こんなにデカいボディなのにスポーティに走行!? インディアンモーターサイクルの新型「チーフテン・パワープラス」なら出来る!
インディアンモーターサイクルは、水冷V型2気筒エンジンをアップデート。排気量を拡大したそのエンジンの名前を「パワープラス112」としました。その新型エンジンは2025年モデルの「チャレンジャー」や「パースート」に搭載するほか、あらたに「チーフテン・パワープラス」と「ロードマスター・パワープラス」にも搭載。パワープラス112ファミリーを拡大しました。ここではその新型エンジンと、新たにファミリーに加わった2つのモデルを紹介します。
まずは「パワープラス」エンジンをおさらい
まずは、インディアンモーターサイクル(以下インディアンMC)の「パワープラス」エンジンについて説明しましょう。
パワープラスエンジンが登場したのは2020年。当時アメリカのクルーザー市場で注目を集めていた、パフォーマンス系クルーザーモデルのために開発され、2020年モデルの「チャレンジャー」に搭載されました。クルーザーやアメリカンモデルと聞くと、クラシカルなスタイルと、古典的なメカニズムによって構成された空冷エンジンのバイクや、そのバイクで延々と続く直線道路をゆったりと流すような走行シーンをイメージするかもしれません。

でも今のクルーザーのトレンドはまったく違います。いまのクルーザーシーンは、高出力および大トルクのエンジンと、パワーアップしたエンジンをしっかりと受け止めるフレームはもちろん、高性能なブレーキ&サスペンションを採用したハイパフォーマンスなモデルが人気なのです。そしてそのエンジンをさらに力強くするチューニングパーツや、さらなる高性能なブレーキやサスペンションなどにも注目が集まっています。
そこでインディアンMCは、まったく新しいコンセプトのパフォーマンスクルーザー「チャレンジャー」を開発したのです。そこに搭載されたエンジンが「パワープラス」で、挟角60度V型2気筒水冷OHC4バルブ、排気量は108キュービックインチ/1768cc。
当時ライバルたちはすでに1800cc超えの大排気量Vツインエンジンを搭載していましたから、もっと大きな排気量を、という声もあったといいます。しかし開発陣は、エンジンの冷却方法を水冷にしたことで、空冷エンジンに比べ、同じ排気量でも多くの出力を得ることができる。それにアクセル操作に対するエンジン回転上昇のレスポンスが速いし、トルクの起ち上がりも速い。エンジン熱を一定に保つことができるので、熱によるパワーダウンも最小限にできるし、燃焼効率が良いことから燃費も耐久性も良い、と話してくれました。

また、フレームはアルミ製のバックボーンフレームを中心にいくつかのセクションに分かれたアルミ鋳造フレームを採用しています。そして「パワープラス」エンジンをフレームの一部として活用することで、ハイパワーエンジンをしっかりと受け止める強さを維持したまま、フレームパーツを軽量&コンパクトにできたのです。
そしてフロントには日本のSHOWA製デュアル・ベンディング・バルブ倒立フォークを、リアにはFOX製の油圧プリロード調整機構付きモノショックを採用。フロントブレーキには、ラジアルマウントしたブレンボ製4ポットキャリパーと320mmブレーキディスクをダブルで装備。ボッシュ製6軸IMU(慣性計測装置)を搭載し、ダイナミックトラクションコントロールとABSを組み合わせて制御するSmart Lean Technologyも搭載しました。
この「チャレンジャー」の車体構成メニューを見れば、最新のスーパースポーツモデルと同等とは言わないまでも、スポーツモデルに匹敵する最新のテクノロジーを採用していることがよく分かります。
新型「パワープラス112」エンジンとNEWファミリーを確認
今回インディアンMCが発表した新型エンジン「パワープラス112」は、その「パワープラス」から、2つのピストンの直径を2mm広げ、それにより排気量を112キュービックインチ(1834cc)に拡大。そのほかのエンジン内パーツはそのままながら、最高出力126hp、最大トルク181.4Nmに増やして、さらにパワフルなエンジンになったのです。

