空冷2ストロードスポーツの決定版!? ヤマハ「RD250」が採用した独自のトルクインダクションシステムとは
ヤマハの2&4戦略の片翼を担った「RD250」(1973年型)は、トルクインダクションなど独自の新技術を採用し、オイルショックの厳しい時期にも2ストロークスポーツの流れを止めずに「RZ250」の大ヒットへ繋げました。
レプリカブーム以前の2ストエンジン車の名機
ヤマハ「RD250」は、1973年に発売された空冷2ストロークエンジンを搭載したスポーツバイクです。デビューは前年の東京モーターショーでした。この時、4ストロークDOHC8バルブエンジンの「TX500」も同時に登場しており、ここからヤマハの2&4スポーツラインナップが充実して行くことになります。
「RD」という車名は、1964年から2年連続ロードレースGPで世界タイトルを獲得した、ヤマハのレーシングマシン「RD56」を連想させる栄光の頭文字です。国内では「RZ」シリーズへと車名が変わった後も、海外では「RD」の車名が使用されており、「RZV500R」も「RD500LC」という車名で輸出されていました。

現代の目線で見ると、「RD250」は空冷エンジンという事でも分かる通り、まだ発展途上で新しい技術が次々と開発されている時期でもありました。
リア2本ショックではあるものの、フレームは当時のGPレーサーと同様にダウンチューブとタンクレールを2本ずつにした、高張力鋼管のフルダブルのクレードル型となっています。
エンジンには2ストローク技術を大きく進化させた、7ポートトルクインダクションと呼ばれる技術を採用しています。
2ストロークエンジンは、シリンダー内の燃焼済みの排気ガスと新しい混合気の入れ替えを繰り返しながら回転を続けています。排気ガスを追い出す新気は掃気ポートから噴出しますが、この時にシリンダーを効率良く新気で満たすことが、2ストロークエンジンの高性能化の鍵です。
「RD250」は従来の掃気ポートに加え、燃焼室付近に澱む排気ガスを追い出す新ポートも装備しています。この吸排気用の7つのポートはヤマハ独自の新システムでした。
さらにピストンの上下動で開け閉めしていた混合気の通路にリードバルブ方式を採用し、もともと2ストロークが持っていた鋭い吹け上がりに加え、現代的な低回転からトルクのある乗りやすいエンジンとなりました。
ちなみにリードバルブとは逆流防止弁のことで、ハーモニカの音を鳴らすリードと同じような構造です。

この7ポート+リードバルブ方式には「トルクインダクション」という名称で、ヤマハの2ストロークスポーツバイクのみならず、「YZR750」やモトクロスなどのレース用バイクなどにも幅広く採用されました。
また、リードバルブなどのヤマハの2ストローク技術は原付スクーターにも採用され、現在でも2026年型のモトクロスバイク「YZ250」などでも使用されています。
「RD250」はトルクインダクションと6速ミッションに加え、左右47度と深いバンク角と対向ピストンのディスクブレーキなどの装備により、軽快な走りが楽しめました。
走り以外にも、機能的なメーターやヘルメットホルダー、ロック付き燃料キャップ、さらに灯火類の充実などにも注力し、空冷時代の2ストロークスポーツバイクを代表するモデルとなっています。
ところが「RD250」発売と同時期から、第一次オイルショックなどの影響で2ストローク車は全メーカー販売台数が落ち込んでしまい、ユーザー人気は4ストローク車の方へ傾いていきました。
「RD250」は年毎にマイナーチェンジを施しながら、最終モデルはデイトナと呼ばれた外観をアップデートしたモデルでした。
1980年には、「RD250」の後継機である「RZ250」が登場し、2ストローク車の人気が再燃してレーサーレプリカブームへと繋がって行きます。
ヤマハ「RD250」(1973年型)の当時の販売価格は21万7000円です。
■ヤマハ「RD250」(1973年型)主要諸元
エンジン形式:空冷2ストローク並列2気筒
総排気量:247cc
最高出力:30ps/7500rpm
最大トルク:2.9kg-m/7000rpm
全長×全幅×全高:2040×835×1110mm
始動方式:キック式
燃料タンク容量:12L
車両重量:140kg
フレーム形式:ダブルクレードル
タイヤサイズ(前):3.00-18-4PR
タイヤサイズ(後):3.25-18-4PR
【取材協力】
ヤマハ・コミュニケーションプラザ(静岡県磐田市/ヤマハ発動機本社隣接)
※本記事中の写真は許可を得て撮影しています
Writer: 柴田直行
カメラマン。80年代のブームに乗じてバイク雑誌業界へ。前半の20年はモトクロス専門誌「ダートクール」を立ち上げアメリカでレースを撮影。後半の20年は多数のバイクメディアでインプレからツーリング、カスタムまでバイクライフ全般を撮影。休日は愛車のホンダ「GB350」でのんびりライディングを楽しむ。日本レース写真家協会会員











