かなりマニアック!? 「ピストンスピード」はエンジン性能の裏指標! その意味は?

スペック表に記載される最高出力や最大トルクなどを見ると、なんとなくバイクの性能をイメージできます。しかしスペック表には無い「ピストンスピード」を知ると、そのバイクの開発の方向性が見える……かもしれません。

スペック表には記載が無いが……

 バイクのエンジンは、シリンダーの中を往復するピストンの動きを、クランクシャフトで回転運動に変える、往復動型内燃機関がほとんどです。

エンジンを高回転まで回すには、ピストンが高速で上下しなければならない。画像はホンダ「CBR250RR」のエンジン
エンジンを高回転まで回すには、ピストンが高速で上下しなければならない。画像はホンダ「CBR250RR」のエンジン

 シリンダーの中でガソリンと空気の混合ガスが爆発(燃焼)する力がトルクになり、そのトルクに回転数を掛け合わせると出力(馬力)になります。そのため一般論としては、エンジンを高回転まで上げるほど大きな馬力(最高出力)を発揮できることができます。

 高回転域まで回そうとすると、必然的にピストンが上下するスピードも速くなります。これが「ピストンスピード」です。

 それではバイクのエンジンのピストンスピードはどれくらいの速さなのでしょうか?

 スペック表には記載されていませんが、以下の計算式で比較的簡単に計算できます。

【ピストンスピード(m/s)=回転数(rpm)÷60×ストローク(m)×2】

 たとえばホンダ「CBR250RR」(ボア×ストローク=62.0×41.3mm)の、最高出力を発揮する1万3500回転(rpm)で計算すると、ピストンスピードは18.585m/sになります。

「1秒間に約18.6m動く」と考えると、けっこう速いような、それほどでもないような、微妙な感じがしますが……。

 じつは解説の順番が逆になりましたが、この計算式で求められるピストンスピードは、正しくは「平均ピストンスピード」と呼びます。

 ピストンはシリンダー内を上下しており、いちばん上昇した位置を上死点(TDC)、いちばん下降した位置を下死点(BDC)と呼びますが、当然ながら上死点と下死点ではほんの一瞬ですがピストンは静止するので、スピードは「0」になります。

 そこからピストンは加速・減速を繰り返すので一定のスピードではありませんが、計算のしやすさと比較のしやすさで「平均ピストンスピード」が用いられるワケです。

 ちなみに、ピストンが上死点からクランクシャフトが80度ほど回転した位置まで下降したあたりが「最高ピストンスピード」になり、平均ピストンスピードの約1.5倍の速さになります。「CBR250RR」の場合は約27.9m/sです。

 ということは、「CBR250RR」のエンジンが最高出力を発揮する1万3500回転の時は、クランクシャフト1回転でピストンは0m/s→約27.9m/s→0m/s→約27.9m/s→0m/s→……をひたすら繰り返しており、それが1秒間に225回も行われているワケです。

 こう考えると、驚くほど速く感じませんか!

技術進化で、どんどん速くなるピストンスピード

 前述したように、エンジンは同じ排気量なら(端的に言えば)高回転ほど馬力が出ます。そのため高出力化には様々な構造や部品の材質などの手法を用いますが、回転上昇には限界があります。その限界のひとつの要素が、ピストンスピードなのです。

カワサキ「Ninja ZX-10R」は、現行国産車で平均ピストンスピードが最も速い24.2m/s。最高出力213ps/13,200rpm(ラムエア加圧時)、最大トルク11.7kgf・m/11,400rpm
カワサキ「Ninja ZX-10R」は、現行国産車で平均ピストンスピードが最も速い24.2m/s。最高出力213ps/13,200rpm(ラムエア加圧時)、最大トルク11.7kgf・m/11,400rpm

 ピストンスピードが速くなると、ピストンやコンロッドの慣性力が強くなるため、エンジンに対する負荷が大きくなります。

 またピストンとシリンダーはエンジンオイルで潤滑していますが、ピストンスピードが速くなり過ぎると、オイルの油膜が切れてエンジンが焼き付く危険もあります。

 それらの関係から、20年ほど昔は平均ピストンスピードの限界は20m/sくらいだと言われていました。しかし近年は技術や材質の進歩によって、バイク用エンジンだと25~26m/sが限界と言われています。

 ちなみに、ロードレース最高峰のMotoGPマシンの平均ピストンスピードは、現在は30m/s前後と噂されています。もはや次元が違うので比較対象にはなりません……。

 前述の計算式からわかるように、ピストンのストローク量を短くすればピストンスピードが低くなり、高回転化しやすくなると考えられます。そのため同じ排気量で同じ気筒数なら、ボアを広げてストロークを縮めれば高回転化でパワーを稼ぐことができます。

 たとえば1000ccクラスのスーパースポーツ車でも、平均ピストンスピードを下げて高回転・高出力を狙ったホンダ「CBR1000RR-R FIREBLADE」のようなバイクもあります。ただしショートストローク化しているためか、最大トルクはストロークが長いカワサキ「Ninja ZX-10R」の方が上回ります。

 この辺りは、メーカーの設計思想が感じられるところす。

ピストンスピードが速いほどエライ……ワケではない

 それでは同排気量で気筒数が異なるとどうでしょう? カワサキの「Ninja ZX-25R」(4気筒)と「Ninja 250」(2気筒)で比べてみましょう。

・平均ピストンスピード
「Ninja ZX-25R」=16.43m/s
「Ninja 250」=17.17m/s

・最高出力を発生する回転数
「Ninja ZX-25R」=15,500rpm
「Ninja 250」=12,500rpm

 その差は歴然です。とはいえ両車とも最大トルクは同一の2.2kgf・mで、発生回転数は「Ninja ZX-25R」が12,500rpmで、「Ninja 250」はグッと低い10,500rpmです。

 ということは、「Ninja ZX-25R」は馬力で上回るので速さでは圧倒的に有利ですが、「Ninja 250」の方が低い回転数で最大トルクを発揮するので扱いやすい、と捉えることもできます。

 このように、平均ピストンスピードを比較すると排気量が小さい単気筒エンジンでも思ったよりスピードが速かったり、大排気量の4気筒でもけっこう遅かったりと、意外な発見があります。

 かなりマニアックではありますが、愛車や気になるバイクの平均ピストンスピードを算出してその理由を考えてみると、チョット楽しいかもしれません。

【画像】もう一度確認!! 「ピストンスピード」の計算式を見る(8枚)

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Writer: 伊藤康司

二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。

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