圧倒的バイク社会!? ベトナムを自転車で7000km走って実感 リアルな交通事情と身を守るために必要なこととは
圧倒的なバイク社会のベトナムで、都市部のカオスから静かな山道まで、実際に自転車で7000km走りました。そこで見えた交通ルールと現実のギャップ、そして安全に走るための考え方をまとめました。
ベトナムの交通環境
ベトナムを自転車で走る……それは日本のサイクリングとはまったく異なる体験です。都市部のカオスな交通、地方に広がる穏やかな田園風景、そして険しい山間部など、バリエーションに富んでいます。
これまで、私(筆者:才田直人)は実際にベトナムを計約3カ月、総距離にしておよそ7000kmを自転車で走りました。その体験をもとに、「ベトナムを自転車で走る前に知っておくべき交通環境」と「安全に走るための考え方とコツ」をまとめました。
事前にイメージできていれば、必要以上に怖がる必要はありません。ベトナムならではのサイクリングを楽しめるのです。

ベトナムは「圧倒的バイク社会」です。都市部でも地方でも、主役はバイク(スクーターやビジネスバイク)です。交差点を埋め尽くすバイクの流れは、日本人にとって強烈なインパクトがあります。
国道クラスの幹線道路は広く、舗装状態は新しく良好。自転車で走ること自体はとても快適です。
一方で、郊外や山間部に入ると、土砂崩れ、穴、コンクリート舗装、場合によっては未舗装路もあります。風景の美しさと引き換えに、路面状況への注意力が求められます。
一般的な交通ルールと日本との違い「現場で起きていること」
ベトナムは右側通行の国です。自転車は「車両」として扱われ、基本的には車道の右端を走行します。信号や標識の体系は国際基準に近く、ルール自体は決して特殊ではありません。
ただし、日本と決定的に違うのは「ルールが守られることを前提にしない交通」である点です。
交差点ではラウンドアバウトが多く、赤信号で停止する場面は意外と少なめです。信号機にはカウントダウン表示が付いていることが多く、現地の人はその数字を見ながら動きます。
法律上のルールと、実際の走り方の間には、かなり大きなギャップがあります。これを理解せずに日本の感覚で走ると、危険を感じやすくなります。

実際に走ってみて、まず驚くのはバイクの逆走の多さです。幹線道路でも脇道でも、逆走は珍しくありません。
また、左右確認をせず、脇道からノールックで主要道路に進入してくるバイクも日常茶飯事です。
右側通行にもかかわらず、左折時にイン側を切るように曲がってくるバイクがほとんどで、こちらが右折する際は、正面衝突しないように注意が必要です。
停車中のバイクが、後方確認を一切せずに発進することもよくあります。2人乗り、3人乗りは当たり前で、時には4人以上で乗っている姿も見かけます。
さらに、運転スタイルも独特です。脇見運転が多く、低速でフラフラと走るバイクが目立ちます。
自転車で走る際の、具体的な注意点
まず大前提として、すべての車両が「自分優先」で動いていると考えることが重要です。誰も自転車をはねたいわけではありませんが、「相手が避けてくれるだろう」という期待は持たない方が安全です。

周囲をよく観察し、「相手が次にどう動きそうなのか」を常に想像しながら走ることが一番大切です。大型車両の運転はかなり荒く、自転車にとっては最大の注意対象です。
日本の交通ルールは通用しません。しかし、日本で身についた「左右確認」、「後方確認」、「合図を出す」といった基本動作は、ベトナムでも確実に事故リスクを下げてくれます。
一方で、日本では当たり前の「逆走はしない」、「脇道から突然飛び出してこない」といった前提を、ベトナムに当てはめてはいけません。
走行位置としては、一番右側の車線を走ることを徹底します。車線数の多い幹線道路では、最も右側はバイクと自転車のレーンです。基本的に自動車は走行しないので、比較的安全です。
峠道や山間部では突然の未舗装路に備えて、とくにダウンヒルは安全第一を心がけましょう。
装備と準備で、安全度は大きく変わる
パンク対策は万全にしましょう。予備チューブやパッチは多めに持つことをオススメします。地方では、ロードバイクを扱うショップが見つからないことも珍しくありません。
支払いは現金が必須。飲食店や個人経営の宿では、クレジットカードが使えないことがほとんどです。
また、スマートフォンの圏外に備えて、オフラインマップをダウンロードしておきましょう。これだけで安心感が大きく変わります。
高速道路は基本的に自転車通行不可ですが、有料道路では、右端に自転車・バイク専用の入口が設けられていて、無料で走行できる場合も多くありますので、標識をよく確認しましょう。

変化を続けるベトナム
ベトナムは現在も急速に発展を続けています。道路は年々整備され、交通ルールの運用も変わっていくでしょう。数年後には、全く違う状況が生まれているかもしれません。
都市の喧騒、海岸線、デルタ地帯、高原、そして峠道など、交通環境を正しく理解し、周囲をよく見て走る。それさえ意識できれば、ベトナムは自転車旅にとって、間違いなく刺激的で魅力的な場所なのです。
Writer: 才田直人
1985年生まれ。学生時代に通学用に購入したロードバイクをきっかけにトレーニングを開始。サイクルロードレースの全日本選手権参戦やフランスでの選手生活、国内での社会人兼選手生活を経て2023年に引退。日本だけでなく東南アジアなど自転車旅をこよなく愛し、現在はワーケーション自転車旅を続けている。専門的な知識と経験でTV出演やヒルクライムイベントのアテンド、講師なども務める。









