パドックで作る料理……じつは日本食!? 心身のためには慣れたゴハンを食べることが大事!【MotoGPの現場から No.8】

MotoGPのパドックで、HJCヘルメットのレーシングサービスを行なう長谷川朝弘さんによる、現場のリアルです。ヘルメットのレーシングサービスやMotoGPのパドック、そしてMotoGPとともに移動する旅での出会いなど、30年以上にわたってMotoGPに関わり続ける長谷川さんの視点でお届けします。今回は、第13戦オーストリアGPで長谷川さんのレースウイークにおける普段の食事について伺いました。

サービストラックのキッチンで、水曜日から自炊の日々

 みなさん、こんにちは。MotoGPのパドックでHJCヘルメットのレーシングサービスを担当している、トミーハセガワ(筆者:長谷川朝弘)です。今回は、レースウイークに普段僕が食べている食事について紹介したいと思います。

2025年シーズンMotoGP第13戦オーストリアGPでの木曜日の夕食は……「マルちゃん焼そば」!
2025年シーズンMotoGP第13戦オーストリアGPでの木曜日の夕食は……「マルちゃん焼そば」!

 僕がパドックに入るのは水曜日からです。その前日の火曜日や、レースが終わった日曜日、月曜日の晩にはパドック以外で食事をすることもありますが、基本的には水曜日から日曜日まで、パドックに停めたサービストラックで生活しているので、その間の食事もこのトラックのキッチンで作ります。

【※編集部注:サービストラックのキッチンには、水道、電気コンロ、電子レンジ、冷蔵庫が完備されている。都心の安いワンルームアパートのキッチンよりも広いかもしれない】

 今日(第13戦オーストリアGPの木曜日の夕食)は「マルちゃん焼そば」です。冷蔵なのですが、飛行機で持ってくれば大丈夫かな、と思って、最近は日本から持ってきています。

 いつもだいたい夜7時から7時半ごろに仕事に区切りをつけて、夕食を作って食べます。そして食べたらまた作業に戻って、寝るまで仕事をするんです。

 HJCのサポートライダー、MotoGPライダーの(ファビオ・)クアルタラロやMoto2ライダーのアルベルト・アレナスなどは、ホスピタリティの食事に誘ってくれたりもします。カル・クラッチロー(2020年に現役引退)が現役だったころは「インスタントラーメンばかり食べるんじゃないぞ」と気を遣ってくれたし、奥さんのルーシーも「だめよ、そんな食事ばかりじゃ!」と怒られて(笑)、ホスピタリティで食べたこともあります。

 ホスピタリティに行けば食事を作らなくていいし、洗い物も無いから楽なことは確かです。でも、ずっと同じ作業をしていると滅入っちゃうので、ソーセージやキャベツを切って、ヘルメットから離れて違うことをするだけでもリフレッシュになるんです。

 今日一日を振り返って、明日のことを考えながらゆっくり食事したいし、寝るまで仕事、起きたら仕事をしたい。それに僕がホスピタリティに行ったら、このトラックに誰もいなくなってしまうでしょ。なるべく「誰か」が来たときにここで待っていたいんです。だから、基本的に食事はこのサービストラックで作って食べています。

大事なのは、心身が求める食事をすること

 パスタを作ったり、いい肉を焼いたりすることもあります。でも、基本的に日本食が好きなので、作るのは日本食ですね。以前は、バルセロナだったら街まで30~40分で行けるから、毎晩外食していたこともありました。でも、そういうときもラーメンとか日本食ばかり探していましたね。

2020年のコロナ禍はパドックから出るのも大変だった時期。アレナスと食卓を囲んでいた
2020年のコロナ禍はパドックから出るのも大変だった時期。アレナスと食卓を囲んでいた

 せっかく海外にいるんだから地元のものを食べよう、というブームもありましたよ。スペインやイタリアの料理は美味しいですからね。でも、どうしても口に合わない国の料理もあるので、やっぱり日本食を食べると心が豊かになります。それがインスタント系でもね。

