代のバイクブームの隠れた火付け役だった、と言えるかもしれません。

「ロードパル」によって広がったファミリーバイクのカテゴリーはその後、原付スクーターへと受け継がれてさらに大きな市場へと成長していきました。
■ホンダ「ROADPAL NC50」(1976年型)主要諸元
エンジン種類:空冷2ストローク単気筒ピストンリードバルブ
総排気量:49cc
最高出力:2.2PS/5500rpm
最大トルク:0.37kg-m/3500rpm
全長×全幅×全高:1545×600×985mm
シート高:715mm
始動方式:蓄力(ゼンマイ)式
燃料タンク容量:2L
車両重量:44kg
フレーム形式:低床バックボーン
タイヤサイズ(前後):2.00-14-4PR
【取材協力】
ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)
※2023年12月以前に撮影
Writer: 柴田直行
カメラマン。80年代のブームに乗じてバイク雑誌業界へ。前半の20年はモトクロス専門誌「ダートクール」を立ち上げアメリカでレースを撮影。後半の20年は多数のバイクメディアでインプレからツーリング、カスタムまでバイクライフ全般を撮影。休日は愛車のホンダ「GB350」でのんびりライディングを楽しむ。日本レース写真家協会会員








