バイクこそ便利な「スマートキー」の意外な落とし穴とは 「リレーアタック」は大丈夫?

クルマではメジャーな「スマートキー」ですが、バイクでも普及が進んでいます。キーを抜き差しせずに乗れるのはストレスフリーで想像以上に便利です。が、スマートキーならではのトラブルも無きにしも非ず、なのです。

日常使いでも便利なスマートキー

 近年はバイクでも「スマートキー」を装備する車両が増えています。大型ツアラーやスポーツ車でも普及が進んでいますが、原付2種~軽2輪のスクーターでは、もはやメジャーな装備と言えます。

バイクのスマートキー。画像はホンダの「PCX」や「リード125」、「ADV160」などのスクーターのスマートキー
バイクのスマートキー。画像はホンダの「PCX」や「リード125」、「ADV160」などのスクーターのスマートキー

 ライダーがスマートキーを携帯していれば、車体の鍵穴にメカニカルキーを挿さなくてもメインスイッチの操作だけでエンジンを始動できるのはかなり便利です。

 ヘルメットやバッグ類などの荷物で手がふさがっている時はもちろん、雨天時にレインウエアを着た状態で頻繁に乗り降りする時なども、鍵の出し入れが不要なので非常にラクです。

 スクーターの場合はシート下のラゲッジスペースを使う際や、ガソリン給油でフューエルリッドを開閉する時も、スマートキー装備車ならスイッチ操作だけでOKです。

 また、最近ではメーカーオプションのサイドケースやトップケースも、スマートキーと連動してボタン操作で解錠・施錠できるタイプも登場しており、ツーリング時はもちろん日常使いでも便利この上ありません。

電池切れと紛失には、要・要・要注意!!

 そんな便利なスマートキーですが、従来からのメカニカルキーとは異なる注意点もあり、その最たる例が「スマートキーの電池切れ」です。

 スマートキーは車体側と電波で通信することで、ハンドルロックを解除・施錠したりエンジン始動を可能にします。そのためスマートキーの電池が切れると、当然ながら車体側と通信できなくなるためエンジンはかけられません。ハンドルロックも解除できないので、押し引きするのも困難です。

 じつはそんな非常事態の時のために、スマートキー本体にメカニカルキーを仕込んであるタイプや、ホンダのスクーター系は付属する特殊な工具でトランクリッドを開けたり、さらには特殊な方法でバイク本体の電源をONにしてハンドルロックを解除することが出来たりします。

 とはいえ、スマートキーの電池は大抵がコンビニエンスストアでも販売されているメジャーな品番のボタン型リチウム電池なので、新しいモノに交換すれば大丈夫です。

 次に問題なのが、スマートキーの紛失です。いまどきは物理キーも、盗難抑止装置のチップ入りなので紛失したら大変ですが(スペアキーは基本的にバイクメーカーで作製)、スマートキーはなおさらで紛失したらすぐに入手できません。

 また物理キーは走行中に紛失する危険は基本的にありませんが(鍵穴に刺さっていてONの位置なら抜けない)、スマートキーだと走行中にポケットから落とす可能性がゼロではありません。

 仮に走行中にスマートキーを落としても、その瞬間にエンジンが止まったりはしませんが、停車して一旦エンジンを止めたら、次に始動することができません……。紛失にはくれぐれも注意しましょう。

「リレーアタック」は大丈夫?

 クルマ(4輪車)の盗難のニュースなどで「リレーアタック」という言葉を聞くことがあります。これはスマートキーが発信する信号を特殊な機器で増幅し、ドアロックやハンドルロックを解除し、エンジンを始動してクルマを盗難する手段ですが、果たしてスマートキーのバイクはどうなのでしょうか?

 バイクのスマートキーは、通信用の電波を微弱にして解錠できるエリアを狭くしています(1~2mくらい)。また車種にもよりますが、スマートキーと車体側の通信部がさらに近くないとエンジン始動できないバイクもあり、クルマのようなリレーアタックによる盗難は少ないと言われています。

 そして(コレも車種によるが)バイクのスマートキーには電源のON/OFF機能を備えるモノが多く、バイクから降りたら速やかにスマートキーの電源をOFFにすれば、少なくともリレーアタックは防げます。

 もちろんバイクに乗る際は電源をONにする必要があるので、せっかくのスマートキーなのに面倒といえば面倒ですが……。

誤った使い方で、バッテリー上がりを誘発!?

 そしてもうひとつ、スマートキーは使い方によってはバイクの「バッテリー上がり」が起こりやすくなります。

スマートキーシステムのメインスイッチおよびフューエルリッド&シートの解錠スイッチ。画像はホンダ「ADV160」
スマートキーシステムのメインスイッチおよびフューエルリッド&シートの解錠スイッチ。画像はホンダ「ADV160」

 前述したように、スマートキーはバイク側と電波で通信することで解錠したり、エンジン始動が可能になります。そのためにバイク側のスマートキーのシステムは常に稼働していて、ライダーが携帯するスマートキーからの信号を待ち受けています。

 ほんのわずかではありますが、駐車中でもバイク側ではシステムを動かすための電気が流れており、これが「待機電流」や「暗電流」と呼ばれるモノになります。

 とはいえ、この待機電流によってバッテリーがすぐに上がってしまうコトはありません。ただしスマートキーをバイク側の通信範囲内に近づけるとキーと車体の双方が頻繁に通信をはじめ、暗電流が一気に増加します。

 そこからエンジンを始動して走り始めれば、エンジンに備わる発電機によってバッテリーが充電されるので問題ありません。……が、走らずに通信だけを頻繁に行っている状態が維持されると、増加した暗電流によって、比較的短期間(場合によっては1週間足らず)でバッテリーが上がってしまう危険があるのです。

 普通はそんな状況はあり得ないように思いますが、じつはコレ、盗難の心配が少ないガレージ等でバイクを保管している人が、スマートキーをスクーターのグローブボックスなどに入れっぱなしにしているようなパターンです。

 いちいちスマートキーを持ってこなくても、キースイッチをONにするだけですぐに走れるため、このような使い方をしている人も、少なからずいるようです。

 バイクのバッテリーが上がったらスマートキーと通信できなくなる可能性「大」です。もしその時に施錠されるグローブボックスやラゲッジスペースにスマートキーを入れていたら……かなりお手上げな状態に陥ります。

 というワケで、便利なスマートキーですが、電池切れとバッテリー上り、そして保管場所には十分注意が必要なのです。

【画像】まるでUSBメモリ!? バイクでも普及が進む「スマートキー」を見る(14枚)

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Writer: 伊藤康司

二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。

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