レース中継で耳にする「コンセッション」とは? メーカーが猛烈に高度な技術を投入する開発現場で何が起きている?

聞き慣れない、見慣れないコトバですが、MotoGP中継やレース関連記事に「コンセッション」という用語が出てきます。なんとなくマシン開発のルールや制限に関係している感じで、参戦メーカーがランク付けされているみたいですが……?

競争力を均等化するシステム

 2輪ロードレースの最高峰であるMotoGPは、参戦するメーカーが持てる技術をフルに投入して開発したマシンで戦います。レースなので勝ち負けがあるのは当然ですが、ある程度競争力が均等化しないと(特定のメーカーが勝ち続けるなどすると)レースとして面白みが薄れるのも事実です。

 そこで競争力を均等化するために、成績が振るわないメーカーに対する「優遇措置」として定められたシステムが「コンセッション」です。

 こう聞くと、なんとなく「遅いメーカーはハンデがもらえる」みたいに思いますが……少し違って、簡単に言えば「開発の自由度を高める」といった感じでしょうか。

MotoGPでは様々なレギュレーションが定められるが、競争力を均等化するための「優遇措置」も存在する
MotoGPでは様々なレギュレーションが定められるが、競争力を均等化するための「優遇措置」も存在する

 現在のコンセッションは、参戦するすべてのメーカー(ファクトリーやコンストラクターと呼ぶ場合もアリ)をA、B、C、Dの4つのランクに分けていますが、2024年まではコンセッションの適用を受けたメーカーは開発や技術的な規制が緩やかになるというモノで、かつてはKTMやアプリリア、現在は撤退していますがスズキも適用されていました。

 MotoGPマシンはエンジンの排気量や気筒数、最低重量など主要な仕様から細部までレギュレーションが定められていますが、レース専用車だけにレギュレーションを守ればそれ以外は「なんでもアリ」の世界で、猛烈に高度な技術が投入されます。

 そうすると新規に参戦するメーカーや、しばらく参戦を休止していたメーカーが、上位のメーカーと互角に渡り合うのはかなり難しいと言えます。そこでコンセッションによる開発の規制の緩和によって、競争力を高めるのが目的です。

ランクはどうやって決める? 何が変わる?

 コンセッションのランクは、すべてのレースで優勝した場合に獲得できる総ポイント(=決勝レース開催数×25ポイント+スプリントレース開催数×12ポイント)に対して、メーカー(コンストラクター)チャンピオンシップで獲得した割合で決まります。

MotoGPのコンセッションのランクを決めるポイントの達成率と、ランクによる開発の制限や優遇措置
MotoGPのコンセッションのランクを決めるポイントの達成率と、ランクによる開発の制限や優遇措置

 ちなみに2025年シーズンの総ポイント数は814ポイントになり、ドゥカティが768ポイント(94%)なのでランクA。ランクBは対象ナシ。アプリリアが418ポイント(51%)でランクC、KTMが372ポイント(46%)でランクC、ホンダが285ポイント(35%)でランクC。そしヤマハは247ポイント(30%)なのでランクDになります。

※ランクを決める期間は2種類(ウインドウ1とウインドウ2)定められ、上記はシーズン開幕から最終戦までのウインドウ1になり、シーズン開始から適用される。ウインドウ2はサマーテスト禁止直後から翌年のサマーテスト禁止前までの1年間のポイント割合でランクを決め、ランクが変動するとシーズン中でもいくつかの制限が即時に適用される。

2026年シーズンのMotoGPのコンセッションでランクDのヤマハは、新型のV型4気筒エンジンを採用
2026年シーズンのMotoGPのコンセッションでランクDのヤマハは、新型のV型4気筒エンジンを採用

 ランクA~Cはエンジンの仕様は前シーズンから変更できず、使用できる基数も同じ。エアロデバイスの更新回数も変わりません。

 ただしランクが下がるほどテストタイヤの本数が増えたり、ワイルドカード(レギュラー参戦とは異なるライダーの一時的な参戦)が増えるため、マシン開発に有利になります。

 そしてランクDになると、新たなエンジン仕様が自由になったりエアロの更新回数が増えるなど、テストも含めて開発の自由度が大きく変化します。

 ヤマハの2026年シーズンのMotoGPマシン「YZR-M1」が、従来の並列4気筒からV型4気筒に変更できるのはこのためで、シーズン中のアップデートも可能になります。

 ここだけ見るとランクDのヤマハがかなり有利に感じますが、そもそも成績が振るわないための優遇措置なので、メーカーとしては成績を出して(レースに勝ってポイントを稼いで)、上のランクに昇格するのが大きな目標でしょう。

スーパーバイク(WSBK)もコンセッション

 コンセッションはMotoGP以外でもワールドスーパーバイク(WSBK)にも存在しますが、こちらは仕組みが異なります。

 スーパーバイクは市販車がベースとなり、改造範囲もかなり狭いため、そもそも競争力に大きな差が生まれにくいとも言えます。

WSBKで2024年・2025年と、BMW Motorradはトプラク・ラズガットリオグル選手によってライダーチャンピオンを獲得。はたして2026年シーズンは!?
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 そこで、(興行的にレースを面白くする意味も含めて)競争力を均等化するために、成績下位のメーカーには通常は禁止されているカムシャフトなどの変更を許可したり、レースを運営するFIMの承認を得られればフレームなどの改良も認められています。

 他にも成績(ポイント)によって、以前はレブリミット(エンジン回転数の上限)を設けたり、現在は燃料流量制限を導入して性能調整を行っています。

 またコンセッションを得るにはレースの順位によるポイント差だけでなく、ラップタイム差による「トークン」も必要となり、かつ2024年からは2大会ごとにチェックポイントを設けてコンセッションを適用するなど、MotoGPと比べるとかなり複雑なシステムになっています。

 これは競争力の均等化だけでなく、コンセッションによる「不公平感」を無くすために細かなルールを設けたがために複雑化したのだと思われます。

 とはいえコンセッションが推しのチーム(メーカー)に不利に影響している、と感じるケースもあるかもしれません。コンセッションは単なるハンデや優遇ではなく、下位チームが力をつけることで、よりレースが面白くなり、全体として技術的に底上げされていく……と受け止めるのが良いのではないでしょうか。

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Writer: 伊藤康司

二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。

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