小林ゆきは見た! パーソナルモビリティ普及の現実化を見据えたヤマハのブース【TMS2019】

電動アシスト自転車や電動バイク、前2輪の3輪バイクなど、次世代の乗りものに力を入れ続けるヤマハのブースからは、その分野で世界をけん引していこうという気概が感じられました。

前2輪のトリシティは、こうして生まれた

 すでにモーターサイクルの世界では確固たるポジションを確立し、また自転車の世界では電動アシスト自転車という新たなる分野を開拓したヤマハは、もちろん東京モーターショー2019にブースを出展していました。

人気のスーパースポーツ「YZF-R1」は壇上に上げられまたがることはできなかったが、その分スペックをじっくり見ることができた

 ライダー目線からすると、エンジンバイクのニューモデルを見たい、あるいは人気モデルにまたがってみたい、というところでしたが、それらの展示を大胆に絞り、ヤマハの次なるターゲットとして引き続き力を入れていたのは、やはり「PMV」、すなわちパーソナル・モビリティ・ビークルの分野でした。

 PMVはクルマとモーターサイクルの間、あるいはモーターサイクルと自転車、自転車と車椅子など、中間的な存在かつ新たなる移動概念の乗りものです。

 小型で電動が前提の乗りものとして考えられているため、高齢者や障害者などへの福祉的な乗りものとしてだけではなく、環境対策にも貢献するものと言われており、次世代の乗りものとして期待されています。

 ……と、言われ続けて早20年以上ですが、いつになったら実用化するんだろう、と思っていたところに登場したのが、2014年に登場した「TRICITY(トリシティ)」です。

2020年に発売されるであろう「TRICITY300」は、すでに市販されている排気量125cc、155ccモデルとはいろいろ異なる部分があり、高速走行で安定した走りが期待できそう

 小型な乗りものの弱点として、左右のタイヤ間の幅が狭いとどうしてもコーナリングの際に車体が遠心力で外に向かってしまい、ハンドリングを制御しにくいのですが、車体を「リーン」させる、つまり2輪車と同じように傾ける機構を採用することで、安定したコーナリングが可能になることに加え、ドライバー/ライダーに「操る楽しみ」を与えてくれるという利点が生まれます。

 そしてヤマハによるPMVの最適解は、前2輪+後1輪=3輪の「LMW(リーニング・マルチ・ホイール)」でした。

これまでのモデルとは異なりフットペダルが装備されているが、仕向け国によってフットブレーキとして装着されていると思われる

 いまでは警察の警らにも使われるなど、日本でもすっかり浸透してきたLMW。今回も間もなくの登場を匂わせる「TRICITY300」、ステージでメインとして中央に展示されたコンセプトモデル「MW-VISION」、OPEN ROADエリアで試乗もできた「TRITOWN(トリタウン)」など、LMWによるPMVを中心とした展示内容となっていました。

 市販モデルの出展は「YZF-R1」や「Tenere700(テネレ700)」がありましたが、テレビ東京の番組『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』でおなじみ「E-Vino(イー・ビーノ)」の出展もありました。こちらは番組でアイコンにもなっているスイカ色にペイントされたヘルメットとともにまたがり撮影O.K.とし、街乗りユーザーにもアピールしていました。

テレビ東京『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』おなじみE-VINOは番組と同じカラーリング、そしてスイカヘルメットも用意されて展示された

 もっともマスの大きい原付カテゴリーですが、ホンダ製エンジン仕様のビーノではなく、ヤマハ製の電動バイクE-VINOを展示車両に選んだというのは、PMVとの橋渡し役として期待されているのだと思います。

 これまでも、電動アシスト自転車の分野で法律の壁を越えてきたヤマハですから、PMV普及の壁はもはや法律だけと言って過言ではありません。すぐにでも市販できる技術を蓄積してきたヤマハが、世界のPMVを牽引していくのだ、という気概を感じたヤマハブースでした。

【了】

【画像】PMVに力を入れるヤマハブースの展示とは?

画像ギャラリー

Writer: 小林ゆき(モーターサイクルジャーナリスト)

モーターサイクルジャーナリスト・ライダーとして、メディアへの出演や寄稿など精力的に活動中。バイクで日本一周、海外ツーリング経験も豊富。二輪専門誌「クラブマン」元編集部員。レースはライダーのほか、鈴鹿8耐ではチーム監督として参戦経験も。世界最古の公道バイクレース・マン島TTレースへは1996年から通い続けている。

最新記事