一体なぜ!? バイクのウインカーは自動的に消えない? クルマと違ってカンタンに装備できない理由とは
クルマ(4輪車)のウインカーは、交差点を曲がったり車線変更を終了すると自動的に消えます。ところが多くのバイクは、ウインカーを自動的に消灯する機能(オートキャンセラー)がありません。点けっぱなしで恥ずかしい思いをしたライダーも多いのではないでしょうか。
クルマでは一般的、バイクだと特別装備!?
ウインカー(方向指示器)は、周囲のクルマやバイクに対して自分の動きを伝えるための大切な装置です。とはいえ、交差点を曲がり終わったのに消すのを忘れ、延々と点けっぱなしにした経験は誰にでもあるのではないでしょうか。

消し忘れ(点けっぱなし)に気づくと恥ずかしい気持ちになりますが、じつはけっこう危険なパターンもあります。
たとえば自分が交差点で右折待ちしている時に、右にウインカーを付けた対向車がやってきたら、そのタイミングで自分も右折を開始するでしょう。しかし、もしその対向車はウインカーを消し忘れていてそのまま直進してきたら、重大な右直事故が起こる可能性があります。
そこで少なからず不思議に思うのは、クルマ(4輪車)はずっと昔からほぼすべての車両がウインカーのオートキャンセラーを装備しているのに、バイクはいまだにライダーが手動で消すウインカーが主流というコトです。
重要な保安部品なのに、なぜウインカーオートキャンセラーを装備しないのでしょうか?
バイクに標準装備されない理由とは?
どんなクルマもウインカーオートキャンセラーを装備するのに、多くのバイクが非装備なのは、それぞれの「曲がり方」が異なるからです。
まずクルマは、ハンドルを切って曲がります。そのためハンドルの軸付近にウインカーレバーを設け、ウインカーを出した方向に対して、ハンドルが逆回転したらウインカーレバーが元に戻る(ウインカーが消える)ようになっています。
これは比較的簡単な構造で、安価な軽自動車から超高価なスーパーカーまでほぼ同じ構造なうえに、誤動作もほとんどありません(曲がっている最中にハンドルの切り戻しを行うと消灯するが、それは交通状況やドライバーの運転の仕方が理由)。
対するバイクは、極低速の小回りやUターンでは相応にハンドルを切りますが、普通に走っている状態での右左折や車線変更は、車体を傾けることで行い、ハンドルはほとんど切りません。
そのため「曲がり終えた、車線変更を終了した」を判断するのがクルマよりずっと難しく、簡単な構造のウインカーのオートキャンセラーを作ることができないのです。
じつは昔からバイク用も存在するが……
とはいえウインカーは安全に関わる装置だけに、バイク用のオートキャンセラーも昔から開発・研究されており、一部のバイクは装備していました。
たとえばカワサキ「Z1-R」(1978年~)や「Z1300」(1979年~)などはオートキャンセラーを装備していました(仕向け地による)。
ウインカーを点灯してから、機械式のスピードメーターから「何メートル走ったか」を検出し、専用のユニットから電気信号を出して、ハンドルスイッチボックス内に設けた電磁石を作動させてウインカースイッチを元に戻す(ウインカーを消す)という、なんとも機械的なシステムです。相応に高級車だった「Z1-R」や「Z1300」ならではの装備と言えるかもしれません。

ホンダは1982年発売の「CBX400Fインテグラ」に、ハンドル切り角センサーや車速センサーからの信号をコンピューターで制御するウインカーの自動消灯装置を装備しました。
また1986年に発売したビッグスクーターの「フュージョン」にもオートキャンセル機構を装備し、右左折後にハンドルを直進状態になったことを検知してウインカーを消灯しました。
……が、ハンドブックには「緩やかなカーブや進路変更等、ハンドル操作角が少ない場合、ウインカーは自動的に解除しません。」という注意が書かれており、実際にオートキャンセラーの評判は、残念ながらあまり芳しくありませんでした。
外国車ではハーレーダビッドソンが1980年代後半にオートキャンセラーを開発し、1990年代前半頃からすべての車両に装備し、現在に至ります。
ウインカーを操作してからの時間(秒数)や走行距離など、年代や車両によって自動消灯するまでの条件は異なるようですが、いずれも専用のユニットを装備しています。
ハーレーのオートキャンセラーに関しては、使い勝手の良し悪しの評価が分かれているようです。これはライダーの使い方や走るシチュエーションが関係しているのかもしれません。
バイクのウインカーオートキャンセラーは現在進行形
ホンダはウインカーオートキャンセラーの開発を続けており、2014年に発売したクルーザーモデル「CTX1300」に、前後の車輪の車輪速差率をセンサーで感知して直進状態や旋回状態を判別する、独自のシステムを装備しました。同様のシステムは2018年登場の「ゴールドウイング」や、2023年に発売した「XL750トランザルプ」にも装備しています。
また近年は「IMU」(慣性計測装置)を装備し、車体の姿勢の変化を検知するバイクが増えてきました。
IMUは、トラクションコントロールや最新のABSなど様々な電子デバイスに活用されていますが、車体の姿勢をリアルタイムで緻密に検出できるため、「交差点を曲がり終わって車体が起きた」という状況を正確に判断できるので、この機能を利用したウインカーオートキャンセラーも登場しています(ドゥカティやBMWなどの一部車種)。
とはいえ、ウインカーを自動的に消すために専用のセンサーやコンピューターを備えるのにはコストがかかります。またIMUの装備も、現段階ではスーパースポーツ車や大型アドベンチャー、大型ツアラーに限られます。そのためバイクのウインカーオートキャンセラーの普及はまだしばらく時間がかかりそうです。
というワケで、オートウインカーキャンセラー非装備車に乗る多数派のライダーは、とにかく「ウインカーの消し忘れ」にはくれぐれも気を付けましょう。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。













