語源は「ひとつの貝殻」? クルマでは一般的な「モノコック」バイクにもある? 他のフレームと何が違う?
バイクのフレームには様々な種類があり、それぞれに特徴があります。そんな多彩なフレームの中でも「変わり種」と言えるのが「モノコックフレーム」です。いったいどんな構造で、他のフレームと何が違うのでしょうか?
乗用車(クルマ)ではモノコックが一般的?
バイクのフレームには、形状や材質などで様々な種類がありますが、大抵はエンジンやサスペンション、燃料タンクやシート、そしてカウリングなどの外装パーツもフレームに接合され、バイクの骨格の役目を果たしています。
その意味では人間など動物の身体の「骨」と似ているかもしれません。そもそもフレーム(frame)は「枠、骨組み」の意味なので、言葉通りとも言えます。
対する「モノコックフレーム」ですが、語源はギリシャ語で「ひとつ」を表す「mono」と、フランス語で「貝殻」の意味の「coque」を合わせた合成語で、バイクや自動車、航空機などに用いるモノコック構造は、専門的には応力外皮構造や張殻構造(はりがらこうぞう)と呼びます。
これは貝類やエビなど甲殻類のように外側の殻で身体を支える構造で、人間の骨や一般的なバイクのフレームとはかなりイメージが異なります。

……と、語源や文言だけ見るとかなり特殊なフレームに感じますが、じつはクルマ(バスやトラックなどを除く乗用車)だと、軽自動車からスポーツカーまでモノコック構造が一般的です。
ところがモノコックフレームのバイクは、けっこう希少です。どんなバイクがモノコックフレームを採用しているのでしょうか。
モノコックで最高峰レースに挑んだが……
スポーツバイクにおいては、ごく少量生産のコンストラクターやレーシングマシンの世界では、大昔から現在に至るまでモノコックフレームのバイク製作は少なくありません。日本のメーカーでは、ホンダが1979年に世界GPに復帰した際のワークスマシン「NR500」がモノコックフレームでした。

2ストローク全盛の世界GPマシンの中、ホンダは4ストロークエンジンで戦いを挑み、楕円ピストンのV型4気筒エンジンを開発して話題になりましたが、フレームも画期的でした。
いわゆるサイドカウル~アンダーカウルの部分を厚さ1mmのアルミの板を使って一体で製作し、そこに後方からエンジンを差し込むように搭載。フロントフォークを支えるステアリング軸も、一見するとカウリングにしか見えないモノコックフレームと一体で作られ、スイングアームのピボット軸も取り付けられていました。
このアルミ製モノコックフレームは重量5.5kgと非常に軽量で、構想とルックスから当時の技術者は「エビ殻(えびがら)」と呼んでいたそうです。
非常に画期的で軽量化にも貢献しましたが、点火プラグを交換するだけでもモノコックフレームからエンジンを引き抜く必要があり、整備性には難があったそうです。
カワサキは1980年から1982年の3年間、WGP500クラスに参戦した「KR500」がモノコックフレームでした。このマシンは外装パーツ(カウリング)は一般的な構造でしたが、燃料タンクをメインフレームとして使い、エンジンや前後の足まわりが取り付けられていました。
じつはホンダの「NR500」もカワサキの「KR500」も、世界グランプリでは結果を残すことができませんでした。革新的ではありましたが、バイクでモノコックフレームは難易度が高かったのだと思われます。
機能を共有するのがモノコック?
レーシングマシンで結果は出せませんでしたが、カワサキは後にモノコックフレームを採用したメガスポーツ「ZX-12R」を2000年に世に送り出します。
エンジンをフレーム剛体に使い、アルミのボックス状のバックボーンフレームに大容量のエアボックスの機能を持たせることで、大排気量・大馬力ながら車体のコンパクト化を実現。これはかつての「KR500」の技術をフィードバックしたものでした。
その後もカワサキは「ZZR1400(ZX-14R)」に、「ZX-12R」から発展したモノコック・バックボーンフレームを採用しています。

またイタリアのドゥカティは、最新の「パニガーレV2」がモノコックフレームです。こちらは2011年に発売された「1199パニガーレ」で初採用したアルミモノコックフレームから進化を重ね、アルミ鋳造製の驚くほど薄くコンパクトなフレームがエアボックスを兼ねています。
このように、クルマのモノコックボディとは異なりますが、スポーツバイクにおいては骨格としてのフレームと別の機能(エアボックス等)を併せ持つ構造をモノコックフレームと呼び、現在に至ります。
人気のFUNバイクはモノコックボディ!?
レーシングマシンではいまひとつ結果を出せず、市販スポーツバイクでは少々意味合いの変わってきたモノコックフレームですが、じつは実用車やFUNバイクでは成功例があります。
その最たるバイクが、イタリアのベスパでしょう。もともと航空機メーカーだったピアッジオが開発した小型スクーターのベスパは、航空機の胴体に使ったモノコック構造の技術を投入しました。
日本でも有名かつ人気の高かったベスパ「50S」(1963年)をはじめ、現行機種もスチール製モノコックボディです。

そして日本でも、1969年にホンダが「Dax(ダックス)」を発売します。スペック表のフレーム形式には「鋼板Tボーン」と表記していますが、スチール鋼板をプレスで成形したボディにエンジンの搭載や足まわりを懸架する方式は、まさにモノコック構造と言えます。
ちなみに「ダックス」シリーズは1981年に生産終了し、1995年~1999年まで再販された後に姿を消しますが、2022年に「Dax125」で復活します。完全に刷新されましたが、スチール鋼板によるモノコック構造(スペック表記では「バックボーン」)は健在です。
クルマでは主流のモノコック構造(モノコックボディ)ですが、バイクの場合は性能面や生産性であまりメリットを見い出せなかった部分もありますが、ベスパやホンダの「Dax125」によって、しっかり技術が継承されています。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。



















