ネオクラシック系でありながらオフロードに本気!? BMWモトラッド新型「R 12 G/S」の乗り味とは

2025年5月より国内導入されたBMW Motorrad新型「R 12 G/S」は、往年の名車「R 80 G/S」にインスパイアされたクラシック・エンデューロ・モデルです。排気量1169ccの空/油冷水平対向2気筒エンジンを搭載し、オフロードでの走行性能を重視した車体設計となっています。その乗り味はどのようなものなのでしょうか。試乗しました。

オフロードに対するこだわり

「まさかそう来るとは!?」 2025年春にBMW Motorradの新型「R 12 G/S」(以下、新型G/S)の写真を初めて見たとき、私(筆者:中村友彦)は驚きを感じました。と言っても、BMWモトラッド製ヘリテイジモデルの先代にして原点となった既存の「R nineT(アール・ナインティ)」シリーズに、1980~1990年代の「R 80 G/S」や「R 100 GS」のスタイルを再現した「R nineT Urban G/S」(以下、アーバンG/S)が存在したことを考えれば、2024年から展開が始まった「R 12」シリーズに「G/S」が加わることは想定内だったのです。

BMW Motorrad新型「R 12 G/S」(2025年型)の「GSスポーツ」仕様に試乗する筆者(中村友彦)。カラー:ナイトブラックマットカラー
BMW Motorrad新型「R 12 G/S」(2025年型)の「GSスポーツ」仕様に試乗する筆者(中村友彦)。カラー:ナイトブラックマットカラー

 ところが「新型G/S」は、「Urban(アーバン=都市の、都会的な、という意味)」ではなく、オフロード性能を真剣に追求しているのです。その象徴と言うべき装備がフロントの21インチタイヤですが、フロント210mm/リア200mmのストロークを確保した前後サスペンションや、リーディングアクスル式のフロントフォーク、開発ベースの「R 12」に対してステアリングヘッドパイプを上方かつ前方に移設したフレームなども、悪路走破性に対するこだわりを感じる要素でしょう。

 ちなみに既存の「アーバンG/S」は、フロントタイヤが19インチ、サスペンションストロークはフロント125mm/リア140mmで、フロントフォークはセンターアクスル式、フレームは開発ベースの「R nineT」と共通でした。

 なお、「新型G/S」には後輪のサイズを17インチから18インチに改めたうえでブロックパターンタイヤを採用し、エンジンガードやオフロードタイプの左右フットレスト、+20mmのハンドルバーライザー、悪路に適したライディングモードのエンデューロプロなどを標準装備する、上級仕様の「GSスポーツ」が存在します。

 各車の価格(消費税10%込み)は、標準仕様が245万1000円から、GSスポーツ仕様が254万5000円からで、当記事に登場する車両は、サンドローバーマットカラー車が標準仕様の「オプション719仕様」、ライトホワイトカラー車が標準仕様です。そしてインプレッションでは、「GSスポーツ」のナイトブラックマットカラー車を使用しました。

エンジンの「芯」が感じやすい

 初対面となる「新型G/S」を前にして、私の脳内にふと浮かんだのは、近年のBMWモトラッドでは徐々に希薄になっている気がする「漢気」という言葉でした。

BMW Motorrad新型「R 12 G/S」(2025年型)の「GSスポーツ」仕様に試乗する筆者(中村友彦)。カラー:ナイトブラックマットカラー
BMW Motorrad新型「R 12 G/S」(2025年型)の「GSスポーツ」仕様に試乗する筆者(中村友彦)。カラー:ナイトブラックマットカラー

 その一番の理由はシートの高さ(標準仕様:860mm、GSスポーツ仕様:875mm)ですが、大径の前輪や対地角が強めのスイングアーム、パワーユニット下の広々としたスペース(最低地上高は標準仕様が860mm、GSスポーツ仕様が875mm)などからも、悪路走破性にかける開発陣の意気込みがヒシヒシと伝わってきます。

