「あったら面白そうなのに……」リッタースーパースポーツ由来の高性能エンジンを積んだバイクとは
ワールドスーパーバイク(WSBK)など本格レースに使われるリッター(1000cc)スーパースポーツモデルの高性能エンジンを、他ジャンルのバイクにも搭載したら魅力的なのに……と夢想するライダーもいると思いますが、じつは少なからず存在し、大人気のあのバイクも……!?
スーパースポーツの最強エンジン
スポーツバイクには様々なカテゴリーがあり、エンジンにも色々な形式や排気量がありますが、こと動力性能(最高出力)で比べたら、本格レースに使われるスーパースポーツ(SS)車の排気量1000cc(リッター)クラスのエンジンが最強と言えるのではないでしょうか。
もちろんバイクの魅力はパワーだけではありませんが、その「最強エンジン」を、ネイキッド車など他のカテゴリーのバイクに積んだら面白いんじゃないか……と想像するライダーも少なくないと思います。
そこで、リッタースーパースポーツ由来のエンジンを搭載する国産バイクを紹介します。

ホンダは「CBR1000RR」のエンジン
ホンダのスーパースポーツと言えば、現行モデルでは「CBR1000RR-R FIREBLADE」ですが、その前身となるのが2004年に発売された「CBR1000RR(SC57型)」です。
当時のスーパーバイクレースのレギュレーション(4気筒エンジンの最大排気量が750ccから1000ccに変更)に合わせて登場しました。
そして「CBR1000RR(SC57型)」をベースとした並列4気筒エンジンを搭載したスポーツツアラーの「CBF1000」が2006年に発売されました。……が、輸出専用モデルだったためか、あまり話題になりませんでした。

それからしばらく間を置きますが、やはり「CBR1000RR(SC57型)」エンジンがベースの、「NEO CAFE」コンセプトの「CB1000R」が2018年に発売されます。こちらは国内でも販売されたので、目にしたライダーも多いのではないでしょうか。
そして2017年発売の「CBR1000RR(SC77型)」のエンジンをベースにした、ストリートファイタースタイルの「CB1000ホーネット」が2025年に国内販売を開始します。
そしてこのバイクが、海外で先行して販売されていた頃から噂が飛び交っていたモデルがついに登場! かつての「CB750F」をオマージュした「CB1000F」で、2026年春のモーターサイクルショーでも大きな注目を浴び、カスタム車も多数出品されました。
さらに「CB1000ホーネット」をベースとしたスポーツツアラーの「CB1000GT」が、EICMA2025や2026年春のモーターサイクルショーで展示されましたが、こちらも元を辿れば、「CBR1000RR(SC77型)」のエンジンです。
ヤマハ「YZF-R1」のエンジンはバイク以外にも!?
現代のリッターSSの基礎を作ったのが、ヤマハが1998年に発売した「YZF-R1(4XV型)」ではないでしょうか。4ストローク並列4気筒エンジンは、当時のロードレースの最高峰であるGP500クラスの2ストローク500ccのレーシングマシンに迫る最高出力150PSを発揮しました。
また「YZF-R1」のエンジンは、ヤマハならではの1気筒当たり5バルブで、進化・熟成を重ねながら2006年の「5VY型」まで続きました。

このエンジンを搭載したのが、2001年発売の「FZS1000フェーザー」で、2006年にはモデルチェンジに合わせてネイキッド版の「FZ1」も登場しました(いずれも輸出モデル。車名が仕向け地によって「フェーザー」と「FZ1」が混同するので少々複雑)。
両モデルともに2008年からは国内販売も始まりましたが、最高出力はかなり抑えられていました。
そして面白いのが、ヤマハは「YZF-R1」のエンジンを母体に、スノーモービル用エンジンとマリンジェット用エンジンを作り、それぞれを2002年に発売しています。
「YZF-R1」は性能重視のスーパースポーツ車だけにモデルチェンジを重ねてきましたが、2015年モデルではエンジンやシャシーはもとより、多岐に渡る電子デバイスの搭載などで大変身を遂げました。
その「YZF-R1」をベースに、2017年に登場したのがスポーツネイキッドの「MT-10」です。その後も「YZF-R1」の進化に合わせ、「MT-10」もモデルチェンジを重ねて現行モデルに至ります。
スズキは名機「K5」が大活躍!
スズキのリッタースーパースポーツと言えば「GSX-R1000」で、2001年の登場以来、現在まで進化を重ねています。欧米では販売されていますが、国内ラインナップからはしばらく外れていました。
そして2026年7月、大幅に改良された「GSX-R1000R」が登場し、ついに国内販売の正式な発表がありました(2026年7月17日発売)。
そんな「GSX-R1000」の中でも、いまだ名機と謳われるのが2005年登場の「K5型」です。エンジンのリファインでパワーアップし、コンパクト化によって車両重量を軽減しただけでなく、乗りやすさを追求してシート高を前モデルより20mmも下げて足着き性を大幅に向上したところなども大きく評価されました。

そして「K5」をベースに生まれたのが、2015年発売のネイキッド「GSX-S1000」と、フルカウル装備の「GSX-S1000F」です。
「GSX-S1000」は2012年にモデルチェンジし、「GSX-S1000F」は2022年に「GSX-S1000GT」へとシフトして、ハイスピードツアラー色を強めています。
さらに2023年には、スズキ初の電子制御サスペンションを装備し、世界的に人気の高いアドベンチャースタイルの「GSX-S1000GX」もラインナップに加わりました。
そして忘れてはならないのが、2019年に発売された「KATANA」です。こちらもベースは「K5」……と言うか、「GSX-S1000」をベースに、スズキのレジェンドとも言える「GSX1100S KATANA」を現代に蘇らせたバイクになります。
最高の技術が投入されたエンジン
というワケで、スーパースポーツ車由来のエンジンを搭載する国産バイクは、現行モデルではホンダ「CB1000ホーネット」と「CB1000F」、ヤマハ「MT-10/SP」、スズキ「GSX-S1000」シリーズと「KATANA」になり、決して多いとは言えません。
そして全車に共通するのが、ベースはスーパースポーツのエンジンでも、各車のジャンルに合わせた味付けがシッカリと成されている所です。
スペックを見ると、ベースとなるスーパースポーツ車より最高出力が相応に下がっているため、ともすると性能を落とした「デチューン」と呼ばれることもありますが、バイクとしての立ち位置が異なるので、それは当てはまらないと言えます。
そして最高出力が抑えられているとはいえ、そもそもスーパースポーツ車のエンジンは、その時代にメーカーが持てる最高の技術を投入して作られており、それをベースとしている所に大きな価値があるのではないでしょうか。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。




















