ジャケットを“後ろ前”で着るのはなぜ? マレーシアの首都クアラルンプールで見た交通事情とは
国民の3人に一人がバイクを保有するマレーシアは、日本と同じく左側通行ですが交通事情が大きくことなります。いったいどのようなルールになっているのでしょうか。
マレーシアの首都、クアラルンプールで見た現地の交通事情とは
日本では2006年に道路交通法と駐車場法が改正され、それ以降、“気軽なアシ”としての役割から“休日に乗る趣味の乗り物”という存在になった感のあるバイクですが、東南アジア諸国に目を向けると、まだまだ元気いっぱいに日常のアシとして活躍しています。
JAMA(一般社団法人 日本自動車工業会)が発表した統計データによると、日本でのバイク保有率は人口11人に対して1台ですが、マレーシア、インドネシア、タイでは国民の3人に1台という結果になっています。しかし、現地での光景を見ると、そうした数字的なもの以上により大きな隔たりがあるように感じられるのが正直なところです。
実際、ここで紹介するマレーシアという国では市民のアシとして、バイクが当たり前のように浸透しているように思えます。筆者(渡辺まこと)が最初にマレーシアを訪れた11年前、2008年の時点から比べると自動車の普及が進み、街中を走るバイクの数が少なくなっているような印象を受けますが、しかし、現在でも首都、クアラルンプール界隈では日本の感覚では信じられないほどに多くのバイクが元気一杯に走り回っています。
日本と大きく異なるマレーシアの交通ルール
現地で開催されるカスタムイベントであるアート・オブ・スピードを主催するAsep Ahmad Sastrawidjaja氏に話を聞くと街中での速度制限は時速90km/h(病院や学校の周りは30km/h)とのことですが、クアラルンプールは交通渋滞も多い為、そこまで飛ばしている人が多いという印象がありません。
ちなみに道路には場所によってカマボコ型の“ロードバンプ”が設置されている為、あまり調子に乗ってトバしていると思わぬ事故に遭遇するかもしれません。在マレーシア日本大使館の注意喚起によるとバイクの交通事故が多発し、死亡事故率はタイ、ベトナムにつぎアジアで3位とのこと。またバイクとクルマの事故が発生した際、停車中の車両への追突や酒酔い運転などの特殊な場合を除いて、ほとんどのケースではクルマが100%の過失割合になるというのも驚きです。
そうしたことが要因となってか、マレーシアのバイク利用者はクルマの間をぬって走る“スリ抜け”が当たり前。信号待ちの際は、ズイズイと皆が前へ、前へと出てくるのですが、ほとんどの車両が125ccクラスなので筆者個人の感想としては、あまり危険という印象は受けません。
筆者は過去にマレーシアをバイクで走ったことがありますが、慣れてさえしまえば現地の交通事情は、それほど恐ろしいという印象がなかったのが正直なところです。また街や高速道路をバイクで走ってみても日本と同じ左側通行ゆえ、さほど違和感を感じなかった記憶もあります。
もちろん、現地の人間に先導され、一日ツーリングした程度で、すべてを分かったように語るべきではありませんが、在マレーシア日本国大使館がホームページで「多数のオートバイが傍若無人に走行しており注意が必要」と警告を促すほどではないように思います。
実際に街中を走っている車両も125ccクラスのものがほとんどで250ccクラスでも稀。時折、ハーレーなどの大排気量車を街中でも見かけますし、イベント会場などに行くとかなり数も多いのですが、日常のクアラルンプールを見る限り現実的には極少数派といえそうです。
なぜジャケットを“後ろ前”に着る?
また街中を走っているバイク乗りを見ると何故かジャケットを“後ろ前”に着ている人が多いのですが、現地在住のAsep氏に聞いたところ、コレは「太陽の光から腕を守る為」であり、「後ろを開いた方が涼しく」「雨も短時間しか降らないので背中が濡れない」という理由からとのこと。比較的、年配の人が“後ろ前ジャケット”だった印象だったのですが、これもマレーシア独自のローカルの風景かもしれません。
ともかくバイクという乗り物が人々の生活の中に溶け込み、社会の中で認知されている印象のマレーシア。駐車場の問題や社会的な認知度、立場など現在の日本のバイクを取り巻く環境を対比して考えると正直、個人的には羨ましい限りです。
【了】
Writer: 渡辺まこと(チョッパージャーナル編集長)
ハーレーや国産バイクなど、様々な車両をベースにアメリカン・テイストのカスタムを施した「CHOPPER」(チョッパー)をメインに扱う雑誌「CHOPPER Journal」(チョッパージャーナル)編集長。カスタム車に限らず、幅広いバイクに対して深い知識を持つベテラン編集者。