 もっとも実際に走り始めると、「新型G/S」は至ってフレンドリーなキャラクターでした。エンジンとフレームの基本設計を共有している「R 12 nineT」を引き合いに出すなら、視界が高くて広く、乗り心地が良好なうえに、ライダーの操作に対する反応が機敏で、足つき性の悪さを除けば難しい要素はどこにも見当たりません。

 また、「GS」シリーズの王道である「R 1300 GS」と比較するなら、私にとってはエンジンの「芯」、大げさに言うなら車体の「芯」が感じやすいことが印象的でした。

 クランクケース内の主要部品の配置が複雑になった近年の空/水冷・水冷ボクサーツインとは異なり、「新型G/S」が搭載する空/油冷ボクサーツインは、クランクシャフト後方に大径フライホイールとクラッチ、さらに後方にミッションのプライマリーシャフトを配置するシンプルな構成です。そして同軸に並ぶそれらが同方向に回転するため、長くて重いシャフトの存在が感じやすいのです。

 ちなみに、同社の第1号車となった1923年型「R 32」も含めて、空冷・空/油冷時代のボクサーツインはクランクケース内の主要部品の配置が全車共通でした。だからでしょうか、「新型G/S」を走らせている最中の私は、直接的なルーツの「R 80 G/S」や「R 100 GS」だけではなく、「R 69 S」や「R 75/5」、「R 100 RS」など、過去に自身で体験したBMWモトラッドの名車に思いを馳せることができたのです。

先代とは別物の悪路走破性

 続いてはオフロードの話で、悪路に強い21インチの前輪や豊富なストロークを備える前後サスペンション、自由度が高いライディングポジションなどの効果で、「相当以上にイケる!!」と私は感じました。

BMW Motorrad新型「R 12 G/S」(2025年型)カラー:ライト・ホワイト(左)、サンドローバー・マット(右)
BMW Motorrad新型「R 12 G/S」(2025年型)カラー:ライト・ホワイト(左)、サンドローバー・マット(右)

 排気量が近い他の「GS」と比較するなら、車重が258kgの「R 1300 GS」(主力機種であるツーリング仕様)に対して「新型G/S」は234kgと20kg以上軽く、並列2気筒エンジンを搭載する「F 900 GS」に対しては、ボクサーツインならではの重心の低さが有効な武器になりそうです。

 もっとも「新型G/S」のオフロード性能が、すでに市場で定評を得ている両車に匹敵するのかと言うと、残念ながら私の技量では判別できませんでした。

 とはいえ、先代に当たる「アーバンG/S」のライディングフィールを振り返れば、そもそも悪路走破性で「R 1300 GS」や「F 900 GS」を比較対象として考えられることは、私にとってはかなりの驚きだったのです。

大ヒットモデルになれるのか?

 そんなわけで、「新型G/S」にかなりの好感を抱いた私ですが、パッと見はフレンドリーではない、「漢気」を備えるこのモデルが、市場で大ヒットモデルになれるのか……? と言うと、微妙な引っかかりを感じなくもありません。

BMW Motorrad新型「R 12 G/S」(2025年型)カラー:サンドローバー・マット
BMW Motorrad新型「R 12 G/S」(2025年型)カラー:サンドローバー・マット

 と言うのも、「新型G/S」に通じる雰囲気のモデルとして、トライアンフは2018年から「スクランブラー1200X」シリーズを発売しているのです。そしてネオクラシック系でありながら、オフロード性能を徹底追及したそれが、市場で人気を獲得しているのかと言うと、必ずしもそうではないようです。

 まあでも、かつての「G/S」から続く「GS」シリーズには40年以上に及ぶ伝統がありますし、世界各国のBMWモトラッドディーラーはビッグバイクでオフロードが楽しめる体制を整えています。

 そういった周辺事情を考えると、「新型G/S」の大成功は確実……と言っていいのかもしれません。

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Writer: 中村友彦

二輪専門誌『バイカーズステーション』(1996年から2003年)に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。年式や国籍、排気量を問わず、ありとあらゆるバイクが興味の対象で、メカいじりやレースも大好き。バイク関連で最も好きなことはツーリングで、どんなに仕事が忙しくても月に1度以上は必ず、愛車を駆ってロングランに出かけている。

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