カワサキ「Z2」との40年の物語 「立ちゴケ」から始まった20年の眠りを経て、990ccエンジンで新たなZライフへ〜日本の至宝「空冷4発」を未来へ継承〜Vol.39【最終回】
メイド・イン・ジャパンのモーターサイクルを代表する一台として、誰もが認める存在と言えるのがカワサキ「Z1/Z2」シリーズです。購入当初の姿と比べたら、間違いなく「見違えるコンディション」に仕上がったカワサキ「750RS/Z2-A」後期モデル。遂に完成域に達しましたが、ある意味「ふりだし」に戻ったとも言えますね……。
排気量アップで走りも別次元に
運転免許試験場に通い、約4ヶ月で限定解除達成!! 先輩から借用したZ2(まさにZ2-A後期モデル)で走り回るのが楽しかったあの頃。1980年の夏のことでした。
今回、レストアをしてきたベース車両の1975年型750RS/Z2-A後期モデルは、通称「茶玉虫」と呼ばれるのマルーンカラーでしたが、カラークリアがもはや飛んでしまい、下地色が薄く見えていた外装コンディションでした。6000rpm以上回したときに変化するエキゾーストサウンドが魅力的なモデルでもありました。

ぼく個人的にも、高校生の時にWディスクが標準装備になったZ750FOUR/Z2 A4の中古車を購入した車歴があります。全開走行を楽しみましたが、ノーマルZ2は、想像していたような走りではなく、間違い無くジェントルなマシンでした。
ある日、行き着けのバイクパーツショップの常連が所有するZ2改に、試乗させて頂ける機会を得ました。1970年代当時に、カンパニォーロ製マグホイールを履くほどのスペシャルマシンで、エンジンはモリワキモンスター用を搭載していました(FISCOで走っていたレース車両のエンジンに載せ換え済)。
キャブレターには、ヨシムラミクニのスムーズボアとマフラーには大阪のダイシン工業で特注製作して頂いたアルミ製の集合管を装備していました。スロットル操作だけで前輪の接地感が無くなり、レッドゾーンを超えてもグイグイ車体を前に押し出すパワフルさは、過去に経験したことが無い速さでした。発売直後の初代Z1100GPと比較走行したこともありましたが、そのフルチューンドZ2改の方が、明らかに速くかつ次元の違う走りだったことを思い出します……。
あの日以来、Z2Eエンジンは「Z1クランクを組み込み排気量アップしてこそ本物の走りを得られる!!」といった考えが、ぼくの頭の中にはあります。バイク誌業界で働くようになり、縁があって初代空冷Zシリーズを取材したり、試乗させていただく機会が多く、我々編集部でも「Z1ベースで連載企画をやりましょう」という声があがりました。
当初は、里帰りZ1の中古車を探しましたが、タイミングが悪く空振りばかり。そんな折、偶然めぐり逢えたのが、ここでレストアを楽しんだ750RS/Z2-A後期モデルでした。前オーナーさんのお話しでは、立ちゴケしたことをきっかけに、フルレストアを考えたのが平成の初め頃だったそうです。分解バラバラにされたZ2は、その後「イン・ザ・バスケット」状態のまま20年以上、部品棚の中で経過することになったそうです。
その後、仲介して下さったショップで分解済部品を個々に磨き、そのまま組み上げられた状態のZ2を、運良く編集部で購入することができました。そして、レストア兼エンジンオーバーホール&チューニング企画をスタートさせ、車両の一般整備からレストア実践を様々な角度からリポートしました。
現状の仕上がりでは、まだまだフルレストアレベルとは言えませんが、ベース車両を購入した当初の薄汚さとは、まるで比較にならない「パリッ」とした車両に蘇ったと感じられます。
走りに関しても、これまでの750ccとは大違いで、ストロークアップしたクランクとオーバーサイズピストンの組み合わせで排気量は990ccとなり、極低速域から明らかにトルクアップしていている。あの時の超チューンドZとは比較になりませんが、ノーマルの750ccエンジンとは比較にならない力強さで大満足です。この車両を「ふりだし」と考え、カワサキZライフを楽しめればと考えてます。
Writer: たぐちかつみ
フリーランスライター。バイクも作る国内自動車メーカーの生産技術開発部門を経てから大人向けのバイク専門誌「クラブマン」誌へ合流。同誌のメンテナンスコーナーが縁で、1995年春には「モト・メンテナンス」誌を創刊し編集長を務めた。同誌休刊後の2019年秋からは、内外出版社にて「モトメカニック」誌を創刊。現在も同誌編集長を務めている。


















