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“自由な発想”と“創造性”を具現化する情熱 チョッパーの基本が詰まったインドネシアのチョッパー

世界最大級のバイク大国として知られるインドネシアでは、現在、カスタムバイクに熱い視線が注がれています。ここでは、同国のジョグジャカルタで開催されている複合型バイクイベント「カスタムフェスト」や日本の「ヨコハマ・ホットロッド・カスタムショー」でその姿を披露したインドネシア製のカスタムバイクに迫ります。

ジャパニーズ・シングルをベースにした個性あふれるチョッパー

 排気量の大小やメーカーを問わず、様々なベースを用いてカスタムが生み出されるインドネシアのチョッパー・シーン……そのカスタムショーの会場の中では日本製のシングル・モーターやツインモーターのクランクケース、およびクランクに手を加え、シリンダーを増設したハンドメイド・エンジンを見かけることが度々あります。

パッと見はオーソドックスなチョッパーながら、ディテールをつぶさに見ると様々な意匠が凝らされたこのマシン。造り手の情熱を感じる佇まいです

 インドネシアでは、チョッパー・ベースの王道である“ハーレー・ダビッドソン”の価格が日本の2~3倍するため、少しでも手に入りやすいジャパニーズ・シングルを改造し、それが独自の形で発展してきたことが伺えるのですが、中には更にシリンダー数を増やした3気筒や飛行機などに搭載される星型エンジン、ハンドメイドの水平対向エンジンのマシンなども目にすることがあります。

 まるでマッド・サイエンティストの如く、過去にも、そうした摩訶不思議なエンジンを生み出してきたPsycho EngineというショップのYusuf Adibというビルダー、その彼が2018年、インドネシアのジョグジャカルタで開催されたバイク・イベント「カスタムフェスト」と日本のムーンアイズが主催する「ヨコハマ・ホットロッド・カスタムショー」で披露したのがオリジナルの3気筒エンジンを搭載する一台です。

ホンダGL100をベースに徹底的にカスタム

 インドネシアの中で一般的に流通する1976年式のホンダGL100をベースにし、そのエンジンを3つ掛け合わせることで、このマシンではいわば“W型”の外観とされたモーターが搭載されているのですが、それは当然、Yusufの手によるハンドメイド。言うまでもありませんが、ノーマルの原型をまったく留めていないものとなっています。

1976年式のホンダGL100のエンジンにシリンダーを追加して3気筒化。まるで血管のように車体に沿うエキゾーストはPsycho Engineによるチタン製。

 また生き物の血管のように複雑な曲線を描くマフラーもワンオフで製作されているのですが、ここは細かいピースのパーツを溶接でひとつ、ひとつを繋ぎ合わせ、複雑な曲線を実現したチタン製。おそらくはパイプを曲げる機械である「パイプベンダー」では実現が難しい複雑な曲線ゆえの措置であることが想像出来ますが、その作業の細かさは感服すべきものです。

 無論、この超個性的なエンジンを搭載するフレームもワンオフで製作されたもので、ネックからエンジン下部、リア周りにかけてステンレス材のシングルパイプで構成されています。ステンレス材は一般的な炭素鋼(鉄)と比較すると溶接の技量が要求されますが、こうした高いクオリティをキープしている点も驚くべきポイントです。

“自由な発想”と“創造性”を具現化する情熱

 またエンジンのみならず、フロントのスプリンガーフォークにおいても、このマシンでは片持ち方式を採用しており、独特の個性に拍車をかけています。こうした箇所もチョッパーというカスタム・カルチャーに求められる“オリジナリティ”や“クリエイティビティ”を強く感じさせる部分です。

シリンダーにはミクニ製キャブを三連で装着。ミッションはGL100のストックをそのまま使用する。

 たとえばエンジンの3気筒化やフロントフォークの片持ち化などに性能的なアドバンテージは正直、ないと言えるでしょうが、“唯一無二のもの”を求めることもチョッパーというカルチャーの基本理念のひとつです。

 1950年代に産声をあげ、1970年代に黄金期を迎えたハーレー・ダビッドソン・ベースのチョッパーの場合、既にスタイルや手法が確立され、豊富なカスタムパーツが存在するゆえ、決まった“テンプレート”に則ったような車両が生み出されがちですが、インドネシアの中型排気量のチョッパーに強く感心させられるのが、“自由な発想”と“創造性”、そしてそれを具現化する“情熱”です。

 あえていえば、カスタムの素材となるベースマシンが流通する状況も、それを造り上げる為の工作機械も不利な状況にあるインドネシアという国ですが、70年代のアメリカがそうであったように、パーツも満足になく、ディテールを手作りで形にする“創意工夫”が求められるシチュエーションにあるからこそ、このチョッパーは生々しい雰囲気を放つのかもしれません。

【了】

“自由な発想”と“創造性”が詰まったインドネシアのカスタムバイク

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Writer: 渡辺まこと

ハーレーや国産バイクなど、様々な車両をベースにアメリカン・テイストのカスタムを施した「CHOPPER」(チョッパー)をメインに扱う雑誌「CHOPPER Journal」(チョッパージャーナル)編集長。カスタム車に限らず、幅広いバイクに対して深い知識を持つベテラン編集者。

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