バイクで言う「バネ下重量」って何? 軽いと良いコトあるんですか?

新型バイクやモデルチェンジの記事などで「バネ下重量の軽減」というフレーズをよく目にします。……が、そもそもバネ下重量とはドコを指すのでしょうか? そして軽くするとどんなメリットがるのでしょうか?

サスペンションより下側に付いているパーツの重さ

 新型バイクやモデルチェンジの記事などで、たびたび目にする「バネ下重量」というコトバですが、一体何を意味しているのでしょうか? 「バネ」とは、サスペンションに備わるスプリングを指します。なので「下」はサスペンションのスプリングの下に装備されているすべてのパーツのコトで、それらの重量を「バネ下重量」と呼びます(バネ下質量やバネ下荷重の呼び方もアリ)。

「バネ下荷重量」とは、サスペンションのスプリングの下(赤線で囲った部分)に装備するパーツの重量を指す
「バネ下荷重量」とは、サスペンションのスプリングの下(赤線で囲った部分)に装備するパーツの重量を指す

 厳密に言えば「スプリングの下」なので、フロントフォークやリアショックユニットそのもののスプリングより下部で可動する部品の重量も含まれますが、一般的にはホイールやタイヤ、ブレーキキャリパーやディスクローター、スイングアームの重量になります。

 ほかにも、フロントフェンダーや前後輪の車軸(アクスルシャフトやナット)が含まれます。また外国車などで目にする、スイングアームから伸びるステーで取り付けたナンバープレートやリアフェンダーもバネ下重量になります。

軽いほど路面追従性がアップする!

 スポーツバイクにとって、運動性能を高めるために「軽さは正義」ですが、とくにバネ下重量の軽減は「タイヤの路面追従性」に大きく影響します。

 たとえばサーキットの路面(舗装)はもの凄く平滑でキレイに見えますが、実際は相応に凸凹しています。また一般公道はもっと凸凹しているし、路面のうねりや道路工事による舗装の継ぎ目なども多数あります。

 そこでサスペンションが緻密に伸縮することで、タイヤが路面の凹凸やうねりで飛び跳ねたりしないようにしており、この機能や性能を「路面追従性」と呼んでいます。

 もちろん路面追従性は、サスペンションの性能やタイヤの性能が大きく影響しますが、バネ下重量も大きく関係しています。

 まずバネ下にあるパーツの重量が重いほど慣性力が大きくなるため、サスぺンションが伸縮する応答スピードが低下します。反対に軽いほど素早く伸縮できるので、当然ながら路面追従性が向上します。

 またホイールやタイヤ、ディスクローターなど高速で回転するパーツには「ジャイロ効果」が生まれます。ジャイロ効果は「回転する物体が、その場所に留まろうとする力」ですが、回転速度や物体の重量が増すとジャイロ効果も大きくなります。というコトは、サスペンションが伸縮する動きを抑えるため、路面追従性が低下してしまいます。

 逆に言えば、バネ下重量が軽いほどサスペンションの動きを邪魔しないため、同じサスペンションでも路面追従性が向上します。

どうやって軽くしている?

 路面追従性を向上するのにバネ下重量の軽減はかなり効果的ですが、それではどうやって軽くしているのでしょうか?

 代表的なのはホイールの軽量化です。現代のキャストホイール(鋳造製法のアルミホイール)は、1970年代に登場した当時とは比較にならないほど軽量で、ヤマハのスーパースポーツモデル「YZF-R1」では軽量素材のマグネシウムを用いた軽量な鋳造ホイールを装備しています。

ヤマハ「YZF-R1」が装備する軽量素材のマグネシウムを用いたキャスト(鋳造)ホイール
ヤマハ「YZF-R1」が装備する軽量素材のマグネシウムを用いたキャスト(鋳造)ホイール

 またドゥカティの新型「パニガーレV4 S」(2025年型)が装備する新作のアルミ鍛造ホイールは、従来品より前後輪で2.17kg軽量化しています。

 ちなみに、MotoGPやスーパーバイクのレーシングマシンは、素材と製法で超軽量化を実現する「マグネシウム鍛造ホイール」を装備しています。またディスクローターは市販車がステンレス製なのに対し、MotoGPマシンはカーボン製のディスクを装備しています。

 300km/hからフルブレーキングするような状況では、ディスクローターが猛烈に発熱します。それを以前の鋳鉄素材のディスクで対応するには大径化や放熱性に優れるベンチレーテッド構造(2枚重ねのディスク板の間に空気通路を設けた構造)にする必要があり、そうすると重量が増してジャイロ効果が大きくなってしまいます。それを避けて高い路面追従性を確保するために、放熱性に優れた超軽量なカーボン製のディスクローターを採用しているのです。

 またスイングアームも薄いアルミのプレス材で作ったり、猛烈に肉抜きしたアルミ鋳造など、様々な製法や形状で軽量化を促進しています。

 ほかにも、「パニガーレV4 S」ではフロントブレーキにブレンボの新作「Hypureモノブロックキャリパー」を装備していますが、これは従来品より30g軽量化しています。ほんの僅かですが、そこまでバネ下荷重に拘っている証でもあります。

 また中~大排気量車では、ホイールの軸に高い剛性を求めて「中空アクスルシャフト」を採用するバイクも増えています。これは径を太くしながら重量を軽減できるメリットがあります。

バネ下重量は、カスタムで体感できる!

 バネ下重量の軽減は多くのメリットがあり、レーシングマシンはもちろん、市販のスーパースポーツ車も大いに拘って開発されています。

レース用ホイールで有名なマルケジーニ社は、市販バイク用にアルミニウム製およびマグネシウム製の鍛造ホイールを販売する
レース用ホイールで有名なマルケジーニ社は、市販バイク用にアルミニウム製およびマグネシウム製の鍛造ホイールを販売する

 また近年はカスタムパーツとしてアフターパーツメーカーから軽量なアルミ鍛造ホイールがリリースされており、多様な車種に対応しています。

 なので、少し旧いネイキッド車などの純正キャストホイールをアルミ鍛造ホイールに交換すると、バネ下重量の軽減の効果をハッキリ感じることができます。

 このように、路面追従性が高まるバネ下重量の軽減ですが、ジャイロ効果が小さくなることで、じつは直進安定性が低下します。スポーツ性においてはデメリットではありませんが、たとえばクルーザー系やツアラー系を軽量ホイールに交換すると、巡航時の安定性や落ち着きが減った……と感じるかもしれません。

 これはサスペンションのセッティングで解決できる場合もあるので、カスタムの際には知見の高いショップに相談するのがオススメです。

【画像】「バネ下重量」ってドコ? 具体的にはコチラ!(17枚)

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Writer: 伊藤康司

二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。

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