 最近では、焼きそばやコンビニエンスストアのドライフーズのスープに白米と玉子を入れたり、麻婆春雨の元などを買ってきたりします。レトルトカレーなども食べますよ。

 朝ごはんには、以前はお茶漬け、その後に玉子のサンドウィッチのブームがありました。でも、タマゴサンドは食パン8枚分食べないと満足しなくなってしまって、玉子も大量に使うし、ゆで卵を作るのも面倒になってきて……。

 以降は、ひき肉やソーセージ、玉子を入れて、その上からトルティーヤをのせて、焼けたころに裏返す、という時短ハンバーガーみたいな料理を作っていますね。SNSで見てやってみようと思ったんです。

 昼食にはカップ麺を食べることが多いのですが、スープのカップ麺ではない、カップ焼きそばなどを食べています。スープがあると、仕事が入ったときに放置になって麺が伸びてしまいますから。そういう風に、いつ・何を食べる、というところにも気を遣っています。

【※編集部注:取材中にMoto2ライダーのアルベルト・アレナス選手が登場。2025年の鈴鹿8耐にチームスズキCNチャレンジから参戦したことでも知られる。HJCのサービストラックによく来るそうで、取材の主旨を説明したところ、パンデミックの時期にこのトラックのキッチンで料理をしたという思い出話に華が咲いた。ちなみに、アレナス選手は料理好きで、得意料理はトルティージャ・デ・パタタス(スペイン風オムレツ)だとか】

 コロナのときは、アルベルトと2人でこのトラックのキッチンで料理をしていたんです。病原菌を入れたらいけないと、当時はこのトラック内は土足禁止にしていました。キッチンの床にカーペットを敷いて、2人でまったりしたりね。

 彼がMoto3クラスでチャンピオンを獲得した2020年はそんな状況だったから、あるとき、周りがアンドラなどに帰っていたのでアルベルトが「僕もアンドラに帰りたいなあ」なんて言うんです。だけど、「お前はチャンピオンシップがかかっているからダメだ。何かあってチャンピオンとれなかったらどうするんだよ」と言って思いとどまらせたこともありましたね。

【※編集部注:アレナス選手も常に長谷川さんを気遣って、よくホスピタリティに誘ってくれるのだそう】

 変な生活してますよね。せっかく海外にいるんだから、外に出て美味しいものを食べたり、ホスピでエンジョイすればいいのに……。僕はそういうことができないんですよね。

 でもね、HJCで働きはじめたときに、カタールGPで会った会社の重役の方に「海外で仕事するのは大変だから、自分の心とか体が欲しているものを食べることが一番大事だよ」と言われたことがあります。

 僕が「日本食が好き」と言ったら、韓国食材店でその方がレトルトの白米やみそ汁など、スーパーの袋で2袋くらいどっさり買ってくれました。

【※編集部注:韓国食材店や中国系の食材店でも、日本の食材が置いてあることが多い。特に米や海苔、しょうゆ、紅ショウガ、インスタントみそ汁、インスタントラーメンなど】

 慣れ親しんだ料理を作るということ自体にも、心を穏やかにする作用があるのだとも思います。「疲れちゃったなあ」というときでも、たとえ同じメニューでも作ると元気になりますから。

 日本食を作って食べて、気分転換をして……。そうして、また仕事に戻ることができるんです。

■HJC HELMETS
韓国のヘルメットメーカー「HJC」は、2025年シーズンは3名のMotoGPライダー、ファビオ・クアルタラロ、ブラッド・ビンダー、ミゲール・オリベイラをサポート。彼らが使用するのは市販製品である「RPHA1」(※モデル名は販売国によって異なる)

(まとめ:伊藤英里)

【画像】サービストラックで作って食べる! 日本から持ってくる食材などはスーツケース1個分!? を見る(10枚)

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Writer: 長谷川朝弘

2001年からシーズンを通してMotoGPを転々とし、パドックでヘルメットのレーシングサービスに携わる。2016年、HJCのレーシングサービス担当者に。最大限かつ最も重要なサポートとして「視界をクリアに保つこと」をポリシーに、日々試行錯誤を続けている。

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