「グランドツアラーらしからぬ!?」と言いたくなるような運動性と軽快感を獲得したBMW Motorrad新型「R 1300 RT」の世界

2025年7月より国内導入されたBMW Motorrad新型「R 1300 RT」は、排気量を1300ccに拡大した空/水冷ボクサーエンジンを搭載し、先代モデル「R 1250 RT」から全面刷新されました。新世代グランドツアラーの乗り味はどのようなものなのでしょうか。試乗しました。

「GS」の歴史を上回るロングセラー車

 BMWモトラッドのボクサーツイン(水平対向2気筒/フラットツイン)エンジンと言ったら、近年の一番人気はアドベンチャーツアラーの「GS」シリーズですが、舗装路のロングランに特化したグランドツアラーの「RT」も、同社の歴史を語るうえでは欠かせないモデルです。何と言っても1978年に初代が登場し(「GS」の初代デビューは1980年)、以後は熟成と改革を行いながら、ほぼ半世紀に渡って生産が続いているのですから。

BMW Motorrad新型「R 1300 RT ASA」(2025年型)カラー:レーシング・ブルー・メタリックに試乗する筆者(中村友彦)
BMW Motorrad新型「R 1300 RT ASA」(2025年型)カラー:レーシング・ブルー・メタリックに試乗する筆者(中村友彦)

 そして2025年型で、全面刷新を受けた新型に進化しました。初代から数えて9代目となる「RT」の最大の特徴は、2023年に登場した「R 1300 GS」から継承した装備、排気量が1300ccの水冷ボクサーツインや板金シェル構造のフレーム、多種多様な電子デバイスなどですが、その他にも注目すべき要素は数多く存在します。

 なお、2025年型「R 1300 RT」の日本での価格(消費税10%込み)は、オーソドックスなマニュアルミッション車が366万1000円からで、クラッチ操作が不要となる「ASA(オートメイテッドシフトアシスタント)」車が378万5000円からです。

 先代の「R 1250 RT」と比較すると、約20~30万円の価格アップとなったわけですが、多種多様な部品を新規開発していることや(逆に先代との共通部品はほぼ皆無)、パニアケースに加えてトップケースも標準装備になったことを考えると、このモデルの購入を検討しているライダーなら高くは感じないでしょう(ETC 2.0車載器も標準装備)。

快適性と運動性の向上

「R 1300 RT」の技術資料を見て、私(筆者:中村友彦)が最初に興味を惹かれたのは、空力性能の徹底追及や(風洞実験を行ったうえで可変式ウインドディフレクターやシリンダープロテクター、エンジンスポイラーを装備)、パッセンジャーの居住性向上など(面積を拡大したシートだけではなく、グラブバーとバックレストにもヒーター機能を導入)、快適性にかなりのページを割いていることです。

BMW Motorrad新型「R 1300 RT」(2025年型)カラー:ブルー・リッジ・マウンテン・ メタリック
BMW Motorrad新型「R 1300 RT」(2025年型)カラー:ブルー・リッジ・マウンテン・ メタリック

 と言っても、現代のボクサーツインは基本的にどのモデルも快適なのですが、「R 1300 RT」の装備からはグランドツアラーとしての矜持が伝わってきます。

 ちょっと妙な表現になりますが、そういった豪華な装備に対して「至れり尽くせりの極み」という印象を私は抱きました。

 それに続いて私が目を引かれたのは、既存のダイナミックESA(エレクトリック・サスペンション・アジャストメント)の発展型と言うべき、DCA(ダイナミック・シャシー・アダプション)の導入です。

 日本仕様で標準となるこの機能の特徴は、5種類が存在するライディングモードの中からダイナミック/ダイナミックプロを選択すると、前後ショックのスプリングレートとダンパーがハードになり、車高が他の3つのモードより「高くなる」ことです(フロントよりリアのほうが高くなり、旋回性の要となるキャスター角が立つ)。

 もちろん、DCAの目的は運動性を高めることでしょう。個人的にはそういった資質は兄弟車の「RS」や「R」に任せておけばいい気がするのですが、おそらくこのモデルの開発陣は、安定性重視という既存の方向性から脱却し、新時代の「RT」を作りたかったのだと思います。

自動車高調機能の新しい世界

 ここからはインプレ編で、まずは5種のライディングモードの中から標準と言うべきロードを選択して走った印象を記すと、前後ショックの設定と車体姿勢がオーオドックスな状態でも、十分に軽快でスポーティでした。

BMW Motorrad新型「R 1300 RT ASA」(2025年型)カラー:レーシング・ブルー・メタリックに試乗する筆者(中村友彦)
BMW Motorrad新型「R 1300 RT ASA」(2025年型)カラー:レーシング・ブルー・メタリックに試乗する筆者(中村友彦)

 ボディサイズは依然として大柄ですが、前後左右のマスの集中化を図り、操舵と衝撃の緩衝を完全に分離したEVOテレレバーや、前後で1.4kg以上の軽量化を果たしたホイールなどを採用した新世代は、先代とは次元が異なる運動性を獲得していたのです。

 ではダイナミック/ダイナミックプロモードはどうかと言うと……さらに別次元でした。私が最も感心したのは、コーナリングの1次旋回でグイグイ曲がる感触が得られることです。とはいえ、ハードブレーキング時のフロントまわりの手応えや、アクセルをワイドオープンした際にリアから伝わるトラクションも、グランドツアラーの範疇に収まるレベルではありませんでした。

 そういった資質を認識した私が頭に思い浮かべたのは、「R 1300 GS」がデビューした際に大きな話題を呼んだ、停止時と低速走行時に車高(シート高)が自動で低くなる、アダプティブ・ビークル・ハイトコントロールです。

 もっとも、それが常用域や悪路での親しみやすさを第一義としていたのに対して、「R 1300 RT」が採用したDCAの目的はスポーツライディングの楽しさに磨きをかけることです。

 いずれにしてもDCAの効能を実感した私は、BMWモトラッドの先進性に改めて感心しました。車高の自動調整機能に関しては、ハーレーダビッドソンやドゥカティ、トライアンフなども採用していますが、下げる方向だけではなく、上げる方向での美点を提示しているのは、現時点ではBMWモトラッドだけでしょう。

搭載される排気量1300ccの空/水冷水平対向2気筒(ボクサー/フラットツイン)エンジンは、最高出力107kW(145hp)/7750rpm、最大トルク149Nm/6500rpmを発揮
搭載される排気量1300ccの空/水冷水平対向2気筒(ボクサー/フラットツイン)エンジンは、最高出力107kW(145hp)/7750rpm、最大トルク149Nm/6500rpmを発揮

 という部分的な話はさておき、先代を含めた既存の「RT」シリーズと比較するなら、新型は若々しさを感じるモデルでした。その印象は車体だけではなく、大幅に力強さを増したパワーユニット(最高出力は136から145psに、最大トルクは143Nmから149Nmに向上)にも言えることで、このモデルを走らせていると何だか積極的な気持ちになれるのです。

 もっとも、前述したように試乗前の私は、運動性に関しては兄弟車に任せておけばいい気がしていました。でも今は、グランドツアラーの新しい世界を切り拓いた「R 1300 RT」が、今まで以上に多くのライダーから支持を集めるのではないか……という印象を抱いています。

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Writer: 中村友彦

二輪専門誌『バイカーズステーション』(1996年から2003年)に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。年式や国籍、排気量を問わず、ありとあらゆるバイクが興味の対象で、メカいじりやレースも大好き。バイク関連で最も好きなことはツーリングで、どんなに仕事が忙しくても月に1度以上は必ず、愛車を駆ってロングランに出かけている。

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