BMWが「鈴鹿8耐」の歴史を塗り替えた!! ドイツ本国から来日したCEOもチームを称賛 本人が語る次なる挑戦……MotoGPへ!?

2026年の「鈴鹿8耐」では、BMWのファクトリーチーム「BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM」が総合3位を獲得。海外ブランドとして大会史上初の表彰台という歴史的快挙を成し遂げました。レース翌日、このために来日していたBMW Motorrad CEO(ドイツ本社・モトラッド最高責任者)のマーカス・フラッシュ氏と、モータースポーツ部門の責任者であるスヴェン・ブルッシュ氏をバイクジャーナリストの青木タカオさんが直撃。鈴鹿の快挙だけでなく、MotoGP参戦の可能性についても話を伺いました。

日本メーカーの“聖地”鈴鹿でBMWが歴史を動かした!

「2026 FIM世界耐久選手権 “コカ・コーラ” 鈴鹿8時間耐久ロードレース 第47回大会」(2026年7月3~5日)で、BMW Motorradが歴史に名を刻みました。

 暑さと梅雨特有の高い湿度、そして刻一刻と変化する路面コンディション。世界屈指の過酷な耐久レースとして知られる「鈴鹿8耐」で、BMW Motorradの公式ファクトリーチーム「#37 BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM」が、並み居る国内メーカーのワークス勢を相手に堂々たる走りを披露。見事、総合3位表彰台を獲得したのです。

 1978年の初開催以来、長年にわたり日本メーカー勢が中心となって激闘を繰り広げてきた「鈴鹿8耐」に、海外ブランドであるBMWが風穴を開けた今回の快挙は、まさに歴史的な出来事と言えるでしょう。

 これまでは、マシンの耐久性や日本特有の高温多湿な環境への適応力などから、日本メーカー勢が優位に立ってきました。しかしBMWは、最新鋭のスーパースポーツモデル「M 1000 RR」の高いパフォーマンスに加え、世界耐久選手権(EWC)で積み重ねてきた経験と技術力を武器に、その常識を覆す結果を残しました。

 さらに、BMW陣営の「オートレース宇部 Racing Team」も総合5位に入賞。オープニングラップを制するなど、「M 1000 RR」が日本車勢を相手に高い戦闘力と耐久性を証明し、その実力を強く印象づけました。

BMW本社首脳を直撃! 「鈴鹿8耐」そしてMotoGPについて!!

 レース翌日、ドイツのBMW本社から来日したBMW Motorrad CEOのマーカス・フラッシュ氏と、モータースポーツ部門の責任者であるスヴェン・ブルッシュ氏を、BMW GROUP Tokyo Bay(東京都江東区青海)で開催された記者会見後に直撃。筆者(青木タカオ)は単独インタビューのために用意された別室で、BMWが見据える近い将来について話を聞きました。

2026年の「鈴鹿8耐」に向けて来日したBMW Motorrad CEO マーカス・フラッシュ氏にインタビュー
2026年の「鈴鹿8耐」に向けて来日したBMW Motorrad CEO マーカス・フラッシュ氏にインタビュー

「日本人は情熱と規律を両立している」

 まず印象的だったのは、BMW Motorrad CEOであるマーカス・フラッシュ氏が語った日本への印象です。

 ──昨日はボクも鈴鹿サーキットでレースを観戦していました。マーカスさんにとって、今回が初めての鈴鹿8耐観戦だったとうかがっています。第一印象はいかがでしたか?(青木)

 マーカス・フラッシュ氏は少し笑みを浮かべながら、こう答えました。

「日本の皆さんはパッション(情熱)とディシプリン(規律)という、一見相反するふたつを見事に両立しています。鈴鹿ではファンの皆さんがライダーを熱狂的に応援する一方で、すべてのチームに敬意を払っていました。それが非常に印象的でした。」

 さらに、こう続けます。

「47年の歴史を持つ鈴鹿8耐で、輸入車ブランドとして初めて表彰台に立てたことを大変嬉しく思います」

MotoGPは……? 核心へ迫る!!

 独占インタビューに与えられた時間は長いものではありません。「鈴鹿8耐」での3位入賞、そして日本への印象について話を聞いたところで、話題はBMW Motorradの未来へ……今回、どうしても尋ねておきたかったテーマへと踏み込むことにしました。

 BMWは世界耐久選手権(EWC)でも、スーパーバイク世界選手権(WSBK)でもトップ争いを繰り広げ、「M 1000 RR」はその高い戦闘力を世界で証明しています。

 ならば次なる舞台として、ロードレース最高峰のMotoGPはどうなのか? なぜBMWはMotoGPに参戦していないのか? 以前からずっと気になっていた疑問を、思い切って問いかけました。

2026年の「鈴鹿8耐」で、BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMが大会史上初となる海外ブランドとして表彰台に立った(総合3位)
2026年の「鈴鹿8耐」で、BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMが大会史上初となる海外ブランドとして表彰台に立った(総合3位)

 ──2027年にはMotoGPのレギュレーションが変わります。BMWにとって、新規参戦への絶好のチャンスではありませんか?(青木)

 マーカス氏はうなずきながら、こう切り出しました。

「その質問は世界中のジャーナリストから受けます。BMWにとって、モータースポーツはDNAです。その最高峰であるMotoGPには、いつか参戦すると考えています」

 参戦時期については明言しませんでした。しかしCEO自ら「いつか参戦する」と、口にした意味は、決して小さくありません!

