“軽さは正義!?” じつは燃えやすく加工が難しい「マグネシウム合金」 結構昔からバイクにも使われている?
「マグネシウム」と聞くと、「骨粗鬆症や糖尿病に影響する大切な栄養素」とイメージするのが一般的かもしれませんが、バイクにおいてはレーシングマシンに不可欠な超軽量素材になります。レース用のホイールで有名ですが、昔から他の場所にもけっこう使われているのです。
GPマシンのホイールだけじゃない?
「マグネシウム」は、アルカリ土類金属のひとつで、原子番号12の元素……と言われてもピンとこないかもしれませんが、「MotoGPマシンのホイールに使われている、超軽量な素材」と言われると、なんとなく納得できるのではないでしょうか。
バイクのパーツでよく使われる軽量な金属の代表がアルミニウム合金ですが、マグネシウム合金の比重はアルミニウム合金の約2/3、鉄の約1/4.5なので、実用金属の中では圧倒的に軽量です。
そのためスポーツバイク、中でも「軽さは正義」のレーシングマシンには、マグネシウム合金が多用されています……と言いたいところですが、実はそうでもありません。

じつは燃えやすく腐りやすい!?
マグネシウム合金の比強度(材料の強さを密度で割った値)は、アルミニウム合金よりやや劣りますが、それでも圧倒的な比重の軽さを誇ります。そのため近年では一眼レフカメラのボディや、スマートフォンやノートパソコンの筐体にも使われる例もあります。
しかしマグネシウム合金には欠点もあり、一番は「燃えやすい」ところでしょう。年配の人なら記憶があるかもしれませんが、昔(大昔)はカメラで撮影する際に、室内など暗い場所ではフラッシュを焚きましたが、これはマグネシウムの粉末に着火することで、爆発的に燃焼して強い光を放つ仕組みでした(フラッシュのバルブは1回ごとの使い捨て)。
もちろんフラッシュのマグネシウム粉末と、近年のマグネシウム合金では異なりますが、部品として成型する際に切削作業を行うと、とくに切削による微細な粉塵が摩擦熱で発火する危険があります。
そして発火したマグネシウムを消火しようと水をかけると、マグネシウムが水と反応して発熱・発火するため、特殊な消火砂や薬剤が必要になります。
また、マグネシウムは曲げにくい(折れやすい)性質があるため、プレス加工などにも適しません。
要するに、加工の難易度がかなり高く、多くの部品が鋳造で製作されています。近年は、素材の進化や加工技術の進歩でマグネシウム鍛造ホイールも存在しますが、この加工を行えるメーカーや工場は、まだ少ないようです。
またマグネシウムは腐食しやすいため、防錆処理(表面処理)が必要になります。これも使用箇所(部品の種類)のハードルを上げている一因かもしれません。
なんと、ヤマハ「XT500」が採用!
マグネシウム合金は超軽量というメリットがありながら、加工の難易度や腐食しやすさなどから、クルマやバイクで使われたのは1950年代の4輪レーシングカーのホイールで、バイク用のマグネシウム合金のレーシングホイールが登場したのは1970年代です。
市販車への採用は、国内だと「トヨタ2000GT」(1967年)のマグネシウムホイールがかなり早期だと思われます。

そしてバイクでは、ホイールではなくヤマハのトレールモデル「XT500」(1976年)がマグネシウム合金のクランクケースカバーを装備しています。とにかく1gでも軽量化しようとマグネシウム合金を採用したそうですが、「トヨタ2000GT」はトヨタとヤマハの共同開発なので、その辺りも関係しているのかもしれません。
その後も市販車にはマグネシウム合金のパーツはなかなか採用されませんでしたが、1988年にホンダが発売した「NSR250R SP」に、量産市販バイクで世界初となるマグネシウム製ホイールを標準装備しました。
従来のアルミ合金製ホイールと比べて、前後輪で約1.5kgの軽量化を達成し、バネ下荷重の軽減による路面追従性の向上を果たしました。
そしてカワサキのスーパースポーツモデル「Ninja ZX-10R」は、初代の2004年モデルからエンジンカバー類にマグネシウム合金を採用しています。
またヤマハは2008年発売の「YZF-R6」でマグネシウム合金製のリアフレームを採用しており、「YZF-R1」も2015年モデルからリアフレームに加えて自社製のマグネシウム鋳造ホイールを装備しています。
ホンダは2017年の「CBR1000RR」の左側エンジンカバー、およびオイルパンをマグネシウム合金製にするとこで軽量化を図りました。
マグネシウム合金は、燃えやすく腐食しやすいデメリットがありますが、近年は難燃性や耐腐食性を高めた新たなマグネシウム合金も登場しているようです。
まだコスト的なバランスが難しいようですが、他の金属部材から変換して軽量化を図るだけでなく、プラスチック部品と変えて高強度化を図る可能性もある……と言われています。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。











