「バイクのすり抜けは違法」にして自動運転を拡大する!? 理由は技術的対応が難しいから……

自動運転拡大のための2024年度の調査研究報告書が、警察庁のウェブサイトで公開されました。関係者は「バイクのすり抜け」など、いくつかの場面で自動運転の技術的対応による解決が困難とした上で、法律改正による禁止や自動運転上の免責を求める自動運転車に配慮した解決方法がまとめられています。

「検出が難しいから」道交法改正や自動運転車に対する配慮が必要

 警察庁が事務局となり、自動運転拡大のための議論を続けているのは「自動運転の拡大に向けた調査検討委員会」(委員長=神戸大学大学院研究科・中川丈久教授)です。

道路の左側を走ることを義務付けられているのは、バイクだけではない
道路の左側を走ることを義務付けられているのは、バイクだけではない

 検討委員会は「バイクのすり抜け認知」は「道路交通法の解釈の明確化」が前提になるという議論を始めています。

 出席委員の1人である日本自動車工業会自動運転部会は、バイクのすり抜けについて議論の必要性があることを委員会に提案しました。

「渋滞車列等の間をすり抜ける二輪車の存在(の認知、当該2輪車への対応は難しい)」

 この論点を補強するため検討会は、自動運転運用を想定する事業者(48団体に聴取、うち35団体から回答)に書面ヒアリングを行い、2つのバイクのすり抜けシーンで自動運転車の認知能力に課題があるという意見を得ました。

・渋滞車車列間のすり抜けがある場面

・右折時において自車線、対向車線からのすり抜けがある場面

 この2つのシーンは、ともに道路交通法で順法とされているケースが前提です。赤信号の停止時に反対車線にはみ出して、停止線の前に出ようとする行為や、右折時に直進車の運転を妨げる違法行為を問題にしているわけではありません。

 走行の予測や車両の検知、他車との区別ができない、技術的な限界を前提にした対策の必要性です。ヒアリング回答者は自動運転システムの開発で考慮されるべき対応について、他の交通関係者への配慮を細かく指摘し、報告書はそれをまとめています。

・システム開発者の責任の限定について
「渋滞車列の側方という狭い場所を走行する以上、2輪車は安全な速度で走行することが求められるべきであり、極端な速度まで想定することは不要とする」

・道路交通法の改正について
「2輪車のすり抜けを違反とする法律を制定、規制を行う」

・行政への要望について
「自動運転車が2輪車の行動をどこまで考慮するべきかの基準を明確にする」

・バイクユーザーの運転について
「利用者、交通参加者への自動運転車の振る舞いや特徴の理解を促進する」「死角からの飛び出しをしないなど、2輪車の交通ルール順守やマナー促進活動」

・バイク開発者に対する要望について
「2輪車から位置、速度などの情報を発信する」

「自動運転ファースト」の要望に、警察庁と委員の反応は?

 報告書では、事務局である警察庁の回答も記載しています。

「道路交通法上、進路を変更せずに前方車両の側方を通過する、いわゆる『追抜き』は可能なので、ADS(自動運転)ではこうした交通参加者の行動を『有能で注意深い人間の運転者』と同程度に予測することが必要である」

「また、道路の左側端に寄って走行しなければならない自転車等については、渋滞車列等を左から追い抜くことが想定されることにも留意すべきである」

 人の運転では、初心運転者でも有能で注意深い人でも、同じ交通ルールに従って運転しています。それでも報告書は「委員の主な意見」が記載する中で、警察庁の見解に同意する一方、交通ルールの変更で技術の限界を補うべきだと主張します。

「あらかじめ自動運転車が考慮すべき状況として、他の交通参加者の違反を含めると膨大な数のケースを検討する必要が出てくる。そのため他の交通参加者によるルール違反について、どこまで考慮すればよいかという一定の目安があることが望ましい(中略)。自動運転車が義務を果たすべき範囲や他の交通参加者が違反をした場合に考慮すべき程度等について、何らかの目安を導きだせることが、社会実装では必要と理解している」

 バイクのすり抜けを違法としていないことのあいまいさが問題で、検討委員会の報告書はその解決方法を「道交法の解釈の明確化」として表現しています。

 例えば、交差点内に進入した右折車が直進車の進路妨害をすることで起きる右直事故は、バイクのすり抜けで起きるとされる典型的な事故です。直進車優先で右折車に注意義務があります。これをバイクの直進を違法行為とすることで、自動運転車を拡大しようという提案です。

 一方、検討委員会のヒアリングは、自動車ユーザーが気が付かない自動運転車の対応についても浮き彫りにしました。

 レベル4の「運転者がいない自動運転車」の事故時の想定です。道路交通法は、当事者に通報と事故対応を義務付けます。しかし、ヒアリング回答の多数意見は、運営者の現場への到着時間を未定、最初の対応は消防・警察への通報頼みを想定することが多かったのです、

 坂井学国家公安委員長は、自動運転拡大に向けた調査検討委員会の報告を警察庁から受け、2025年4月15日の閣議後会見で次のように話しました。

「自動運転車の開発普及のために、既存の交通参加者に負担を強いるような交通ルールの設定は、自動運転車が交通社会で共存するという観点からは、社会の理解が得られないと明確に確認されたと承知しております。交通弱者を含む様々な交通参加者を念頭に置いて、自動運転車の社会実装に向けた取り組みを進めることが重要であると認識しております」

【画像】バイクのすり抜けを違反にする? 記載された報告書を見る(5枚)

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Writer: 中島みなみ

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

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