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「POLICE」と刺繍されたTシャツを着た素人のアルバイトが道路を封鎖!! ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.16~

海外で仕事を多くする筆者(木下隆之)は、タイランドで交差点を颯爽と駆け抜けるシーンの撮影を行うことになった。そこで目の当たりにした現地の白バイ隊員のアイデアに脱帽した。

タイの白バイ隊員のアイデアは奇想天外だった!!

 先日、テレビCMを撮影するために、ドライビングディレクターとして出張した。微笑みの国タイランドでの出来事である。郊外の田舎道ではヘリで空撮を行ない、街中では交差点を颯爽と駆け抜けるシーンを撮影した。

交通封鎖が容易な観光立国タイのハズが人の流れはなかなか止められない

 タイをロケ地に選んだのは、公道封鎖が容易なことだ。今回のように、朝のラッシュアワーの時間帯に街中で撮影しようという暴挙は、やはり公道封鎖しやすいか否かが重要課題なのである。

 警官が協力的なのもタイの特徴だ。この時も、2台の白バイを封鎖要員として起用した。四方の信号をすべて赤にするのはもちろんのこと、隙間を狙って進入する一般車両をブロックする役目を授けたのである。観光立国でもあるタイは、映画やCMに好意的なのである。

 というわけで慌しく撮影が始まったのだが、さすがの白バイも2台では封鎖しきれなかった。バリケートを張るわけではなく、赤色灯を回転させたい白バイで威嚇するだけなので、封鎖の隙間から進入しようとするバイクやクルマが後をたたない。羊を束ねる牧羊犬が仔羊達を誘導するように、あっちいったりこっちいったり右往左往するのだが、いくらサイレンをヒューヒュー鳴らしているとはいえ、2台の白バイでは制止しきれなかった。たびたび撮影が中断することがあった。

 苛立った監督は、封鎖のために数名の、交通整理用の赤色棒を持たせたアルバイトを交差点に立たせた。

「いいか、意地でも進入させるな!!」
 怒鳴り声が響く。

バイクや車の往来が激しいタイ

 だが、アルバイトを増員しても封鎖はうまくいかない。というのも道理で、朝のラッシュアワーの時間帯に、ライトなスタッフジャンパーを着たあきらかに公安ではないアルバイトの指示に素直に従うほど呑気な国ではない。そもそもここは、往来が激しいことで名高いバンコクなのである。通勤通学に急ぐ往来を遮断させることなど、そもそも企画そのものが無理に思えた。

 だが、タイの白バイ警官は正義感が強いのである。市民のことよりも、雇用主である監督に忠誠を尽くすのである。現金には、そむかないのである。
 
「その服じゃナメられる。これを着なさい」
 そう言ってアルバイトに、自らが着用していた白バイ警官用ユニフォームを手渡したのだから腰を抜かしかけた。

「ヘルメットも被っていなさい。そうすれば警官と間違えてくれるはずだ」
 そう付け加えて、自らはノーヘルTシャツ姿のまま白バイに跨ったのである。

 つまり、正真正銘ホンモノの白バイに乗るノーヘルTシャツの男と、「POLICE」と刺繍された公安のユニフォームを着た素人のアルバイトが侵入を防いだのである。

タイのお隣ミャンマーの白バイ

 これが案外うまくいくから、白バイのアイデアとは面白い。

【了】

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Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

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