 BMW Motorradが、MotoGPを現実的な将来像として捉えていることが分かったのです。

歴史的3位は通過点……その先に見据えるものは!?

「これはゴールではなく、始まりです」

 BMW Motorradドイツ本社モータースポーツ責任者のスヴェン・ブルッシュ氏にも質問をぶつけました。返ってきた答えは、興味深いものでした。

 ──どうして、BMWはMotoGPへ参戦していないのでしょうか?(青木)

2026年の「鈴鹿8耐」に向けて来日したHead of BMW Motorrad Motorsport スヴェン・ブルッシュ氏にも質問をぶつける筆者(青木タカオ)
2026年の「鈴鹿8耐」に向けて来日したHead of BMW Motorrad Motorsport スヴェン・ブルッシュ氏にも質問をぶつける筆者(青木タカオ)

「私自身は前向きに考えています。ただし、MotoGPは全く異なるカテゴリーです。市販車ベースではなく、レース専用の特別なマシンを開発し、あらゆる調整をしなければなりません。私たちは7年から10年というスパンで計画を立てています。その中で最適なタイミングを見極めているのです」

 なんと、「7~10年」という具体的なビジョンまで聞けました! これは、大きな収穫です。

 もちろん、今回の「鈴鹿8耐」についても尋ねました。

「昨年、鈴鹿8耐を観戦して、これは素晴らしいと思いました。伝統があり、ファンはレースをよく知っていて、チームやライダーをリスペクトしています。欧州にも歴史のあるレースはたくさんありますが、鈴鹿もまたそうであると思います」

 さらに、スヴェン氏は穏やかな口調で、こう振り返ります。

「今年の鈴鹿8耐は、マーカスCEOも一緒に行こうと誘いました。歴史的な表彰台を見ることができました」

 そして力を込めて、こう語りました。

「これはゴールではありません。始まりに過ぎません」

 その言葉には、BMW Motorradの今後へのすべての想いが込められているように感じます。表彰台は通過点……その先には、世界の頂点があるのです。

「鈴鹿8耐」での表彰台3位という結果だけでも十分に歴史的と言えるでしょう。しかし今回、2人へのインタビューで感じたのは、BMW Motorradはこの結果にまだ満足していないということです。

最後に飛び出した逆質問

 インタビューを終えて、マーカス・フラッシュ氏、そしてスヴェン・ブルッシュ氏と、それぞれ記念写真を撮らせていただきました。

 すると、隣に立ったスヴェン氏が、ふとこんな質問を投げかけてきたのです。

「BMWが鈴鹿8耐で表彰台に立ったことを、あなたはどう思いますか?」

例年より開催時期が1カ月近く早めに設定された2026年の「鈴鹿8耐」は梅雨時期と重なり、終始ウエット路面。終盤は激しい降雨によりペースカーが入ったままゴールの19:30を迎えた
例年より開催時期が1カ月近く早めに設定された2026年の「鈴鹿8耐」は梅雨時期と重なり、終始ウエット路面。終盤は激しい降雨によりペースカーが入ったままゴールの19:30を迎えた

 思いがけない逆質問でした。筆者はこう答えました。

「かつてMotoGPは日本メーカー勢が席巻していましたが、今では欧州ブランドがトップ争いを繰り広げています。だからこそ『いよいよ鈴鹿8耐も、その時代が来るのかもしれない』と率直に感じました。さまざまなメーカーが切磋琢磨することでレースシーンはさらに盛り上がり、鈴鹿8耐の人気回復にもつながるはずです。そんな熱い戦いを、日本のファンはきっと望んでいるのではないでしょうか。MotoGPも期待しています!!」

 そう答えると、スヴェン氏は深くうなずき、静かに笑みを浮かべました。

 彼らが見据えるのは、「鈴鹿8耐」での優勝。そしてさらに、MotoGPという世界最高峰への挑戦です。3位表彰台は快挙であると同時に、新たな物語のプロローグでもあるのです。

【画像】ドイツ本国からトップ来日!! 「鈴鹿8耐」で快挙を成し遂げたBMW Motorrad陣営を画像で見る(18枚)

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Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。

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