酷暑日が続く日本の夏の渋滞路 バイクのエンジンは大丈夫? イメージは沸くけれど「オーバーヒート」ってナニ?

バイクやクルマのエンジントラブル「オーバーヒート」は、なんとなく語感からイメージは沸きますが、実際はどんな症状で、どんな時に起きるのでしょうか? もしオーバーヒートしたら、どうすれば良いのでしょうか?

想定以上に熱くなるから「オーバーヒート」

 たまに耳にする「オーバーヒート:overheat」は、直訳すれば「過熱」になりますが、まさに読んで字のごとく、エンジンが適正な温度を超えて過熱した状態を指します。マンガやアクション映画などでは、バイクのエンジン周りやクルマのボンネットからブシューッ! と蒸気が噴出すような描写がありますが、コレも間違ってはいませんが、とはいえ必ずしもこうなるワケではありません。

 それでは、どうしてオーバーヒートが起こるのか、どんな症状になるか、そしてオーバーヒートになった時の対応を、順に考えてみましょう。

「オーバーヒート」は語感からも「エンジンが異常に過熱しているコトかな?」とイメージできるが……
「オーバーヒート」は語感からも「エンジンが異常に過熱しているコトかな?」とイメージできるが……

 バイクのエンジン(内燃機関)は、ガソリンと空気の混合ガスが燃焼(爆発)することでパワーを生み出していますが、この時の燃焼室内の燃焼温度は2000度にも達すると言われています。

 その温度がそのままエンジンの部品(ピストンやシリンダー)に伝わるわけではありませんが(熱伝導や熱境界層などの影響。今回は割愛)、相当に高温になるのは事実で、適正に冷却する必要があります。

 そこでエンジンを冷やす手段として、空冷や水冷、他にも油冷や空油冷方式がありますが、いずれにしても設計時に想定した温度に冷却しています。

 ところが、「何らかの理由」によって想定した温度より「過熱」してしまうと、性能を発揮できないばかりか運転が困難なほど調子が悪くなったり、最悪の場合はエンジンが壊れてしまいます。これがオーバーヒートです。

走行風が十分に当たらないから……は想定済み!?

 オーバーヒートが起こる「何らかの理由」ですが、これはエンジンの冷却方式や走行している状況などが関係してきます。

 まずエンジンの冷却方式ですが、近年は水冷方式がメジャーです。エンジンのシリンダーやシリンダーヘッドの周囲に「ウォータージャケット」と呼ぶ冷却するためのスペースを設け、その中を冷却水を循環させます。そして熱せられた冷却水はラジエターによって冷やしますが、ラジエターを冷やすのは走行風、すなわち周囲の空気です。

水冷エンジンはシリンダーに冷却水を循環させて冷やし、温まった冷却水はラジエターに流して走行風で冷やす。空冷エンジンはシリンダーに設けた冷却フィンを、走行風で直接冷やす
水冷エンジンはシリンダーに冷却水を循環させて冷やし、温まった冷却水はラジエターに流して走行風で冷やす。空冷エンジンはシリンダーに設けた冷却フィンを、走行風で直接冷やす

 また昔からの空冷方式は、シリンダーやシリンダーヘッドに冷却フィンを設けることで、放熱しやすいように表面積を増やしています。その冷却フィンを冷やすのは、やはり走行風です。

 ちなみに、油冷方式や空油冷方式も、基本的には空冷方式と同じです。そして空冷や油冷、空油冷の場合は、エンジンオイルを冷やすオイルクーラーを備えている車両もあります。

 構造的に水冷方式の方が安定してエンジンを冷やすことができますが、いずれにしても冷却の元になるのは「走行風」です。そのため真夏など気温が高い時期に渋滞などに巻き込まれてノロノロ運転になったり止まったままになってしまうと、まともに走行風が当たらずにエンジンを十分に冷やすことができなくなって、オーバーヒートを起こす可能性があります。

 ……が、ここまで解説しておいてナンですが、真夏の気温や渋滞などの状況は、バイクメーカーはエンジンを設計する際に、当然ながら想定しています。

 真夏の渋滞と言っても、パワーの少ない小排気量車で荷物満載で急な上り坂を……というような、よほど悪条件が重ならなければ、オーバーヒートにはならないでしょう。

 またエンデューロレースやハードな林道走行などでは、泥や穴に埋まった状態から脱出できずに後輪が激しく空転しているような状態だとオーバーヒートするようですが、これは通常の走行と比べるとかなり特殊な状況なので、一般的な症状ではありません。

 開発技術が現代よりずっと低く、交通事情が現在と大幅に異なる時代の旧車ならともかく、近年(この30~40年くらい?)に生産されたバイクなら、滅多にオーバーヒートはしないと思われます。……が、それはバイクがきちんとメンテナンスされている状態の話です。

