「チェアが無いのにチェアリング!?」湘南・葉山の海岸で過ごすバイクとコーヒーのひと時 デイドリップ通信Vol.35
バイク乗りのコーヒー店主、黒田悟志さんによる連載コラム。今回は夕日と珈琲を愉しむミニマムなチェアリング、秋の湘南・葉山の海岸を訪れたお話です。
フラリと走ってきた湘南・葉山の海岸でドリップ
こんにちは、『Day Drip Coffee』のクロダです。都内で小さなコーヒー屋をやっている、バイク好きの店主です。このコラムは「バイクとコーヒー」をテーマに、2つの世界を行き来して感じる様々なトピックをお届けしています。
今回は、最近耳にする機会も多い「チェアリング」について、それも超お気軽&お手軽な「チェア無しチェアリング」に行って来たお話です。
イス(チェア)が無いのにチェアリングだなんて可笑しな話ですが、僕なりに考えていたチェアリングを実践してみようと思ってのことですので、お許しを。

その日は暑さも和らいだ、とある平日の午後。バイクで出かけようと思い、コーヒーを淹れるための道具一式を用意してシートバッグに収納。あまり具体的な行き先は決めずに、とりあえず出発しました。
なんとなく環八~第三京浜を経て横浜方面へ。特に急いでるわけでもないので、首都高速湾岸線へ進み、三浦半島方面へと向かいます。
東京湾(正確には根岸湾)を望むこの辺りは、空の広さを楽しむのにもってこいの道路で、気持ちも大きく開放されていく感覚があり、好きな道のひとつです。
そのまま横浜横須賀道路へと進むうち、ちょっと空腹感が。途中のパーキングエリアで遅い昼食を取りながら、どこへ向かおうかと思案します。
夕日の時間にはどこかの海岸でチェアリングしようと決め、この次の降りたことのないインターチェンジを降りてみました。あえてナビを使わないまま、知らない街を適当に西へ走らせていたら、結局住宅街の一角で迷子に……。ナビで現在地を確認し、ここからはルートを決めて再出発します。
国道134号に出ると海を横目に北上し、湘南エリアの葉山に着地しました。この辺りはバイクを停められる場所が少ないのですが、葉山公園の駐車場はバイクOKでしかも無料! ありがたい限りです。ただし住宅街の路地の奥なので、静かにゆっくり走りましょう。
荷物を持って、夕日を眺めつつ浜辺を散歩。隣の一色海岸まで来ました。真夏に海水浴に来た時は立ち並ぶ海の家と人々で賑やかでしたが、今はその名残りもありません。
砂浜の一部に、まるでベンチのように侵食された所がありました。イスを持ってこなかった僕はそこに腰を下ろすと、早速コーヒーをドリップすることにしました。自然の中で突如始まる、即席リビングルームでのコーヒーブレイクです。

チェアリング自体は、一般的に「持ち運び可能なイスを持参して、屋外の好きな場所で座って寛ぐアクティビティ」を指します。通常はアウトドア向きのフォールディングチェアを持って行って、そこで食事はもちろん読書をしたり昼寝をしたり、果ては何にもせずにボーッと過ごすのもチェアリングのスタイルですね。それは言い換えるなら「イスを起点にしてアウトドア空間をリビング化」する行為という感じでしょうか。
僕にはイスの存在以上にその場でコーヒーをドリップすることが、アウトドアというオープンな空間を自分の空間=リビングのようにリラックス出来る居場所へと変えてくれます。そんなこともあり、イスだけでなくコーヒーを淹れる道具を持参することが、チェアリングの大きな要素になります。だから究極的にはイスがなくても、コーヒーのドリップが出来れば、それが自分にとってのチェアリングになってしまうのでした。
そして僕の一番ミニマムなコーヒードリップのスタイルが、毎度お馴染みのドリップバッグを用いたスタイル。当店特製ドリップバッグとカップ、それに熱湯を入れたサーモスボトルという3点セットです。
持参したドリップバッグをカップにセットし、良い湯加減に落ち着いたお湯を水筒から注げば、ホットコーヒーの完成です。
コーヒーを味わいつつ辺りを眺めて過ごしていると、いろいろなものが見えてきます。近くに住んでいるのか、大きな犬を連れた家族連れが通り過ぎていきます。見た事のあるタレントさんとTVスタッフが、撮影を終えて撤収しています。高校生のカップルが、ずーっと笑顔のまま波打ち際を歩いていきます。
そこにはそれぞれの日常があり、夕日が沈むように静かに時が進んでいきます。バイクを走らせた先で淹れる一杯のコーヒーは、そんな誰かの日常を眺めるという「非日常」を楽しむための魔法の一杯かもしれません。
Writer: 黒田悟志
世田谷の自家焙煎カフェDay Drip Coffee店主。自転車ロードバイクに20年ほど乗ってきたが、2年前オートバイに目覚めて自動二輪免許取得。両足2気筒から4スト単気筒へ。昨年はSSTRにも初参加しバイクライフを堪能中。







