サスペンションの「減衰アジャスター」を調整すると、何が変わる?

スーパースポーツ系のみならず、スポーツ度の高いバイクのサスペンションには「減衰アジャスター」が装備されています。ベテランやスポーツ走行を好むライダーは、このアジャスターを調整しているようですが、いったい何が変わるのでしょうか?

「減衰力」って、何のコト?

 スポーツバイクの中には、サスペンション(フロントフォーク、およびリアショックユニット)に「減衰力アジャスター」を装備しているモデルがあります。排気量や車種にもよりますが、スポーツ度の高いモデルだと「伸び側減衰アジャスター」と「圧縮側減衰アジャスター」を備えています。

 ベテランやサーキット走行を楽しむようなスポーツ派のライダーは、この減衰力アジャスターを調整するサスペンションセッティングを行っているようですが、なんとなく難しそうな気もします。

 そもそもサスペンションの「減衰力」とは何のことで、調整すると何が変わるのでしょうか。

カワサキ「Ninja ZX-4RR」のリアショックユニットの減衰アジャスター。TENが伸び側、COMが圧縮側の減衰力を調整
カワサキ「Ninja ZX-4RR」のリアショックユニットの減衰アジャスター。TENが伸び側、COMが圧縮側の減衰力を調整

スプリングの動きを、ダンパーの減衰力でコントロールする

 サスペンションは路面の凸凹の衝撃を吸収して乗り心地を良くしたり、タイヤが凸凹をキチンと追従することでグリップ性能を発揮するための重要な装置です。そこでまずは、サスペンションのショックユニットの構造を理解しましょう。

 路面の凹凸に対応し、車体やライダー重量(荷重)を受け止める主役は「スプリング」で、伸縮することで衝撃を吸収している動きをイメージできるのではないでしょうか。

 ところがスプリングは、ギュッと押し縮められた状態から反発力で伸びる時は、縮んだ時と同じ勢いで伸びようとする特性があります。そのため、路面の凸凹を乗り越えた後はビョンビョンビョン……と伸縮を繰り返し、動きが収束するまで時間がかかります。

スプリング単体だと衝撃を受けた後に伸縮を繰り返し、動きが収束するのに時間がかかる。ダンパーをセットすることで伸縮幅が小さくなり、動きが収束するまでの時間も短くなる。
スプリング単体だと衝撃を受けた後に伸縮を繰り返し、動きが収束するのに時間がかかる。ダンパーをセットすることで伸縮幅が小さくなり、動きが収束するまでの時間も短くなる。

 そしてビョンビョンビョン……と伸縮が収まらないうちに次の凸凹が現れたらどうなるでしょう? タイヤが路面を追従できずにスリップする危険や、カーブに進入する際は車体の姿勢が定まらず、上手く曲がり始められません。

 そこでスプリングの伸縮する動きを抑えるのが「ダンパー」の役目です。ダンパーの構造は注射器や水鉄砲と似ていますが、異なるのはピストンに穴が開いているところです。

 油(サスペンションオイル)を満たしたシリンダーの中をピストンが上下する際に、油が穴を通過する時に抵抗が生まれます。この抵抗力が、スプリングが伸縮するスピードや動きを抑える「減衰力」になるのです。

減衰力アジャスターのイメージ。ピストンを通過するオイルの抵抗(流量)を変化させることで、減衰力の大きさや特性を変えている(実際の構造は図と異なる)
減衰力アジャスターのイメージ。ピストンを通過するオイルの抵抗(流量)を変化させることで、減衰力の大きさや特性を変えている(実際の構造は図と異なる)

 バイクが登場したばかりの時代は、そもそもサスペンションを装備しない(リジッド)フレームでしたが、その後のサペンション装備車も、当初はスプリングのみで油圧ダンパーはセットされていませんでした。

 そして大排気量モデルやスポーツ車から油圧ダンパーをセットしたショックユニットが採用され、近年は小排気量車も油圧ダンパー付きのショックユニットが一般化します。

 そして市販車では、1979年に発売されたホンダ「CB750F/900F」が、減衰力調整機構を持つリアショックユニットのFVQダンパーを標準装備しました。

減衰力は強いほど良い……ワケじゃない!

 減衰力によって車体のフワつきを抑えたり、路面追従性を高められることを解説してきました。ですが、スポーティに走りたいから、端的に言えば「飛ばすから減衰力を強める」という考え方は、少々短絡的というかカン違いなので要注意です。

 減衰力を強くすると、体感的にはサスペンションが硬くなったように感じ、車体がフワつくフィーリングを抑えられます。しかしショックユニットの動きは遅くなっているため、必ずしも路面追従性が良くなっているとは限りません。また伸縮する動きを抑えているので、乗り心地を悪く感じることもあります。

 反対に、減衰力を弱めると体感的には柔らかく感じ、ショックユニットの動きは速くなるので、路面追従性や乗り心地が良くなる場合もあります。

 というワケで、減衰アジャスターの調整は、強い・弱い(硬い・柔らかい)どちらが良いというものではなく、走るシーンや走行アベレージ(スピード)に合わせて、あくまでライダー本人が乗りやすいと感じるところにセットすることが大切です。

 サスペンションのセッティングと言うと難しく感じますが、愛車が減衰アジャスターを装備しているなら、臆さずに調整してみましょう。少しでも乗り心地が良くなったように感じたら、それが正解。もしわからなくなったら、元の位置に戻せば大丈夫です。

【画像】どういう仕組み? スプリングとダンパーを組み合わせたショックユニットの概念図を見る(9枚)

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Writer: 伊藤康司

二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。

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