その新型エンジンは、2025年モデルの「チャレンジャー」と、チャレンジャーと同じエンジン&フレーム、それに大型フロントカウルやサイドケースを採用しながら、さらに大型トップケースやステップ前のロアカウルを追加装着するなど豪華装備の「パースート」にも搭載。
サスペンションやブレーキ、ボッシュ製6軸IMUと連携するSmart Lean Technologyや、渋滞などで車体が停止中にリアシリンダーを自動的に停止し発熱を抑え快適性を向上させるリアシリンダー停止機能など各種電子制御技術は、初代チャレンジャーからそのまま継承されています。
この2モデルは、それぞれのカラーバリエーションモデルを含めてパワープラス・ファミリーと呼ばれていましたが、エンジンネームを変更したことによりパワープラス112ファミリーとファミリーネームも変更しました。
このパワープラス112ファミリーには、新しい装備も採用されています。ある一定の操作でブレーキを維持して、傾斜地などでブレーキ操作無しでも安定して車体を維持できる「バイク・ホールド・コントロール」。走行中にブレーキレバーまたはブレーキペダルを操作すると、走行状態に合わせて前後ブレーキ配分を自動的に最適化する「エレクトロニック・コンバインドブレーキシステム」が、その新装備です。
さらにテールライト上にボッシュ製ミリ波レーダーを新たに採用。それによって、左右後方の死角に車両が入ったことをライダーに警告する「ブラインドスポット・ワーニング」、後方車両の接近をライダーに知らせる「テールゲート・ワーニング」、衝突の可能性が検出されるとリアケース・ライトで後方接近車両に警告する「リア・コリジョン・ワーニング」などライダー支援機能も追加しました。
この新しいパワープラス112ファミリーに、「チーフテン・パワープラス」と「ロードマスター・パワープラス」が加わりました。それは「チャレンジャー」や「パースート」と同じ、新型パワープラス112エンジンとアルミフレーム、そして各種電子制御システムを採用すると言うこと。
これまで「チーフテン」と「ロードマスター」は、挟角49度V型2気筒空冷OHV3カム2バルブのサンダーストローク116エンジンと、チャレンジャーとは異なるアルミフレームを採用していましたから、まさにビッグチェンジです。
さらにこの2モデルは、フロントフォークにマウントする大型カウルを装着していましたが、そのカウルデザインを変更。「チャレンジャー」と「チーフテン」のそれぞれのカウルのディテールからインスピレーションを受けた、コンパクトで筋肉質な新型カウルを採用しています。それ以外の外装パーツは、「チャレンジャー」と共通です。
パワー炸裂の「チーフテン・パワープラス」と優雅な「ロードマスター・パワープラス」
「チーフテン・パワープラス」のパワフルさには、本当に驚きました。そのパワフルさは、直線道路だけで感じるものではありません。今回の試乗コースではコーナーが連続するワインディングが多く含まれていましたが、そこでの走りが本当に楽しかったのです。

私は大型クルーザーを所有しておらず、それをワインディングや街中で頻繁に走らせていなかったので、試乗前には少し緊張していました。なにせ試乗するのは車重360kgオーバーの巨体で、キング・オブ・ザ・バガーズという、大型カウルとサイドケースを持つ大型クルーザー=バガーで争われるレースの現場で鍛えられたパワープラス112エンジンを搭載した車両ですから。しかし試乗がスタートしてすぐに、その不安は解消されました。
前車に続いて駐車場から一般道へ。そこではエンジンの極低回転域を使ってゆっくりと、しかもハンドルを左右に大きく切り替えしながら街中へと走り出します。そのとき、見た目の巨体からは想像が付かないほど車体が軽い。
正確には、低速走行時に細かくハンドルを左右に切りながらバランスを取りますが、そのときのハンドル操作がとても軽く、またそのハンドル操作に対する車体の動きが軽いのです。
ライダーの予想よりハンドルが内側に切れ込んだり、その反動で車体が予想外の動きをしたりすることがありません。新しくなったフロントカウルには、スピーカーや大型ディスプレイ、メーター類や電動スクリーンなどが装着されていて、けっして軽量でないことが想像できますが、その重さをさほど感じないのです。そして郊外に出て車速の上昇に合わせてハンドル回りに安定感が出てくるのです。
ワインディングに入ると「チーフテン・パワープラス」の走りは、さらに楽しくなってきます。小さなコーナーが連続するような場面や、左右に車体を切り返すときは積極的にハンドルを操作すれば、その巨体は素早く反応するし、車体が素早く動いたときも安定感が崩れることはありません。
また、走行状態に合わせて前後ブレーキ配分を自動的に最適化してくれるエレクトリック・コンバインド・ブレーキシステムによって減速時の安定感も良い。スポーツバイクと同等とまでは行かないまでも、車体の大きさや車重の重さを考慮して早め早めに準備してコーナーへアプローチすると、「チーフテン・パワープラス」は想像以上にキビキビと動き、スポーツライディングを楽しむことができます。そこからアクセルを開ければ、水冷Vツイン・オンビート感は一気に高まり、巨体をもの凄い勢いで加速させます。車重360kg超えにくわえ、大きな車体でスポーツするこの感覚は、スポーツバイクのそれとは違いますが、とても楽しいです。もちろんゆったりとワインディングを流しても、エンジンは低回転を維持していてとても気持ちが良い。

ただゆったりと流すなら「ロードマスター・パワープラス」の方が向いているかもしれません。高いスクリーンやステップ前のロアカウルなどで防風効果が高まっているので、走行中のライダーやパッセンジャーはとても静かで快適だし、トップケースの装着などで車重が増えた分、走行中の安定感も増しています。もちろん「チーフテン・パワープラス」と同じエンジン&車体を持っているので、その気になればスポーツライディングも楽しむことができました。
高性能なアメリカンクルーザーは、普段クルーザーに乗り慣れていない筆者でも、走りを楽しむことができました。この2台を、日本の道で走らせることが今から楽しみです。
Writer: 河野正士
国内外問わず、幅広いフィールドでオートバイ関係の取材、 執筆活動を行う。オートバイ・メーカーのwebサイトなども担当しているため、繋がりも強く、事前情報などにも精通。
海外試乗会などにも積極的に参加している。

















