「カモメ型」ハンドルにバックモニター搭載!? レトロとハイテクが融合したカスタム・カブの魅力とは
ホンダのベストセラーモデル「スーパーカブ」をベースにしたカスタムは国内のみならず、アジア諸国でも高い人気を誇っています。ここではそうしたカスタムの中でも優れた完成度を持つ『モトガレージ・ライフ』の一台に迫ります。
1964年式スーパーカブ『C65』をベースにした珠玉の出来栄えのカスタム・マシン
1958年の『C100』の販売を皮切りに、現在まで世界累計で1億超の台数が製造されているホンダ『スーパーカブ』シリーズですが、2018年9月には新機種となる『C125』が発売され、年間予定販売台数の3000台を大幅に上回る受注を記録しています。また、2019年10月25日から行われる東京モーターショーでも、かつての『ハンターカブ』を彷彿とさせるコンセプトモデル『CT125』の発表を控え、益々、その人気は高まりを見せているようです。
もちろん、そのカブを本来の目的どおり、実用的に使うのも良いのですが、『何も描かれていないキャンバス』の如くカスタムの素材として見ても、じつは『イジりやすい』という側面を、このモデルは持ち合わせています。
実際、これまで、その累計の販売台数からもお分かりのとおり、プロ・アマ問わず多くのビルダーが『スーパーカブ』をベースにカスタムを生み出してきましたが、ここに紹介する和歌山の『モトガレージ・ライフ』が手掛けた一台は、その中でも特に出色の出来栄えとなっています。
1964年式の『C65』、つまりは初代OHCカブをベースにしたこのマシンは、メインフレームを前方へ大きくストレッチ(延長)することで、低く身構えたドラッグレーサーやランドスピード(水が干上がった巨大な塩湖や砂漠で行われる最高速競技)レーサーのようなフォルムとなっていますが、ステムとシート下の間にサブフレームを備え、スタイル的なアクセントを追加。
シート下のガソリンタンクを左右二本のサスで挟み込むような構造となった独特なソフテイル機構のリア周りと相まって、メカニカルで独創的なスタイルが実現されています。
その他、ディテールを見ても自動遠心クラッチの構造を生かしたハンドシフトや、あえて『カモメ型』のハンドルを残したフロント周り、ナショナル製のビンテージ自転車から流用したというヘッドライトなどにビルダーである釘崎仁氏の高いセンスを感じます。
バックモニターを配置した「カモメ型」のハンドル
また、中でも特に唸らされたのが本来、ハンドルのメーターが備えられた箇所にバックミラーの代わりに液晶のバックモニターを装備していた点です。
1998年にドイツの『インターモト98ミュンヘン』にて発表されたドゥカティMH900eのプロトタイプにもバックモニターが装着され、本来、オートバイにあるべきミラーを廃した姿には筆者(渡辺まこと)も衝撃を受けましたが(2000年に2000台限定で販売された市販バージョン車はバックミラー付きとなりました)、4ミニ・バイクのカスタムで同じようなアイデアを取り入れるあたりは脱帽です。
2018年9月に発売された『C125』もオールド・カブのイメージを踏襲した『カモメ・ハンドル』的なデザインとなっていますが、たとえば何年後かに、このモデルをベースにカスタムの手を加え……という個人的な妄想が、眼前のライフの一台の前では広がります。
ちなみにこのカブ・カスタムが製作されたのは今より5年ほど前なのですが、ご覧のとおり、今見てもそのスタイルは一切、旧さを感じさせません。これは、どんなジャンルのものにも言えることですが、本当に優れたカスタムには、ご覧の車両のように“時代を超越するチカラ”があるのだと思います。このモトガレージ・ライフによる一台も、まさにソレを証明する出来栄えといえるのではないでしょうか。
【了】
Writer: 渡辺まこと(チョッパージャーナル編集長)
ハーレーや国産バイクなど、様々な車両をベースにアメリカン・テイストのカスタムを施した「CHOPPER」(チョッパー)をメインに扱う雑誌「CHOPPER Journal」(チョッパージャーナル)編集長。カスタム車に限らず、幅広いバイクに対して深い知識を持つベテラン編集者。