エンジンの「気筒数」で何が変わる? 多い方がエライの?
いまどきのスポーツバイクのエンジンは2気筒が多い……ようにも感じますが、スーパースポーツ系は4気筒で小排気量車やオフロード系は単気筒が主流です。そもそもナゼ、気筒数には違いがあるのでしょうか?
同排気量、同カテゴリーでも気筒数が違う?
バイクのエンジンは、ガソリンと空気を混ぜた混合ガスをシリンダーに吸い込み、ピストンで圧縮して点火・爆発(燃焼)してエネルギーを生み出します。そのシリンダーとピストンの1セットを「気筒」と呼び、これが2セットなら2気筒、4セットあれば4気筒エンジンになります。ちなみに1セットの場合は1気筒ですが、慣例的に単気筒と呼んでいます。

なんとなく「多気筒=大排気量」というイメージですが、例えばハーレーダビッドソンは排気量2000cc近くもありますが2気筒ですし、かつてのホンダのレーシングマシンには125ccで5気筒エンジンを積んだ「RC149」(1966年)もありました。
また現在も、250~400ccクラスは同排気量でも単気筒、2気筒、4気筒があります。もちろんバイクのジャンル(オンロードとオフロード、スーパースポーツとクルーザーなど)の違いがあるので比較しにくい部分もありますが、なぜこれほど多様な気筒数があるのでしょうか?
じつは前述のホンダのレーシングマシンからも分かるように、エンジンを多気筒化する主たる目的は「高出力化」です。こう聞くと「当然だろう!」と言われそうですが、もう少し掘り下げてみましょう。
比較しやすいよう同メーカーで同ジャンル、同排気量のバイクのスペックとして、少し年式に差はりますが、カワサキの3台の250ccモデルをサンプルに見てみます。
多気筒=高回転=高出力!
3台のスペックで目を引くのは、やはりパワーの違いですが、その最高出力を発生する回転数にも注目すると、多気筒化のメリットとして、気筒数を増やすと1気筒当たりの排気量が少なくなるため、基本的にはボア×ストロークが縮小します。そのためピストンなど各部品が小型・軽量になり、圧縮工程で反発力が下がり、専門的にはピストンスピードも遅くなるため、結果として高回転まで回しやすくなります。多気筒エンジンは、この高回転で馬力を稼いでいるワケです。

反対に、単気筒を見ると最大トルクが大きいことがわかります。これは1気筒当たりの排気量が大きいため、1回の爆発で生まれるエネルギーも大きくなるからです(現行モデルだと最大トルクは2気筒の「Ninja 250」が2.2kgf‐m/10500rpmで、4気筒の「Ninja ZX-25R」は2.2kgf‐m/12500rpmに増加していますが、これは時間的な技術進歩によるもの)。
ただし単気筒はピストンなどが大きくて重く、同じ回転数でもピストンスピードが速くなるため高回転には向きません。
出力とトルクの関係は「トルク×回転数=馬力」となります。そこで3台の最高出力と最大トルク、それぞれの発生回転数を見比べると、1気筒当たりの排気量が大きいほどトルクは大きいけれど、高回転まで回したほうが馬力を稼げることが理解できるでしょう。
分かりやすく相反する、気筒数のメリットとデメリット
というワケで、速さ=高出力を狙ったバイクのエンジンは、必然的に多気筒になりました。しかし単純に「多気筒のほうがエライ」とならないのは、ほかのスペックを見ると分かります。
まずは燃費です。多気筒エンジンは高回転でパワーを発揮しますが、回転数が高いとそれだけ「爆発回数が増える=燃料をたくさん使う」ため、当然ながら燃費が悪化します。実走行に近いWMTCモード地で比べると、4気筒の「Ninja ZX-25R」より単気筒の「Ninja 250SL」は2倍近く走れます。
また4気筒は各部品が小型・軽量になるとはいえ、シリンダーやピストン、バルブなどの動弁機構の数は単気筒の4倍になるため、エンジンは大きく重くなります。
またパワーが増した分、フレームや足まわりも強固にする必要があるため、結果として車両重量が大幅に増加します。そして部品点数の多さは、組み立て工程や部品の原価に直結するため、バイクの価格も大幅にアップします。
……と、気筒数の違いはスペックや価格だけでも大きく異なりますが、エンジンの構造が変わるため、もちろん乗り味も変わります。エンジンの特性は気筒数だけでなく、シリンダーの配置(並列やV型など)も大きく影響するので一概に言えませんが……。
また、バイクのカテゴリーや排気量が変われば、各ライダーのバイクの選択の基準も変わるでしょう。例えばネイキッドやクルーザーなら、エンジンのルックスや排気音も重要な要素になるかもしれません。そうなると、ますます「多気筒の方がエライ」とは言い切れなくなります。
それもまた、バイクのエンジンの面白いところ、と言えるのではないでしょうか。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。









