世界限定500台!! ヤマハのファクトリーマシンの名を持つ公道市販車 1999年デビューの「YZF-R7(OW02)」はリアルレーサーだった
1999年に登場したヤマハ「YZF-R7(OW02)」は、スーパーバイクレースで勝つために生産された世界で500台の限定車です。そのファクトリーグラフィックは時代を超えて受け継がれています。
伝統のレーシングスタイル、70周年記念モデルのベースか?
2026年1月に、ヤマハは創立70周年を記念した特別仕様車を発表しました。この記念モデルは人気の「YZF-R」シリーズに、ヤマハ伝統の白地に赤ラインのグラフィックを施しています。1955年からレースとともに歩んできたヤマハの歴史と栄光を感じられる特別なモデルです。
ここに紹介するヤマハのスーパースポーツモデル「YZF-R7(OW02)」は、1999年に発売された、70周年記念モデルと同様のヤマハのレーシングカラーをまとった幻の名車です。車名から現行ラインナップの「YZF-R7」を連想するかもしれませんが、まったくのベツモノです。
「OW02」は「オー・ダブリュー・ゼロ・ツー」と読みますが「OW」とは、本来ヤマハのファクトリーマシンだけに付けられた形式名です。もうこれだけで只者ではない雰囲気が伝わるのではないでしょうか。

さて、1980年代から1990年代はレースブームが沸騰しており、プロもアマチュアも「少しでも高性能なバイクが欲しい」と各メーカーの新型に注目していました。
レースをしないライダーにも、レーシングマシンに近いルックスのモデルがよく売れるという「レーサーレプリカブーム」です。
はじまりは若者に人気のある250ccや400ccクラスが中心でしたが、レーサーレプリカは750ccクラスに、そして世界市場へも拡大します。
そんな750cc(ナナハン)クラスのピークとも言える1990年代後半に、「YZF-R7(OW02)」は発売されました。「サーキット走行に特化した」と言うよりも、もはやスーパーバイクレースに出場するためのバイクです。同時にスーパーバイクレースの競技規則に則り、公道走行可能な市販車として販売されました。
当時の鈴鹿8時間耐久ロードレースやスーパーバイクレースに使用されるマシンは市販車がベースで、販売されている状態のフレームやエンジンなどへの改造範囲が制限されていました。
「YZF-R7(OW02)」は、改造制限される部分を市販状態でレースに使用できるほど高性能化した特別なモデルです。
現在の目線でも、外観は標準的なスーパースポーツ車に見えますが、その標準を構築した1台でもあります。プロのレースで必要な剛性のある体躯や、最高速300km/h時代のカウルは洗練されており迫力があります。
メカニズム的には、コンパクトに設計された新開発エンジンにはチタンコンロッド、ツインインジェクターなど、高価で当時最新の技術が採用されています。車体側も台形断面のアルミ製デルタボックスIIフレームとオーリンズ社製の前後サスペンションを装備しています。

市販状態での最高出力は106PSと控えめな数値でしたが、キットを組めばチューンナップが可能で、スーパーバイク選手権に出場したマシンは170PS以上ありました。
レースでの活躍に目を向けると、「YZF-R7(OW02)」は1999年には吉川和多留選手が全日本選手権スーパーバイクでチャンピオンに、2000年のスーパーバイク世界選手権では芳賀紀行選手が5勝し、ランキング2位を獲得しています。
スーパーバイクレースはその後「YZF-R1」登場の影響もあり、排気量を1000ccへとシフトし、750ccクラスのレーシングマシンは過去のモノとなりました。「YZF-R7(OW02)」は750ccレース時代の終幕を引く超高性能ナナハン達の1台です。
「YZF-R7(OW02)」は海外向けモデルとして500台が限定販売され、米国での販売価格は約400万円でした。その多くが公道を走ることなくサーキットで使用されたと思われます。
乗りこなすにはそれなりの腕前が必要ですが、ヤマハには世界中に「TZ」シリーズ(水冷2ストロークエンジンを搭載する競技専用市販車)で育ったライダーがたくさんいるので、そのポテンシャルを引き出して楽しんでいたのではないでしょうか。
存在そのものがクールなバイクですが、国内での登録数はごく僅か。現在公道を走っている「YZF-R7(OW02)」は、まさに幻の名車と言えるでしょう。
■ヤマハ「YZF-R7(OW02)」(1999年型)主要諸元
エンジン形式:水冷4ストローク並列4気筒DOHC5バルブ
総排気量:749cc
最高出力:106PS/11000rpm
最大トルク:7.4kgf・m/9000rpm
全長×全幅×全高:2060×720×1125mm
始動方式:キック
燃料タンク容量:24L
車両重量:176kg
フレーム形式:アルミ製デルタボックスII
【取材協力】
ヤマハ・コミュニケーションプラザ(静岡県磐田市/ヤマハ発動機本社隣接)
※本記事中の写真は許可を得て撮影しています
Writer: 柴田直行
カメラマン。80年代のブームに乗じてバイク雑誌業界へ。前半の20年はモトクロス専門誌「ダートクール」を立ち上げアメリカでレースを撮影。後半の20年は多数のバイクメディアでインプレからツーリング、カスタムまでバイクライフ全般を撮影。休日は愛車のホンダ「GB350」でのんびりライディングを楽しむ。日本レース写真家協会会員














