KTMファン必見。マッティヒホーフェン『KTM Motohall』でKTMがたどってきた歴史物語とバイクに浸る
MotoGPオーストリアGPの取材後、筆者(伊藤英里)はマッティヒホーフェンにあるKTMのミュージアム「KTM Motohall」を訪れることができました。KTMを堪能できるミュージアムをご紹介します。
KTMの歴代モデルに浸ることができる
KTMのミュージアム「KTM Motohall」は、オーストリアのマッティヒホーヘンという街にあります。ザルツブルクから電車でもクルマでも約1時間、北上したところにある小さな街です。

この街にはKTM Motohallだけではなく、R&Dや主要な生産工場、ロジスティクス・センター、KTMのレース部門であるファクトリー・レーシングの機能も集約されています。
KTM Motohallのチケットはホームページから事前購入することもできますが、当日の購入も可能です。チケット代は15ユーロ(約2600円)で、自分のスマートフォンで聞くことができるオーディオガイドは5ユーロ(約865円)となります。オーディオガイドの購入は任意です。
展示フロアは特別展示のある地下、レセプションのある1階、そして展示フロアが3つに分かれています。
KTMのヒストリーを展示するフロアでは、KTM最初のバイクである「R 100」(1953年)を皮切りに、歴代のKTMバイクがずらりと並んでいます。バイクを眺めながらKTMの歴史を知ることができるのは、ミュージアムならではです。
KTMのルーツは1934年、ハンス・トルンケンポルツによって開設された「ツム・シュヴァルツェン・アドラー」という宿屋の中の修理工場でした。工場は発展しましたが、第2次世界大戦後から1950年代にかけて修理が激減したことで、モーターサイクル事業への転換が模索されたということです。なお、1948年から1953年までは、法的理由から会社名は「Moser&Co.」だったということです。
KTMの社名の由来については、KTMのホームページによると、トルンケンポルツと1950年代に共同経営者として加わったエルンスト・クローンライフ、マッティヒホーフェンの頭文字をとった「Kraftfahrzeuge Trunkenpolz Mattighofen」とする説と、「Kussin」、「Trunkenpolz」、「Moser」の頭文字から来ている、とする説があるそうです。
Kussinというのは、オーストリアのバイクメーカー「HMW」のレーサーで販売部長だったエルンスト・クッシンで、「R 100」の開発・製造にも関わりました。
当時のKTMは自社エンジンではなく、ドイツのエンジンメーカーSACHSやRotaxのエンジンが搭載されていました。KTMエンジンが最初に搭載されたバイクは、「MECKY 50」(1957年)でした。

その先に進むと、1991年の破産申請と営業停止のこと、そしてクロス・ホールディングAGが事業を継承して1992年始めに営業を再開したことも書かれています。KTMが掲げる「READY TO RACE」は、このとき誕生しました。競技水準のスポーツ・モーターサイクルの開発が始まったのです。
1994年には最初の「DUKE(デューク)」が誕生し、1995年にオランダのサスペンションメーカーである「WP」が傘下となり、1996年にKTMモトラッド・ホールディングがウィーン証券取引所に上場している模様も、写真とともに知ることができます。破産から一転、上昇の勢いを感じる時代です。
こうして見ていくと、バイクメーカーのミュージアムというのは、そのメーカーの歴代のモデルを見ることができるだけではなく、歴史を知ることなのだと感じます。
KTMのミュージアムではバイクだけではなく、その時代がKTMにとってどんな時代だったのか、どのような人々が貢献したのか、といったことも写真とともに紹介されており、充実した内容となっています。
2024年11月26日、KTMは「自主管理による法的再建手続き」を開始すると発表しました。そして現在、その再建が進んでいます。数年後か数十年後には、KTM Motohallのヒストリーに、この出来事も「KTMが乗り越えてきた歴史」として加わるのかもしれません。
子供向けの仕掛けに富んだミュージアム
また、このミュージアムでは子供向けの仕掛けが多い、とも感じました。オーディオガイドは「ドイツ語」と「英語」から選ぶことができるのですが、さらに「ドイツ語子供向け」「英語子供向け」のガイドも用意されています。

ミュージアム内の説明や展示でも、パネルを押したり、ゲーム感覚でバイクの仕組みを知ることができる仕掛けが多く用意されていました。ミュージアムというと「展示」というイメージですが、KTM Motohallでは実際にまたがって写真を撮ることができるバイクが何台も用意されているのも、いいなと思ったところです。
その中には最近のバイクだけではなく、「R-125 TOURIST」(1955年)や、MotoGPマシン「RC16」といった貴重なバイクもありました。こうした経験が、未来のバイク好きを生むのかもしれません。
筆者(伊藤英里)はゆっくりと、4時間ほどかけてミュージアムを堪能しました。KTMのバイクの世界に身を浸すことができる時間だったと思います。
Writer: 伊藤英里
モータースポーツジャーナリスト、ライター。主に二輪関連記事やレース記事を雑誌やウエブ媒体に寄稿している。小柄・ビギナーライダーに寄り添った二輪インプレッション記事を手掛けるほか、MotoGP、電動バイクレースMotoE取材に足を運ぶ。















