2ストエンジンの“焼き付き”極端に少なくなった!? ストリートでもサーキットでも問題ナシ!! 進化し続けてきたオイルの信頼性とは
これまで多くの2ストロークエンジンのバイクで、ストリートからサーキットまで走り続けてきたライターの後藤武さんが、近年のオイルの進化について解説します。
ナゼ“焼き付く”のか?
ライターのゴトー(筆者:後藤武)は、これまで多くの2ストローク車に乗ってきました。現在もカワサキ「マッハ(750SS)」をストリートとサーキットで使用し、ヤマハ「RZ250」、「RZ125」、スズキ「RG500Γ」などを所有しています。
そこで感じるのが、最近はエンジンを焼き付かせることが極端に少なくなったという事実です。年齢とともに無茶な走り方をしなくなった、というのも理由のひとつですが、最大の要因はオイルの進化だと考えています。
そこで今回は、2ストロークの焼き付きとオイルについてお話することにしましょう。

まずは「2ストロークがどのように潤滑しているか」から。バイク用4ストロークエンジンの場合、エンジンオイルはクランクケース下部(オイルパン)かオイルタンクに溜まり、ポンプで各部へ送られてピストンやクランク、ヘッド周辺などを潤滑します。
一方の2ストロークは、クランクケース内で一次圧縮を行う構造のため、クランクケース内部にオイルを溜めておけません。そこで混合気にオイルを混ぜてエンジンに送り込み、ピストンやクランクベアリングなどを潤滑します。ガソリンと一緒にオイルを燃やすので、白煙が出ます。
1970年代くらいまではオイル性能がいまほど高くなく、焼き付き対策として鋳鉄スリーブを鋳込んだシリンダーやメッキシリンダーなどの技術が進んでいきました。
スズキはクランクベアリングへ積極的にオイルを送る「CCIS」という潤滑システムを開発し、オイルポンプから送られた2ストロークオイルがクランクやクランクベアリングを潤滑し、さらに混合気に混ざってピストン周りも潤滑していました。カワサキも同様の分離給油システムを採用しています。

その後はエンジン側の焼き付き対策が進むと同時に、オイルも進化していきました。潤滑性が高まり、2ストロークの信頼性も底上げされます。
さらに1980年代に入ると、オイルには新たな性能要件が加わりました。排気バルブ(可変排気デバイス)の普及です。
2ストロークはオイルを燃やす構造上、カーボンやデポジットが出やすく、蓄積すると排気バルブの作動不良につながります。そのため、この頃から高性能エンジン向けの2ストロークオイルは、カーボン/デポジットの付着を抑える性格を強めていきました。
ちなみに2ストロークのエンジンオイルには、混合用と分離給油用の2種類があります。混合用はオイルポンプを持たないレーシングマシンや一部の汎用機などで使用します。
一般的な2ストロークバイクは、オイルタンクとオイルポンプを備え、ガソリンとは別にオイルを給油する分離給油方式が主流なので、基本は分離給油用オイルを使います。
では、この2つは何が違うのか。分離給油用オイルは、温度変化があっても安定して送れる流動性が重要です。また、オイルタンク内で長期間保管されても変質しにくいことが求められます。
一方、混合専用(とくにレース指向)のオイルは、こうした前提で設計されていない場合もあるため、分離給油での使用は推奨できません。

ゴトーがストリートで使用している分離給油用オイルは、「BEL-RAY(ベルレイ)」の「Si-7」です。数ある2ストロークオイルの中からこれを選んでいる理由はいくつかあります。
まず、ベルレイというブランドに対する信頼感。2ストローク全盛期の1970~1980年代にGPシーンを含む競技の現場で多くのライダーが使用し、性能の高さが実証されてきました。
ベルレイは2輪用高性能オイルに注力してきたメーカーでもあります。ゴトー自身も1980年代からこのブランドに憧れ、ベルレイのオイルを使い続けてきました。もちろんバイクにはステッカーも貼っています。筋金入りのファンです。
用途別に幅広いラインナップがありますが、「Si-7」は100%化学合成の高性能ベースオイルに、ベルレイ独自の添加剤を組み合わせ、高性能2ストロークエンジンに求められる要素を高いレベルで満たしています。
ストリート走行からサーキットでのスポーツ走行まで使ってきましたが、潤滑性能に不足を感じたことは一度もありません。吹け上がりはスムーズで、白煙も少なめ。エンジンを分解した際もカーボン付着が少なく、ピストンヘッドや燃焼室がクリーンな状態を保てています。

「Si-7」は混合用としても使用できるので、たまにスポーツ走行をする車両にも使っています。レースなど過酷な環境では同社の「H1-R」を使うこともありますが、スポーツ走行レベルで「Si-7」を試したところ、十分以上の潤滑性能を確認できました。ガソリンと攪拌しても混ざりが早く、使い勝手も良好です。
混合比は「30:1」を基本としつつ、低中速主体でスロットルの開閉が多いコースやモトクロスなどでは「40:1」程度にすることもあります。
使用環境やエンジン仕様によっては「50:1」のケースもありますが、エンジンの状態・燃調・油膜感を見ながら詰めるのが鉄則です。
なお「Si-7」へ切り替える場合、古いオイルはできる限り抜き切ることをオススメします。別銘柄や劣化したオイルと混ざるのを避ける意味もありますし、古いオイルが固まってゲル状になり、オイルラインやオイルポンプを詰まらせている可能性があるからです。
とくに長期間不動だった2スト車は要注意。ゴトーもこれが原因でエンジンを壊した経験があります。タンク内とポンプを清掃して「Si-7」に入れ替えたら、オイルポンプからエンジンへ至るホースを外して(ホースが空気を吸わないよう折り曲げ、タイラップで固定)、少量の混合ガソリンでエンジンを始動。オイルが吐出され、回転を上げると吐出量が増えることを確認します。
2ストの性能をきちんと引き出したいなら、オイル選びは重要です。高性能2ストのために進化し続けてきたオイルを、一度試してみる価値はあるはずです。
Writer: 後藤武
クラブマン誌や航空雑誌の編集長を経て現在はバイク、食、飛行機などのライターと
して活動中。飛行機とヘリの免許を所持しエアレースのTV解説も担当していたことも。2スト、旧車、V8のアメ車など多数所有。









