【2台でGO!!】いまならまだ新車が購入できる!? 生産終了のスズキ「SV650」と「V-Strom650」じっくり乗ったら印象が変わった
2025年11月にイタリア・ミラノで開催された「EICMA 2025」で、スズキは新型モデル「SV-7GX」を発表し、同様のスズキ製ミドルVツインエンジンを搭載する「SV650」と「V-Strom650」は生産終了となりました。その2台にあらためて、実際にいろいろなシーンを走って比較すると、各車各様の特徴が見えてきました。
エンジン以外は各車各様の個性
この企画の目的は、類似点が存在する同じメーカーの2台を同じ条件でじっくり比較して、各車の個性を明らかにすることです。
今回の素材は、20年以上の歴史を誇るスズキ製ミドルVツイン、スポーツネイキッドの「SV650 ABS」と、アドベンチャーツアラーの「V-Strom650 ABS」(以下、「SV650」、「Vストローム650」)です。
この2台の共通点はエンジンのみで、シャシーは完全な別物です。中でも最も大きな相違点はフレーム形式と前輪のサイズで、「SV650」はスチール製トレリスフレームにフロント17インチ、「Vストローム650」はアルミ製ツインスパーフレームにフロント19インチを採用しています(リアホイールはいずれも17インチ)。
もっとも両モデルの生産はすでに終了し、2台の美点を併せ持つ後継車的なニューモデルとして、スズキは2025年11月にイタリア・ミラノで開催された「EICMA 2025」で、「SV-7GX」を発表しています。
とはいえ、市場にはまだ「SV650」と「Vストローム650」の新車が存在しますし、私(筆者:中村友彦)は過去にこの2台の比較を体験したことがなかったので、今回はラストチャンスという気持ちで試乗に臨むことにしました。

なお両モデルの価格(消費税10%込み)は、「SV650」が83万6000円で、「Vストローム650」は99万円です。近年の他の日本勢が販売している650~750ccモデルの価格は、スポーツネイキッドが100万円前後、アドベンチャーツアラーは120~140万円近辺ですから、この設定はかなりフレンドリーと言っていいでしょう。
どちらもメディア業界で大人気だが……
本題に入る前に大前提の話をしておくと、スズキ製ミドルVツインは2輪メディア業界での人気が非常に高く、私は過去に否定的な話を聞いたことがありません。それどころか、この2台の話になるとたいていの業界関係者は「あの2台は本当にいいんだよね……」と、目を細めて美点を語り始めるのです。
でも私自身は、説明が面倒なので業界関係者に話したことはほとんど無いのですが、実は「Vストローム650」に対して、そこはかとない違和感を抱いていました。
その理由は車格の大きさです。もちろん、アドベンチャーツアラーとしての資質を考えれば、車格の大きさは必ずしもマイナス要素ではありません。とはいえ、軽くて小さな「SV650」シリーズが昔から大好きな身としては、重くて大きな「Vストローム650」はすべての挙動がモッサリしているように思えて、それがどうにも腑に落ちなかったのです。
ちなみにその車重と軸間距離は、「SV650」が199kg・1450mmで、「Vストローム650」は212kg・1560mmです。

「SV650」特有のライディングプレジャー
その印象は今回の比較試乗でも、当初は変わりませんでした。エンジンとクランクシャフトの幅が単気筒並みに狭く、排気量が大きすぎないミドルVツインならではの美点として、「SV650」は混雑した市街地を水スマシのようにスイスイ走れますし、峠道のコーナーでは切れ味抜群のシャープな1次旋回が実感できるのですが、「Vストローム650」ではそういった感触が味わえません。
また、エンジンの基本構成は共通ですが、両車は吸排気系を各車専用設計とすることで、フィーリングの差別化を図っています。この点についても、私の好みは抑揚に富んだ特性で存在感を主張する「SV650」の方で、実直で黒子的な特性の「Vストローム650」を走らせていると、何だかもったいない気分になります。

抜群の快適性を誇る「Vストローム650」
ところが、試乗日が極寒だったうえに、私が風邪気味だったせいでしょうか、今回の試乗の後半では「Vストローム650」の株が上昇することとなりました。
前言と矛盾するようですが、私が最初に感心したのは、大柄な車格だからと思える穏やかで優しいハンドリングです。
と言っても、直立状態から車体を傾ける際は「SV650」に通じる動き出しの軽さを感じるのですが、19インチのフロントタイヤや安定志向のキャスター26度/トレール110mm(「SV650」は25度/106mm)の効果もあって、バンク中の車体が素晴らしく安定しています。
逆に「Vストローム650」を基準にするなら、「SV650」のコーナー進入時の挙動はちょっと落ち着きが足りない? と言えるのかもしれません。
ハンドリングに続いて感心したのは、抜群の快適性です。この要素については過去に行った各車の単独試乗で、ある程度は把握しているつもりでしたが、条件的に厳しかった今回の比較試乗では、軸間距離とホイールトラベルの長さ、シートの高さ、走行風を適度に遮断するフェアリング、さらに言うなら実直で黒子的な特性のおかげで扱いやすいエンジンなどが、快適性にしていることをしみじみ実感しました。
【ホイールトラベルとシート高】
「SV650」フロント125mm/リア130mm、785mm
「Vストローム650」前後150mm、835mm
新型モデル「SV-7GX」への期待と不安
ただし、現在の自分がどちらを所有してみたいかと言ったら、それはやっぱり、軽くて小さくてスズキ製ミドルVツインの素性の良さが感じやすい「SV650」です。
もっとも、今回の比較試乗では「Vストローム650」の快適性に大いに感心したので、カスタム好きの私は、足まわりやライディングポジション関連パーツの刷新、ビキニカウルかスクリーンの追加など、「SV650」の快適性を高める手法をアレコレ検討してみたのですが……。

よく考えると、スズキが2026年中の発売を予定している「SV-7GX」は、私の理想を具現化しているのかもしれません。冒頭では2台の美点を併せ持つ後継車と記しましたが、広報資料から推察すると、「SV-7GX」は「SV650」の快適性を大幅に高めたモデルなのですから。
とはいえ、得るモノがあれば失うモノがあるのは世の常で、車重は「Vストローム650」と大差ない211kgで、軸間距離は「SV650」と同等の1445mmという数値から、「SV650」ほどの軽快感と爽快感、「Vストローム650」に匹敵する快適性や安定性は、「SV-7GX」では得られない……ような気がしているのです。
Writer: 中村友彦
二輪専門誌『バイカーズステーション』(1996年から2003年)に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。年式や国籍、排気量を問わず、ありとあらゆるバイクが興味の対象で、メカいじりやレースも大好き。バイク関連で最も好きなことはツーリングで、どんなに仕事が忙しくても月に1度以上は必ず、愛車を駆ってロングランに出かけている。

