 たとえば水冷エンジンの場合、冷却水(クーラント)が規定量入っていなければオーバーヒートする可能性は高いでしょう。またラジエターの冷却フィンが曲がって潰れていたり、泥汚れで目詰まりしていると冷却能力が低下します。他にも、ラジエターのサーモスタットバルブ(水温によってラジエターを通したりバイパスする弁)に不具合があったり、電動ファンが正しく稼働しない場合も然りで、経年劣化で冷却経路が汚れやサビで詰まって冷却水の流れが悪くなっている場合も同様です。

 また、ラジエターキャップが劣化して耐圧性能が落ちている場合も、冷却水が沸騰しやすくなるためオーバーヒートを起こします。

 空冷エンジンの場合は構造がシンプルなので、水冷のような多様な原因はありません。しかしエンジンオイルが劣化していたり、規定量入っていないとオーバーヒートしやすくなります。

 また、オイルクーラー装備車なら、ラジエター同様に冷却フィンの潰れや目詰まりによる冷却性能の低下も考えられます。

 というワケで、比較的近年に生産されたバイクがオーバーヒートを起こしたら、多くの場合はメンテ不足や「故障」が原因と考えられます。

オーバーヒートの症状は?

 原因はともあれ、もしオーバーヒートしたらどんな症状が現れるのでしょうか?

 水冷エンジンの場合、前述のような「エンジン周りから水蒸気がブシューッ!」は、かなり末期的な症状で、その前に予兆があります。水温計の表示がレッドゾーンに入ったり、数字ではなく「Hi」と表示されたら危険な状態です。

 他にも、エンジン周りがモワッといつもより発熱しているように感じたり、なんとなく甘い匂い(冷却水が漏れると匂う)がすることもあります。

 体感的には加速力が鈍ったり、発進時にエンストしやすくなるなど、トルクの減少を感じるかもしれません。またエンジンからカリカリといったノッキングする音が聞こえる場合もあります。

 そして空冷エンジンの場合は、発進時や加速時のトルクの低下や、エンジンのカリカリ音が水冷エンジンよりも顕著で、停車時にアイドリングが不安定になって勝手にエンストすることもあり、明らかに不調に感じます。

 また水冷エンジンの冷却水漏れのような甘い匂いはしませんが、普段の排気ガスとは異なる「焦げた匂い(エンジンオイルが燃える匂い)」がすることもあります。

 もしこれらの予兆を感じたら、「なんか調子悪いな~」と思いながら乗り続けるのは止めましょう。

とにかく冷やしてレッカーも選択肢に

 オーバーヒートの予兆を感じたり、水温計が異常値を表示したら、まずは安全な場所で、できるだけ涼しい日陰などに車体を置いて、エンジンを止めましょう。何よりエンジンを冷やすことが重要だからです。

 とはいえ水をかけて急冷するのはNGです。高熱で膨張しているエンジンに水をかけると、そこだけが局所的に冷やされるため熱歪みを起こしたり、最悪の場合は温度差(膨張と収縮)で割れてしまうからです。

 エアコンが効いた涼しい室内に入れるとか、扇風機で風を当ててエンジンを冷やすのが理想ですが、路上でそんな場所や扇風機はほぼ無理ので、可能な限り涼しい日陰などに停めて、できれば団扇(うちわ)のようなモノでエンジンに風を当て冷やすのが得策でしょう。

 ちなみにオーバーヒートの原因のひとつに、水冷エンジンの場合は冷却水の減少を挙げましたが、冷却水の量はリザーバータンクではなく、ラジエターキャップを開けて確認する必要があります。しかしエンジンを止めた直後の冷却水は100℃を超える高温で、かつラジエター内は圧力が高くなっていおり、その状態でラジエターキャップを開けると冷却水が噴出して火傷するなど猛烈に危険なので、絶対にやめましょう!

 もしラジエターキャップを開けるなら、エンジンが素手で触れるくらいまで冷えてからにしましょう(真夏なら1時間以上かかるかも……)。

 そしてエンジンが冷えたらどうするかは判断が難しいところで、問題なくエンジンが始動して安定したアイドリングで、水温計の表示も適正、そして渋滞が解消しており、日が陰って気温も下がってきたような道路状況なら、走り出して大丈夫かもしれません。

 とはいえ前述したように、近年のバイクでオーバーヒートを起こすのは、多くの場合は何らかの故障です。エンジンを再始動してアイドリングが不安定だったり、水温系が異常値を示したり、道路が渋滞したままだったら、走り出したら再びオーバーヒートして、エンジンを傷めてしまう可能性があります。

 また仮にオーバーヒートの原因を特定できたとしても、その場で適正に対処(修理など)できるとは限りません。

 少しでも不安要素があったら、そのまま走らずにレッカーを呼んでバイクショップまで運んでもらうのが、正しい判断かもしれません。

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Writer: 伊藤康司

二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。

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