人気の大型スクランブラー 予想外の万能性を秘めた「ベア650」はロイヤルエンフィールドの650ccツインで最も旅に適したモデルだった
2025年4月より日本国内での販売が開始されたロイヤルエンフィールド「BEAR 650」は、排気量650ccクラスの空冷並列2気筒エンジンを搭載するスクランブラースタイルの新型モデルです。一体どんな乗り味なのでしょうか。試乗しました。
第3のブリティッシュクラシック系
ロイヤルエンフィールドが2019年から発売を開始した排気量650ccクラスのパラレルツインシリーズは、ダブルクレードルフレームのブリティッシュクラシック系(同社の呼称はツインプラットフォーム)の「INT650」と「コンチネンタルGT650」と、ダイヤモンドフレームのクルーザー系(クルーザープラットフォーム)の「スーパーメテオ650」と「ショットガン650」、「クラシック650」に大別できます。
2025年4月から日本での販売が始まった「BEAR 650(ベア・ロクゴーマル)」は、前者に該当するシリーズ初のスクランブラーとして、各部に専用設計パーツを投入しています。
車名の由来は、1921年からアメリカのカリフォルニア州で開催されている「ビッグベアラン」で、1960年に同社の500cc単気筒車が優勝したことにあります。当時のエントリーは765台で、完走は197台でした。そして車体の側面に配置されたゼッケンの数字も、当時を再現しています。

全構成部品の約2/3が新作
既存のモデルをベースにしてスクランブラーを製作する場合、最も簡単な手法は、ワイド&アップハンドルやブロックパターンの前後タイヤを採用し、前後サスペンションのストロークを延長することでしょう。
しかし既存の「INT650」をベースに開発された「ベア650」の特徴はそれだけではありません。全構成部品の約2/3を新作しているのです。

まずライディングポジション関連部品は、ブリッジ付きでワイド&アップタイプのハンドルを採用しただけではなく、シートを加減速と足つき性を考慮したデザインとし、「INT650」に対して前方かつ下方に移設したステップは、オフロードタイプのバーとブレーキペダルを採用しています。
そして足まわりに注目すると、ブロックパターンのタイヤはフロント19インチ/リア17インチで、それぞれ130mm/115mmのストロークを確保した前後サスペンションは、フロントフォークをφ41mm正立式からφ43mm倒立式に変更しています
ちなみに「INT650」のタイヤは前後18インチのオンロード用で、前後サスペンションストロークは110mm/88mmです。
さらに言うなら、剛性バランスを改めたダブルクレードルフレーム、450ccモデル譲りの6インチ丸形TFTディスプレイ、650ccパラレルツインシリーズでは初となる2-1式マフラーの採用とインジェクションマップの刷新で、全域に渡って約10%のトルクアップを実現したパワーユニットなども、「ベア650」の特徴です。
そして驚くことに、国内での販売が開始された2025年4月当時の価格(消費税10%込み)は、「INT650」+約2万円、「コンチネンタルGT650」+約4万円となる、99万円からです(取材車両はスペシャルカラーの101万5300円)。2026年販売モデルは104万1700円からとなっています。
ロイヤルエンフィールドジャパンとしては、基本価格を100万円以下に設定することにこだわりがあるのかもしれませんが、専用設計パーツの数を考えるとかなりお買い得と言っていいでしょう。
クルーザー系の美点を導入?
ここまでは「ベア650」に好意的な文章を記してきましたが、実は私(筆者:中村友彦)は同社の650ccパラレルツインシリーズに関しては、ブリティッシュクラシック系よりもクルーザー系のほうに好感を抱いています。だから今回の試乗には、あまり大きな期待はしていませんでした。

ちなみにその理由は、フロントまわりの挙動です。コーナー進入時の舵角がナチュラルでわかりやすいクルーザー系とは異なり、キャスター角が立ち気味でフロントフォークオフセットが少ないブリティッシュクラシック系の挙動に、私は微妙に馴染めなかったのです。
もっとも、2輪メディア業界でそんなことを言うテスターは他に存在しないので、ブリティッシュクラシック系に関する私の違和感は思い込みなのかもしれません。ところが意外なことに、「ベア650」はクルーザー系に通じるフロントまわりの挙動を身に付けていたのです。
その理由を知るべく、後に650ccパラレルツインシリーズの「キャスター角・トレール・フロントフォークオフセット」を調べると、各車の数値は以下の通りでした。
「ベア650」(前輪19インチ)
26.1度・116.7mm・非公表
「INT650」(前輪18インチ)
24度・106mm・32mm
「コンチネンタルGT650」(前輪18インチ)
24度・106mm・32mm
「スーパーメテオ650」(前輪19インチ)
27.6度・118.5mm・46mm
「ショットガン650」(前輪18インチ)
25.3度・101.4mm・42mm
「クラシック650」(前輪19インチ)
24度・106mm・非公表

つまり「ベア650」のフロントまわりの寸法は、やっぱりクルーザー系寄りなのです。前輪が19インチだから自然にそうなったという見方もできますが、倒立フォークの採用と合わせて専用設計したステアリングステムは、フロントフォークオフセットが40mm前後のようですから、おそらくこのモデルの開発陣は、意図的にクルーザー寄りの数値を採用したのではないでしょうか。
さて、話が何だかマニアックな方向に進んでしまいましたが、フロントまわりの挙動がナチュラルでわかりやすい「ベア650」を体験した私は、守備範囲の広さを感じました。
なんだか私にとって都合のいい展開ですが、乗車姿勢が大らかで、エンジンが従順にしてトルクフルで悪路に強いこのモデルは、環境適応力が高いのです。
もっとも、シリーズの中で最も高い830mmのシート高は足つき性が良好とは言えませんし、前後サスペンションはちょっと硬めです。
とはいえ、6機種存在するロイヤルエンフィールドの650ccパラレルツインシリーズの中で、悪路を含めたツーリングが最も楽しめるモデルは「ベア650」ではないか……と、現在の私は感じています。
Writer: 中村友彦
二輪専門誌『バイカーズステーション』(1996年から2003年)に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。年式や国籍、排気量を問わず、ありとあらゆるバイクが興味の対象で、メカいじりやレースも大好き。バイク関連で最も好きなことはツーリングで、どんなに仕事が忙しくても月に1度以上は必ず、愛車を駆ってロングランに出かけている。



















