タマ切れしない!? いまや主流の「LEDヘッドライト」ドコが優れている? デメリットは?
最近のバイクのヘッドライトは「LEDランプ」が主流になりつつあります。とても明るくて夜間の視認性に優れ、安全面でも言うことナシ! 他にもメリットがあるようですが、弱点は無いのでしょうか?
バイクの灯火は、長らく白熱電球だった
最近のバイクのヘッドライトはLEDランプが主流で、テールライト(ブレーキランプ)やウインカーなどすべての灯火が「フルLED」の車両も少なくありません。現代的(未来的?)なデザインのバイクはもちろん、レトロな旧車風のバイクや、小排気量モデルでもLEDランプを採用するバイクが増えています。

バイクやクルマの灯火類は、従来は「白熱電球」が一般的でした。これは家庭用照明器具の白熱電球と同じで、電気抵抗の大きな「フィラメント」に通電することで発熱し、結果的に光を発する構造です。
戦前の1930年代後半頃には、レンズや反射鏡部分も一体で作られた大きな電球のような「シールドビーム」と呼ばれるヘッドライトが登場しますが、基本構造としては白熱電球と同じです。
そして1960年代には「ハロゲンランプ」が登場します(レンズや反射鏡と一体ではなく、電球が独立したタイプ)。こちらは電球の中に不活性ガスのハロゲンガスを封入することでフィラメントの発熱温度を上げて光度を増し、かつフィラメントの寿命も伸ばしました。簡単に言えば「明るくて長寿命」ですが、発光する仕組みとしては白熱電球と同じで、最近までヘッドライトの電球として主流でした。
時間の流れで見ると、1990年代半ばに「HIDヘッドライト」が登場します。明るく消費電力の少なさが特徴ですが、体育館などの「水銀灯」に近い構造で、電球以外に付帯する装置が必要でした。そのためかクルマではある程度普及しましたが、バイクでHIDを標準装備した車両は極めて少なかったようです。当時はアフターパーツで多数販売されましたが……。
LEDは、発光する「半導体」
そして2000年代中頃に、ついにクルマ用のLEDヘッドライトが登場します。そしてバイクには2010年代の半ばからLEDヘッドライトの採用が始まります。LEDとは「Light Emitting Diode」の略で、日本語では「発光ダイオード」と呼ばれ、電気機器では古くから使われていました。しかし昔は光度が低く、大きな光量が必要なヘッドライトでの実用化は無理と言われていました。

ところが、日本が世界に先駆け発明した青色発光ダイオードを足掛かりに「高輝度発光ダイオード」が開発され、クルマやバイクのヘッドライトに使えるようになったのです。
詳細な仕組みは割愛しますが、LED(発光ダイオード)は半導体の電子部品で、トランジスタなどの仲間と言えます。そのため白熱電球やハロゲンバルブが「電気エネルギーを熱に変えて発光」させるのに対して、LEDは「電気エネルギーをそのまま光に変換」するのが大きな特徴で、そのメリットは多岐に渡ります。
まず消費電力がハロゲンバルブに対して約1/3と、かなり省電力なので、バイクの発電系や電気配線、そしてバッテリーへの負荷が少ないと言えます。
またヘッドライト用LEDの寿命はおよそ10000時間を超えると言われ、ハロゲンバルブは長くて1000時間くらいなので、なんと10倍も長寿命です。
ちなみに10000時間とは、毎日片道1時間(往復2時間)の通勤に使ったら13年以上、毎週1回8時間のツーリングで乗るなら24年くらい長持ちする計算になります。
他にも、LEDは発光部が非常にコンパクトなうえに、光の向きをコントロールしやすい特性があります。そのためヘッドライトやウインカーなどの灯火類を小型化したり、独自の形状を持たせることでバイクのデザインの自由度も大きくなります。
さらにLEDランプの光は紫外線をほぼ含んでいないため(ハロゲンバルブの光は紫外線量が相応に多い)、「虫が寄ってこない」というメリットがあります。これは洗車時に恩恵を感じるのではないでしょうか。
LEDランプにデメリットはあるのか?
LEDランプは従来の白熱電球やハロゲンバルブと比べると圧倒的にメリットが大きいですが、弱点と言うか、デメリットはないのでしょうか?

まずヘッドライトの光の熱量が低いため、雪国だと車のヘッドライトに積もった雪が溶けないそうですが……(たびたび雪を払う必要がある。ハロゲンバルブだと発熱で溶ける)、バイクは降雪時には基本的に乗らないので、これは関係なさそうです。
実際のところでは、LEDランプは従来の白熱電球やハロゲンバルブよりも高額なところがデメリットかもしれません。じつは寿命で換算すると、必ずしも高額とは言えないかもしれませんが、純正のLEDヘッドライトやテールランプ、ウインカーは、レンズやボディとLEDランプが一体になったアッセンブリー形式が主流で、ヘッドライトなどはけっこう高額です。
そのため転倒など外的な要因で破損した場合は「丸ごと交換」になるため、修理コストがかさみます。また出先で破損した場合に応急措置を施すのが困難とも言えます。
ちなみに従来の白熱電球のウインカーなら、電球は1個数百円で購入できるので、立ちゴケ等での破損時の応急処置も比較的安価かつ簡単に行える可能性があります。
この部分は長寿命やメリットとのトレードオフなので仕方がないかもしれません。
LEDランプは、絶対に球切れしない?
LEDランプはとても長寿命と前述しましたが、じつは突然点灯しなくなることもあります。とはいえ白熱電球やハロゲンランプのような球切れ(経年劣化などで発光するフィラメントが切れてしまう症状)は、構造的に起こりません。それなのになぜ点灯しなくなるのでしょうか?

LEDの「光」の温度は低いのですが、明るく発光させるにはLED素子を取り付けた基盤に大きな電流を流す必要があります。すると基盤が発熱してLED素子のハンダが溶けてしまったり、LED素子そのものが熱で破損することがあります。また配線やコネクターが焼損する危険もあります。するとLED素子の寿命とは関係なく点灯しなくなります。
そのため照度を必要とするヘッドライトのLEDランプは、電気基盤やランプの筐体から効率的に放熱できるように、冷却フィンや小柄の冷却ファンを設けています。バイクメーカーが標準装備するLEDヘッドライトなら、この辺りはしっかり対策しているので、突然点灯しなくなることは滅多にないと思われます。
ただし汎用品のアフターパーツ(従来のハロゲンバルブと交換するタイプのLEDランプ)の中には、冷却が不十分な製品もあるようです。
また純正部品、アフターパーツを問わず、防水措置が不十分(転倒等によってライトケースに隙間が生じるなど)で配線やコネクターが傷んだり、ショートやサビなどの不具合があれば、LEDライトのユニットやLEDバルブそのものに問題がなくても点灯しなくなることはあるので、この辺りはメンテナンス次第といえます。
というワケで、LEDランプに関しては製品不良やメンテナンスで問題がない限り、ほとんどデメリットは無いと言えます。今後は普及率とともに部品コストも下がると思われるので、ますますバイクの灯火類のLED化が進んでいくのではないでしょうか。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。



















